2017年10月発売タイトル第3弾は、Campus第11弾タイトル「忘却執事と恋するお嬢様の回想録(メモワール)」でした(*'∇')
いつもなら新作が出る前に次の新作の発表があるはずですけど、今のところ音沙汰なしっぽいですね?
忘却執事と恋するお嬢様の回想録 概要
麻保志学園に通う貧乏学生の主人公・佐々木静也が、お金持ちの千鳥家の飼い犬を助けたことがキッカケで千鳥家のお嬢様の執事になるというお話。
基本的な世界観や設定などは過去のシリーズ参照、この作品特有の設定についてはキャラ紹介やあらすじを参照して下さい(爆)
麻保志学園シリーズのあらすじ・感想についてはこちら↓
【ハルウソ】【天文時計のアリア】【ナツウソ】【罪恋×2/3】【Triangle Love】【Deep Love Diary】【アキウソ】
【不運と幸運と恋占いのタロット】【初恋*シンドローム】【フユウソ】
忘却執事と恋するお嬢様の回想録 キャラクター紹介
佐々木静也
本作の主人公。麻保志学園に通う貧乏学生。貧乏なため今まで色々なところでバイトをしており、仕事の経験は豊富。現在はマズイと評判のラーメン屋でバイトしているが、まだ2ヶ月分の給料を貰っていないため、次も貰えなかったら辞めようかと考えている。困った人や動物を見ると放っておけない性格。
両親は生まれてすぐに病気で亡くなっており、祖父母の元で育てられたが、その祖父母も他界して現在は天涯孤独の身となっている。幼い頃にかかった病気の治療費のためお金もそう多く残っておらず、学費は奨学金で賄っており、現在は安アパートで一人暮らしをしている。
生まれつき心臓に疾患があり、幼い頃に大手術をしたことがあるそうだが、心臓手術の際に数時間生死の境をさまよって手術前の記憶が断片的にしか残っていないため、本人にその記憶がない。完全な記憶喪失というわけでもなく所謂“エピソード記憶”のみが失われている。
病院を退院したときに持ってた金属製の小さな鍵を今でも持ち歩いており、それを眺めながらぼーっとしていることが多い。何故その鍵を持ち歩いているのか何故こんなに大切にしているのか本人にも分かっていない。眺めている間は幼い頃の記憶を垣間見ているようだが・・・。
千鳥雛乃
大きな企業グループを持つ千鳥家のお嬢様。麻保志学園へと通っているが、千鳥家は学園への寄付金がかなりあり、その特権で一般生徒とは違う制服を着ていて、登校義務が免除されていることから、有名人ではあるものの学園内では滅多に姿を見せない。ただ、特権はあってもテストは受けなければ単位は認められないため、テストの時だけは出席している。
母親は病弱だったらしく雛乃を生んですぐに他界。雛乃も幼い頃は母親に似て体が弱かったらしい。現当主の父親はビジネス面では頼りないため、学園にいない時間は千鳥グループの次期当主として父親の代わりに商談している。財界では“氷の令嬢”と呼ばれている。その呼び名の通りクールで大人びててやや冷たい印象があるが、飼い犬のアーノルドがいるときだけは年相応の表情を見せる。しかし、仕事で忙しくてあまり構ってあげられていないため、あまり懐かれていないw
お金持ちのお嬢様という印象そのままに世間知らずで、“モヤシ”と聞いて何のことだか分からなかったり、自販機にはクレジットカードが使えて当たり前だと思ってたりする。その度に知ったかぶりを披露するが、ことごとく失敗しているため、周囲のフォローも大変である。ただ、世間知らずでも入院したときに看護師に教えてもらったおかげか、傷の手当は得意。それから、ビジネスの取引で必要になることが多いテーブルゲームが鬼のように強い。
千鳥家ではある一定の年齢になるとスキャンダルを防ぐために監視役の執事を1人選定する決まりがあり、雛乃は煩わしい分家が勧める執事を無視して、静也を選定する。
いつも懐中時計を持ち歩いているようだが・・・。
雛乃の父親
そのまんまの意味(爆) 一応、千鳥家の当主だが、お人好しな性格で抜けているところがある。そのため、ビジネスの取引には向かないことから、次期当主の雛乃にサポートしてもらっている。
メイド長
千鳥家の屋敷のメイド長。元々雛乃の子守女中をしていたため、雛乃に対しては忠実でそれ以上に過保護になっている。屋敷に来てすぐ執事になった静也に対しては厳しく接するが、一応、静也の能力は認めているようで、雛乃曰く“ちゃんと認めているが素直じゃない”だけ。
シェフ
