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ことば(5)---世界共通語:自然科学、音楽、交通ルール、IT(情報技術)

2011-06-04 | ことばとコンピュータ
7.世界共通語
今日の世界標準規格(ISO)では、459の言語コードを定義している。これら459の言語は、アイヌ語、中古日本語(古文)と日本語の3つを含んでいる。この459の言語に方言などを含めると、世界の言語の数は、千数百あるいは五千以上などと諸説紛々、今では世界の言語の数は正確に数え切れないというのが定説である。

言語の数は数え切れないほど多いが、さらにわれわれの身近には、人間の言語に近い表記法やルールがある。さらに、コンピュータに命令を伝える200種類以上のプログラミング言語(=コンピュータ言語)もある。それらを、ここでは世界共通語と呼んで、大きく分けてそれぞれの内容を要約する。

1)自然科学
今日の自然科学の知識は、世界共通になっている。数学、化学、物理学、生物学、医学、地理学、天文学などは、古代ギリシャから体系的に発展してきた学問である。数式、化学式と構造式、星座、暦などは世界共通である。先に述べたが、自然科学の専門語、たとえば医学、天文や植物の学名はラテン語名が付けられる。ラテン語を基本語とすれば、学名は世界共通語として通用する。つまり、学名の一元管理が可能になる。

また、代数学の数式は、読み方は日本語と英語では多少異なるが、論理の展開、言い換えれば数式は日本語でも英語でも同じである。代数学においては、数式が主役で言語は脇役になる。具体例では、y = ax + bは、日本語ではyイコールaxプラスbと読み、英語ではy equals ax plus bと読む。読み方は多少異なるが、数式は唯一つである。

経験論であるが、アメリカの日本人留学生は理数系の試験では、ことばのハンディキャップの影響が少なく、好成績を取りやすいといわれている。

2)音楽
音楽を記録する楽譜、特にヨーロッパ起源の五線記譜法は、国際的に広く使われている。作曲家と演奏家や歌手とのコミュニケーションは、五線紙に並ぶ音符で成立する。五線記譜法も一つの世界共通語といえる。多くの日本の音楽家が、世界のトップレベルの舞台で大きく活躍している。それは音楽という世界共通語が創り出す芸術である。

五線紙で表現できない音楽や芸術品は、別世界に生きることになる。

3)共通ルール
数式や五線紙の楽譜の他にも、世界共通のルールがある。たとえば、海上衝突予防法は船や水上機の交通ルールである。海の交通ルールは、国際規約が決める航法であり、この世界共通のルールを守らなければ、海上交通は混乱する。

船や飛行機の航法だけでなく、やや専門的になるが共同海損など、商法や保険の国際法もある。また、ヨーロッパの通貨をユーロに統合したのは、経済活動の共通化の例である。後に出てくるグローバルシステムは、この通貨統合がシステム開発のきっかけだった。

さらに、人の基本動作、たとえばナイフとフォークの使い方、食事マナーも広義の共通ルールといえる。商船大学でも、卒業生が世界に出たとき恥をかかない様にとプリンスホテルで半日の食事マナーの講習があった。世界のどこでも通用するあのホテルでの教育には、今も感謝している。近年、日本料理が世界に広がっている。西洋の食事マナーに通じる「箸の禁じ手(約30の禁止事項)」も、やがて国際ルールになるかも知れない。

国籍や人種に関わりなく、人々が知り守るべき世界の共通ルールは増えている。言い換えれば、目に見えないところで地球は一つになりつつある。

4)IT(情報技術)
1966年夏、日本の船乗り(筆者)がヒューストン大学の工学部大学院に留学した。当時の日本はで、3C(クーラー、カラーTV、車Car)が憧れの時代だった。大企業でも、タイプライターのように大きなイタリア製の手回し計算機、ソロバン、計算尺の時代だった。当時の日本は、車どころか手回し計算機さえも外国製に頼っていた。

その船乗りが受けた最大のカルチャーショックは、英語でなくコンピュータ言語だった。大学の地下にあるコンピュータセンターでは、5台の大型汎用コンピュータが24時間サービス、IDを与えられた学生はいつでも自由に利用できる環境だった。

当時のヒューストンでは、3Cはもちろん、建物全体の空調は当り前、コンピュータネットワークの利用、NASAの宇宙飛行やメディカルセンターでの臓器移植が脚光を浴びる時代だった。

当時の4年制の理工系学部では、コンピュータプログラミングは必須単位、文系では選択単位だった。当然、理工系の大学院生はプログラミング言語を修了済みとの前提だった。幸い、FORTRAN IVというコンピュータ言語は、数学の表記に類似した言語だったので直ぐに習得した。

時代は変わって、現代の社会はコンピュータ抜きでは成り立たない社会になった。

次回から話題をITに移し、コンピュータ言語とシステムを一般人の目線で眺めていく。そこでは、コンピュータシステムの簡単な説明、グローバルシステムの中身と利点、今後の日本の言語教育、日本のシステムに潜在する危険性へと話題を進めていく。

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