王子タミーノが大蛇に襲われる冒頭のシーンはどんな演出なのだろうと楽しみにしていた。
王子はGパンに白シャツ、ハンチング帽という出で立ちで登場、背景は破壊されるウクライナの町、泣き叫ぶ子ども達、悲惨な戦争の写真がモザイクのようにあらわれ、王子は苦しみの声をあげる。倒れたところに夜の女王に仕える3人の侍女が登場し魔笛の世界に入ってゆく。背景の戦禍の写真のモザイクはいつのまにか大蛇に変わっていた。
その導入に、「こう来たか」と。
ウクライナと国境を接するハンガリーにもソ連の干渉、侵攻と戦ってきた歴史があります。伝えたい思いを深く胸に刻まれる導入でした。
久しぶりの本格的なオペラ鑑賞、しかも琵琶湖ホールなのでとても楽しみにしていましたが、本当に素晴らしい時間でした。
客席に座るとオケピットからきこえるいくつかの楽器の音。そこからもうしびれていました。コントラバス、クラリネット・・・。
「魔笛」は、オーストリア・ハンガリー帝国の文化的土壌の中で作曲され上演し続けられている同劇場の代表作で、王子が捕らわれの姫を救い出すという冒険ファンタジーです。モーツァルトの宝石のような美しい音楽。夜の女王が歌う圧倒的な超絶技巧アリア、パパゲーノの「おいらは鳥刺し」や「魔法の鈴」の合唱など、一度聴いただけで心に残る名曲に溢れ、そのいくつかは小学校の音楽の授業でも子ども達と歌った思い出があります。
どのアリアにも圧倒されました。合唱も素晴らしかった。
前日5回目のワクチン接種をうけて念のため解熱剤を飲んでいたので、眠くならないかと心配でしたが、ずっとわくわく。音楽に満たされ幸せな時間。
最後の試練に耐え勝利し喜びあう最後の場面で、タミーノとパミーナは再び白シャツにGパン姿に。
予言、あるいは信念、なのだと。
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