千鳥家の屋敷の料理長。執事になったばかりの静也が厨房の緊急事態を救ったため、メイド長とは逆に静也のことを気に入って弟子入りさせようとしたが、執事の仕事があるのでと静也に断られている。
近藤
静也の友人。交友関係が広く、友達想いの良いやつで天涯孤独の身である静也のことを気にかけており、色々と相談に乗ってくれる。
アーノルド
千鳥家で飼っている犬。屋敷からよく脱走するが、その脱走癖が静也と雛乃を再び引き合わせることになる。
クールな雛乃もアーノルドと一緒にいるときだけは年相応の顔を見せる。雛乃が気に入るほどのモフモフな毛並みをしている。
飼い主の雛乃はとても可愛がっているのだが、アーノルドの方は仕事でいつも遊んでくれない飼い主よりも恩人の静也に懐いてしまう。頭は良さそうだが空気は読めない犬であるw
忘却執事と恋するお嬢様の回想録 あらすじ
【本編】
幼い頃の夢を見た佐々木静也は教室で目を覚まし、テストの答え合わせをしていた友人の近藤と別れバイトに向かいますが、近藤との会話でいつも持ち歩いている小さな鍵の話が出たため、バイトに行く前に屋上へと向かい天文時計を眺めていました。静也はそうしていつも天文時計を眺めているようでしたが、時計を眺めるのは何かを思い出せそうな気がするからでした。
そろそろバイトに行こうとしたその時、1人の少女が屋上へとやってきます。静也は夕焼けの屋上に佇む少女の姿がやけに絵になっていたため、思わず目を奪われます。少女の身なりや雰囲気から自分とは住む世界が違うと直感で感じとり、場違いな気がしてその場をすぐ去ろうとしますが、少女の顔に涙が浮かんでいるのを見て足を引き止めます。少女は手にしている懐中時計を見ているようでした。事情は知らないけど泣いている女の子を放っておけなかった静也は少女に近づき声をかけます。少女は驚いて声をあげ静也の方を向き、あなたはいったいと訊ねます。静也は暇つぶしにたまたまここにいただけと答えると、少女も私も気紛れでここに来ただけ、だからお気になさらずと言って再び懐中時計に視線を戻し、静也を無視していましたが、静也が泣いていることを指摘すると、少女が自分が泣いていたことに気付かなかったのか驚いて再び振り向きます。
あくまでも何でもないと言い張る少女に対し、静也は泣いている人を放っておけないと言うと、少女は再び驚く仕草を見せ、昔、私に似たようなことを言った人がいたと話します。しかし、少女はただの勘違い、他人に話しても仕方のないことと言って再び懐中時計に視線を戻します。すると、屋上の扉が開き、今度はスーツ姿の初老の男性が少女を迎えにやってきます。初老の男性に“雛乃お嬢様”と呼ばれた少女はやや不服そうでしたが、静也に声をかけた後、すぐ屋上を後にしたため、静也は涙の理由を聞くタイミングを失ってしまうのでした。
翌日、少女のことがどうしても気になる静也は、少女の姿を捜しながら登校しますが、そこへ近藤が話しかけてきたため、交友関係の広い近藤に聞けば何か分かるかもれないと思い、少女の特徴を話すと、近藤は千鳥家のお嬢様だろうと答えます。千鳥雛乃。学園では有名人ではあるものの、登校義務免除という特権を持っているためあまりお目にかかれないということでした。近藤からは惚れたのかと聞かれますが、静也はそれを否定。しかし、どうしても昨日見た彼女の涙が頭に思い浮かび、再びぼーっとしてしまうのでした。
放課後、バイトに向かう途中、首輪をした毛並みの良い犬を発見した静也は、迷子になっているのだと思い、飼い主を探してあげようと近づくと、犬は静也を警戒して走り去ってしまいます。その後、制服から着替えるためにいったん家に帰りますが、バイト代が支払われないため家賃を滞納していることから、大家さんに今日払えなかったら問答無用で退去してもらうと最後通告されてしまいます。何か嫌な予感がした静也はバイト先に向かいますが、バイト先のラーメン屋はシャッターで閉められており、シャッターには営業終了の告知の紙が貼ってありました。しかし、静也は店長からの手紙を発見し、そこには給料袋も入っていましたが、中身は数百円だけだったため、結局家賃を払えずアパートを追い出されてしまうのでした。
住処とバイト先、その両方を一度に失った静也は、着替えと僅かに残されたお金を持って路頭に迷っていましたが、ふと先ほど見かけた犬を発見します。犬は足を怪我していたため、今度は静也から逃げることはせず、静也もコンビニに行ってなけなしの小銭で包帯を買って犬を治療してあげます。その後、犬の飼い主の手がかりは何かないかと探してみると、犬の首輪に住所が書かれていたことに気付きます。静也はその書かれた住所のところに犬を連れていきますが、その住所の場所は見たことのない大豪邸のお屋敷でした。犬は自分の家に帰ってきたことを理解すると走っていきますが、そのとき少女が“アーノルド”という名前の犬を探しに家を飛び出そうとしていました。どうやらその犬は静也が発見した犬の名前のようでしたが、それ以上に静也が気になったのは犬を探しに行こうとしている少女でした。よく見ると昨日屋上で会った少女だったのです。少女はアーノルドの姿を見ると安心して抱き寄せ喜び、アーノルドも同じように喜んでいるようでした。少女がアーノルドの脚に包帯が巻かれていることに気付いたため、静也が自転車か何かに轢かれたんだろと思うと声をかけると、少女は初めて静也の存在に気付き、今更威厳を取り繕うように澄ました態度を取ります。
少女・・・雛乃は静也が応急処置をしてくれたことを知ると、アーノルドをきちんと治療するためにメイド長に獣医を手配させ、帰ろうとする静也を引き止め、アーノルドを助けたお礼を言います。そして、恩人に何も礼をしないのは千鳥家の恥だと言って、夕飯を御馳走します。屋敷の中に招待された静也は、豪華なディナーを出され、慣れないテーブルマナーに戸惑いながらも夕飯を食べ、お互い自己紹介を済ませます。すると、静也の名前を知った雛乃は驚いた表情を見せ、知り合いの名前に似ていたものだからと言って動揺を隠しきれない様子で誤魔化します。その後、雛乃は静也が天涯孤独の身で今は住む場所もないということを知ると、屋敷に泊まっていくといいと勧め、メイド長がさすがにそれはと渋ったものの、強引に押し切り、静也は千鳥家に泊まることになったのでした。
その日の夜、割り当てられた部屋で休んでいると、雛乃が話があるから部屋を訪れ、女の子を前に緊張している静也をリラックスさせるため自分のお気に入りの場所へと連れて行きます。そこは屋敷のバルコニーでした。静也が落ち着いたのを見て、雛乃は本題を話します。「あなた、私の執事として働く気はなかしら?」と。雛乃は最近分家から執事をつけるようにとうるさく催促されていましたが、それは監視の意味も込められていました。雛乃は常に分家の息のかかった執事が傍にいるのは窮屈だと話し、どうせなら自分が選んだ執事にしたいと言います。それが静也でした。静也は昨日今日会ったのだからと戸惑いますが、雛乃はそんなのお構いなしに私は人を見る目はある、アーノルドを助けてくれた恩人だからと言って押し切ろうとします。そして、バイト先も住処もないことを指摘されて、トドメに結構良い条件だと思うわよと言って雛乃に笑顔を見せられると、静也はその笑顔には逆らうことが出来ず、彼女の執事として住み込みで働くことを決めます。静也が執事になると決まった後、雛乃は見て欲しいものがあると言って、以前屋上で見ていた懐中時計を取り出し、それを静也に見せ、どう思う?と聞きます。静也はそれが普通の懐中時計のように見えましたが、時計の針が止まっていることに気付きます。雛乃は静也の感想がそれだけだと分かると、悲しげな表情を見せ懐中時計をしまいます。しかし、その表情も一瞬のことで、執事の服はすぐに用意させるからと言って再び笑顔を見せ、懐中時計を見せた理由が分からず有耶無耶になってしまうのでした。
翌日の朝、メイド長から執事服を受け取り、雛乃に紅茶を持っていくという最初の仕事をもらった静也は、厨房でティーセットを受け取って雛乃の部屋へと向かいます。雛乃を起こしたときに少々トラブル(笑)はあったものの、朝の紅茶を楽しみながら改めて話をしていると、メイド長がやってきて今日の夕食会を主催するはずだった雛乃の父親が来られなくなったと報告しに来たため、雛乃は執事となった静也を紹介するついでにパーティ会場まで案内します。会場でメイド達に紹介された静也ですが、メイド長同様に他のメイド達もまだ若い静也のことを不審な目で見ていました。そこへシェフがやってきて、雛乃の父親が予定の3倍の人数を招待してしまったため、料理人の手が足りないと雛乃に報告。雛乃はメイドの何人かを割り当てようとしましたが、料理の下拵え程度ならバイトで経験がある静也が名乗りを上げ、早速厨房で手伝います。1時間もすると静也の手際の良さのおかげでパーティの準備も問題がなくなり、シェフが静也を絶賛して雛乃も感心します。それでもまだ認めないメイド長は雛乃の許可をもらい静也を連れて様々な仕事を与えますが、色んなところでアルバイトの経験がある静也はそれらをあっさりとクリアしていったため、数時間後にはやることがほとんど無くなってしまいました。
メイド長が次の仕事は何があるか考えていると雛乃が声をかけてきて、休憩しなさいと命令します。仕事を与えて静也を貶めるつもりだったメイド長は不本意ながらも雛乃の言葉に同意し、静也が“多少”有能であることを認めます。メイド長が去った後、話をした静也と雛乃。そこで雛乃が幼い頃は体が弱く、海外の病院で手術をしなかったら死んでいたと話すと、静也は自分と境遇が似ていると言います。すると、雛乃はその話を詳しく聞かせてほしいと食いつき、静也はここまで追及されて黙っているのは不自然だと思い、自分の境遇について話します。自分が幼い頃に病気にかかっていて手術を受けて治ったらしいと。雛乃はその話を聞いて静也が“らしい”とか“そうだ”とかところどころ曖昧な表現をしたことが気になり、そのことを訊ねると、静也は手術には成功したけど生死の境を彷徨って意識不明になりその影響で手術以前の記憶をよく憶えていないと説明します。その話を聞いた雛乃は悲しげに目を伏せますが、それを見た静也はいつも夢で見る少女の姿が重なって見えて、もしかしたら夢の中に出てくる少女は雛乃お嬢様かもしれないと考えますが・・・。
準備は問題なく進み、夕食会が開かれると静也は執事として仕事に追われますが、そこでトラブルが発生します。招待客の1人が酔っ払い、若いメイドに絡んでいました。静也は酔っ払いの手を掴み制止しますが、酔っ払いは取引先の会社の社長だと言い、この家は躾がなってないと喚きます。そこへ雛乃がやってきて、酔っ払いに対し無礼な人間に敷居をまたがせるほど千鳥家は落ちぶれていないと言って屋敷から追い出そうとします。酔っ払いは雛乃に暴力を振るおうとしたため、静也が間に割って入ると、雛乃は酔っ払いの会社の不正について指摘。すると、酔っ払いは顔を青ざめ、今度は雛乃の言うことを聞き、逃げるように会場から走り去って行きます。周囲の人間はトラブルを冷静に対処した雛乃の様子に“さすが氷の令嬢だ”と感心しますが、静也は逆に自分やメイドを守るために行動した彼女のことを氷とは程遠い優しい人だと感じます。夕食会でのトラブルで酔っ払いから身を呈して雛乃や若いメイドを守ったことでようやくメイド長からも認められた静也(ただし、調子に乗らないようにと釘は刺された)。雛乃はそんな静也の顔に傷があることに気付き指摘すると、今まで傷のことに気付いてなかった静也もだんだん痛みが増していきます。メイド長が救急箱を用意して傷の手当をしようとすると、雛乃が自ら手当をすると言い、周囲を驚かせます。雛乃は私を守るために怪我をしたのだから主として治療するのは当然のことと言い、静也を自分の部屋へと連れていき、そこで治療をします。その後、雛乃が紅茶を飲みたいといかにも口実っぽく静也を引き止めようとしたため、静也は思い切って疑問に感じたことを質問します。「もしかして、以前にもどこかで会ったことはありませんか?」と。しかし、期待したこととは裏腹に雛乃は会ったことはない、屋上で会ったのが初めてと否定し、静也を下がらせるのでした。
翌朝、雛乃の父親が帰ってきたため、静也は雛乃から執事であると紹介され、雛乃の父親も歓迎します。父親と一緒に朝食を食べた雛乃ですが、父親から家庭教師は止めて学校に行って友達を作れと言われたため、祖父から千鳥家のことを第一に考えろと言われたし、自分には自由がないと断ります。静也はこの父娘の会話を聞いて、雛乃に自由がないということはどういうことなのか疑問に思います。雛乃はその後、食欲がないことを理由に席を立ち自室に戻ったため、静也もそれについていきますが、部屋に着いた後、雛乃に“自由がない”とはどういうことなのか聞くと、雛乃は、父親がいくら優しくても立ちいかないときがある、それだけ千鳥の伝統と家名は大きい・・・つまり、しがらみがあると思ってもらっていいと少し曖昧な答え方をします。静也は更に何故学園に通わないのか質問しますが、雛乃は千鳥家のことが優先で勉強も家庭教師だけで十分であることを理由に挙げますが、静也は客観的にではなく雛乃自身がどう思っているかもう一度聞き直します。それでも雛乃は千鳥家のために甘えるわけにはいかない、だから学園で友達を作ってる暇なんかないと言って静也にしつこいと怒りますが、静也はメイド長から執事は主の望むことをするのが使命と教わったと言い、雛乃が望んでいることを知りたいと伝えます。すると、雛乃は自由に出来るのもあと少しだけだし、たまには羽を伸ばすのもいいかもと態度を軟化させます。こうして、雛乃は学園に通うことにしたのでした。
翌日、雛乃と一緒に学園に登校した静也は、偶然にも最初の世界史が雛乃と同じだったため、一緒に教室に行きますが、この日はテストの返却日で赤点ではないにせよ悪い点数だったため、休み時間に食堂で落ち込んでいました。雛乃はそれを見て“友達”だから勉強を教えてあげると言うと、静也は“友達”として認めてもらったことを喜びますが、何故か瞳から涙がこぼれていました。雛乃からそれを指摘されて静也は慌てて涙を拭こうとしますが、そのときいつも持ち歩いている鍵を落としてしまいます。その鍵を見た雛乃が驚いたため、鍵のことを知っているのか聞くと、雛乃は知らないの一点張りですぐに席を立ちます。次の授業はお互い別々の教室でしたが、静也はどうしても鍵のことを聞きたくて雛乃についていき、再びその鍵を彼女に見せます。雛乃はそれでも知らないと言って後ずさりますが、そのとき彼女が躓いて転びそうになったため、静也は咄嗟に腕を伸ばして身体を支えます。静也は雛乃を抱き寄せる体勢になっていたため慌てて離れようとしますが、雛乃が足をくじいたと言ったため、万が一のことを考え、そのまま抱きかかえて保健室まで連れて行きます。雛乃は少し捻っただけだったものの、大事を取ってその日はずっと保健室で休み、静也もそれに付き添っていましたが、雛乃が歩けるようになったため、2人は下校します。静也は鍵のことを聞きそびれていましたが、また聞いたら今の関係が崩れてしまうかもしれないと思い、何も言わずに一緒に下校していると、雛乃はあなたが執事になって良かったと思ってる、そして大切な友達だと思ってる、だからこれからもよろしくねと言って笑顔を見せます。その笑顔を見て、静也はこれ以上何を望む必要があるのだろうか、この現状に自分は満足しているじゃないかと思い、鍵のことを聞くのは止めることにしたのでした。ただ、胸の奥で切ない気持ちが湧き上っていましたが・・・。
静也が執事になって一週間。この日は休日で静也はメイド長と食堂を掃除をしていましたが、今朝見た夢のことや鍵のことが気になり、仕事に身が入っていませんでした。そのことをメイド長に指摘され怒られそうになったため、静也は慌てて近くにあった肖像画について聞いて話題を逸らします。その肖像画は雛乃の祖父である千鳥元蔵のものでした。メイド長は他人にも家族にも厳しかったと話し、特に雛乃に対しては厳しく指導していて見てて痛ましかったと話してると、お祖父様は良い人だったと言って雛乃が食堂に入ってきます。メイド長は元蔵の陰口みたいなことを言ってしまったことを謝りますが、雛乃は大して気にしていませんでした。そのとき、中途半端な時間に柱時計が鳴ったため、メイド長が巻き鍵を持って柱時計を調整します。それを見ていた静也は、その巻き鍵が自分の持っている物と似ていたため、メイド長に懐中時計も時刻の修正をするときに巻き鍵を使うのか聞くと、メイド長はそうだと答え、更に雛乃の持っている懐中時計についても、巻き鍵を紛失していることを教えます。静也は雛乃に巻き鍵を失くしたか聞くと、雛乃は失くしたことは認めましたが、もっと突っ込んで聞くべきか悩みます。そのとき、アーノルドがやってきて雛乃がアーノルドと戯れるのを見て微笑ましい気持ちになり、結局巻き鍵のことを聞きそびれてしまいます。しかし、アーノルドが静也の方に懐いてしまったため、ショックを受けた雛乃は最近散歩をさぼっていたことを反省し、午後の仕事をキャンセルしてアーノルドと遊ぶと決めます。雛乃が休日に遊ぶことを選んだという事実は、メイド長には衝撃的でしたが、今まで頑なに仕事を優先していた雛乃が年相応に休日を遊んで過ごすことを喜びます。その後、アーノルドが静也から離れなかったため、静也も一緒に散歩についていきますが、普段運動をしない雛乃が疲れてしまったため、途中の高台で休憩することにします。
ベンチで休んでいる雛乃が懐中時計を持っていたことから、静也が屋上で会ったときに泣いていた理由を聞くと、雛乃は誤魔化すようにお祖父様のことを思い出していたと答えます。その懐中時計は元蔵が雛乃のために作ってくれた世界で一つの時計であり、雛乃が入院していたときにお見舞いに来て渡してくれた祖父からの唯一のプレゼントでした。とても厳しい人だったけど、私が入院していた一年間、仕事の合間を縫って毎週欠かさず顔を出しに来てくれたと話し、祖父は厳しいだけの人じゃなかった、千鳥グループは昔は業績が悪く、千鳥家を守るためにも祖父は他人に弱味を見せるわけにはいかなかった、だから私も祖父のように立派な当主になって千鳥家を守りたいと語ります。静也はそれを聞いて立派だと思いつつも、それと同時に彼女には危うさもあるような気がするのでした。
ある日のこと、ビジネスの取引相手と交渉が拗れた結果、チェスで勝負して決めることになった雛乃ですが、軽く相手を捻って圧勝します。静也は彼女のチェスの強さに感心しますが、ビジネス上必要だから覚えたと本来なら遊びで使うものをあくまでビジネスの一環として覚えていることに悲しくなった静也は、ビジネスとは関係なしに自分と勝負して純粋に楽しみましょうと提案。雛乃もそれに了承し、彼女がプレイしたことのないリバーシ(オセロのこと)で勝負します。負けた方は勝った方の言うことを何でも聞く(ただし、エッチな命令は禁止という条件)という賭けをしますが、最後に雛乃が1勝をあげたものの、静也が20勝したため、静也が勝ちました。静也は雛乃に好きな異性のタイプを聞くと、雛乃は真面目で誠実そうな人と先ず口にし、最後に私を檻の外へ連れて行ってくれそうな人と答えます。雛乃はあくまで理想像だからと言いますが、静也は最後に雛乃が言った“檻の外へ”という言葉が気になっていました。それはまるで、自分を束縛する何かがあるような表現だったから。その時、メイド長がやってきて、深刻そうな顔をして一通の手紙を雛乃に渡します。その手紙は分家の源口家からのものでした。その内容は千鳥家の分家を本家に集めて開く“分家会議”の申し出でした。そして、雛乃はその手紙を受け取ると、自由でいられる猶予ももう終わりと呟き、悲しげな顔を見せるのでした。
翌日、分家会議のために分家の人たちが千鳥家にやってきますが、その受け入れの準備をしていると、静也に1人の中年男性が声をかけてきます。その男性は分家である源口家の当主でした。源口は静也に話があると言って、静也を屋敷の庭へと連れて行きます。庭に着くと、源口は静也に札束を渡し、雛乃の執事を今すぐ辞めろを要求してきます。しかし、静也はその裏取引に自分と雛乃の関係を踏みにじられたと思い、ふざけるなと言って札束を地面に叩きつけますが、源口は大して気にしておらず、“遺言”のことを知らない静也に対し、分家会議に雛乃様のお付きとして出席すれば全て分かると言って去って行きます。そして、源口が余裕の態度であった理由もすぐに分かります。分家会議の内容は、雛乃の婚約発表についてでした。相手は豊橋家の御曹司。雛乃が結ばれれば千鳥グループも大きく躍進する・・・所謂政略結婚でした。その話をまったく聞いていなかった静也は頭が真っ白になり、それ以降の会議の内容は頭に入らず、いつの間にか分家会議も終了していたのでした。
分家会議が終わった後、雛乃の部屋で彼女と2人きりになった静也は婚約のことを雛乃に改めて聞きます。雛乃は今回の婚約はまだ正式に交わされたわけではないが、自分が生まれたときから決まっていて、政略結婚だと説明します。相手が多くの事業分野で対立してきた豊橋グループなのは、今まで対立していたせいで海外に遅れをとり始めたため、親類関係を結んでグループ同士で協力すれば事業も拡大できるというものでした。それは“千鳥グループ”という大きな観点から見た場合の良いこと尽くしでしたが、雛乃の気持ちをまったく無視したものでした。静也はそれいいのか聞きますが、雛乃は良いも悪いもない、選択肢なんてないと答えます。元々、数十年前の分家会議で千鳥家の子と豊橋家の子を結婚させるということは決まっていました。しかし、最初は雛乃の父親が豊橋家の女性と結婚する話でしたが、雛乃の父親は恋愛の末に婚約を破棄して雛乃の母親と結ばれました。そのことを分家・・・特に源口家は激しく非難しました。そして、雛乃の祖父は雛乃が産まれたとき、今度こそ政略結婚が上手くいくように遺言を残しました。その遺言とは、自分が死んだ後、孫娘・・・つまり雛乃が豊橋家の人間と結婚しない場合、財産の大部分を分家に遺贈するというものでした。それは源口家の不満を封殺するためのものであり、源口がずっと静也に対して余裕の態度でいられたのも、どっちに転ぼうが分家には美味しい話でしかなかったからでした。
雛乃の態度が変わらず、赤の他人は口出しするなと言われ、静也は引き下がり自分の部屋に戻ろうとしますが、その途中にあった食堂で、雛乃の父親にメイド長とシェフが詰め寄っているのを目撃します。話の内容は雛乃の婚約のことでした。お嬢様の意志を無視して結婚させるのはあんまりだと。雛乃の父親は、雛乃が婚約を破棄したら千鳥家は没落してお前たちも路頭に迷うとそもそも自分が婚約破棄したせいでこんな事態になっていることを棚に上げて言いますが、メイド長たちは使用人たちとの話はついている、例え没落しても旦那様のご家族が暮らせるだけの財産はあるはずだと返します。そこへ静也も加わり、雛乃の父親に頭を下げると、メイド長たちも同じように頭を下げ懇願します。すると、雛乃の父親もメイド長たちの要望を受け入れますが、雛乃自身が結婚を拒否しなければどうにもならない、あいつは政略結婚を受け入れてしまっていると言います。しかし、静也の方を見て、君ならばあるいは雛乃を説得できるかもしれないと言い、娘を説得してほしいと頼みます。そう頼んでくる雛乃の父親はメイド長たちと同じように悲痛の表情をしていました。静也はそれを見て、この人も娘の幸せを願っているのだと思いますが、先ほど雛乃に言われた赤の他人という言葉にショックを受けていたせいもあり、先ほど説得に失敗したばかりだと言って断るのでした。
翌日、雛乃と静也は一緒に登校しますが、その間に一切会話はなく、雰囲気が悪かったため、それを見た静也の友人の近藤は静也に何かあったのか聞きます。静也は話すべきか迷いましたが、雛乃には自分を頼ってほしいと言ったくせに自分は一人で悩んでいるというのは矛盾していると思い、近藤に自分の記憶障害のことや、幼い頃に大事な約束をした少女が雛乃かもしれないという話、そしてその雛乃が遺言に縛られて政略結婚に利用されそうになっていることを話します。近藤は1つだけ方法があると言い、その方法は、おまえがお嬢様に告白することだと教えます。お嬢様以外は遺言に従わないことに納得しているなら、あとはお嬢様の気持ち次第だから、“好きでもない相手と結婚したくない”と婚約を蹴る理由が1つ出来れば良いと。つまり、結婚したい恋人が出来ればいいということでした。静也はそんな打算的なことは出来ないと言いますが、それを聞いた近藤は呆れて、静也に教えます。おまえ、お嬢様に惚れてるだろ?と。そして、静也は自分の気持ちに気付き、近藤に背中を押されて雛乃に告白する決意します。しかし、その前に確かめなくてはいけないことがありました。恐らくそれが分かるまで雛乃は決して折れないだろうと。それは自分の持っている巻き鍵が雛乃の懐中時計のものではないかということでした。雛乃の祖父が作った世界で唯一の懐中時計。それに合う巻き鍵も1つだけ。ならば、自分の持っている巻き鍵が合えばさすがに雛乃も無視は出来ないだろうと静也は考えます。しかし、雛乃はそう簡単に確かめさせてはもらえないだろうと思い、深夜に雛乃の部屋に侵入することにします。そこで雛乃が部屋の外に出てバルコニーに行くという予想外のハプニングがあったものの、雛乃をやり過ごした静也は雛乃の部屋に侵入し、懐中時計を見つけます。そして、懐中時計に鍵を差し込むとピッタリと入り、それと同時に静也の記憶も蘇ります。
当時、静也は病気の治療のために入院していました。学校にも通えないまま、病院で過ごす日々。だけど、一人だけ、病院内で知り合った同年代の女の子がいました。彼女もまた、静也と同じく重い病気に侵され入院していました。彼女の病室は個室でしたが、静也が前の廊下を通るとよく泣き声が聞こえてきました。その泣き声を聞いて放っておけなかった静也は、ある日思い切って中に入って女の子に話しかけます。女の子は最初は寂しさのせいか泣いてばかりでしたが、静也と会うごとに少しずつ笑顔を見せるようになっていました。そんなある日のこと、女の子は静也にこんなことを言いました。「今度海外で手術を受ける」と。だけど、女の子はそれを断ろうと思っていると話します。難しい手術で失敗したら死んでしまうから。死ぬのは怖い、けど本当に怖いのは、治ったらどうしようって思っていることでした。彼女は祖父から“家のために生きろ”と教えられてきて、だけど今は入院してて皆の役に立っていない。こんな私なんていないほうがいいんじゃないかと。そう言う女の子の目元には涙が滲んでいました。静也はそんな彼女に「自分はどうしたいの?」と聞きます。自分の命なんだから、周りじゃなくて自分の望むように決めればいい、誰もきっと我儘だなんて言わない、僕が絶対にそんなこと言わせない、僕は君にいなくなってほしいなんて思わないと伝えます。そして、静也は今度自分も難しくて失敗したら死ぬかもしれない手術を受けることを教え、手術を受けて、生きて、きみとまた会いたいと言います。きみのことが好きだからと。すると、女の子も同じ気持ちだよ、あなたとまた会いたい、ずっと一緒にいたいと答え、手術を受けることを決意します。そして、2人は大きくなったら結婚しようと約束し、女の子は静也に鍵を渡します。これが雛乃との大切な約束の記憶でした。
記憶が戻った静也。そこへ雛乃が部屋に戻ってきて、静也が懐中時計を持っていたため、返してもらおうと近づいてきますが、バランスを崩して倒れそうになります。静也は咄嗟に庇おうとしますが、2人はそのまま一緒に倒れ、静也が雛乃を押し倒す形になっていました。雛乃は静也が記憶を取り戻したことを知ると隠し事を止め、静也に何も言わなかった理由を話します。当時の雛乃は遺言のことも何も知らずに静也と結婚の約束をしましたが、今は結婚する相手も決められていて約束を守ることは出来ない、だから静也が忘れているのならそれでいいと思っていました。一度は静也が手術に失敗して死んだと思っていたから。そう言って雛乃は、約束を守れなくてごめんなさいと謝りますが、静也から昔の約束を忘れる代わりに新しい約束をしましょうと言われ驚きます。そして、静也から子供の頃に約束したからでも記憶を取り戻したからでもなく、あなたの事が好きですと告白されます。雛乃も静也と恋人になることを望んでいましたが、それでも千鳥家を守らなくてはいけないと断ろうとします。そんな彼女に対し、静也は1つ質問をします。お嬢様の言う“千鳥家”とは何ですか?と。お嬢様が守りたい“千鳥家”とは家名のことなのかと。すると、雛乃はそれは違う、父やこの屋敷で働く使用人のみんな、この屋敷で過ごす人たちのことだと答えます。その雛乃の答えに満足した静也はもう1つだけ質問します。お父様や使用人の皆さんは、お嬢様に不幸になってほしいと願ってると思いますか?と。そして、雛乃の父親やメイド長を始めとした使用人たちがこの家を捨てる覚悟でいることを伝えますが、今までずっと家のために生きてきた雛乃はすぐに答えることが出来ず、少し時間が欲しいと言って告白の返事を保留するのでした。
翌朝、源口がアポなしで屋敷を訪れ、雛乃の婚約者になる予定である、豊橋家の御曹司を連れてきます。そして、婚約の誓約書を持って雛乃にサインを迫りますが、その誓約書には千鳥家の財産を豊橋が全て管理し、家督も豊橋が継ぐことになっていました。そのため、雛乃はこの誓約書にはサインは出来ないと断ります。源口は少し焦った様子でしたが、豊橋が遺言状の件もあるから焦らなくてもいいと口を漏らしたため、雛乃は千鳥家や分家の人間しか知らない遺言状のことを何故豊橋家の人間が知っているのかと突っ込み、源口の方を見ると、源口は慌てたように視線を逸らします。源口は豊橋家に取り入って財産を分与してもらう腹積もりだったのではと雛乃が言うと、源口は何も言い返せず、余裕の表情だった豊橋も、怒った静也の視線にビビリ、2人はすぐに退散します。その日の夜、雛乃の父親と話をした静也は、雛乃の祖父の遺言状は本当に本心なんだろうかと疑問に感じます。すると、雛乃の父親は祖父の死に際に“雛乃の誕生日になれば2通目の遺言状が見つかる”と言い遺していたことを話します。しかし、その遺言状はまだ見つかっていませんでした。その日の晩、静也は疲れて食堂で眠ってしまいますが、静也に告白されてからずっとバルコニーで悩んでいた雛乃は食堂に明かりが点灯していることに気付き、食堂に行ってみると、静也が眠っていました。雛乃は眠っている静也にキスをしようとしますが、唇が重なる直前に静也が寝言を言い、「お嬢様」と言いながら苦しんでいるのを見て、雛乃は初めて自分の政略結婚の件で周囲の人を苦しめているのだと気付きます。そのとき静也が起きたため、咄嗟にキスしようとしたわけじゃないと慌てて言い訳したことでむしろ何をしようとしていたかバレてしまい、キスしようとしたことを認めます。雛乃がキスをすれば後戻りできなくなるからと静也は彼女とキスをしようとしますが、それでは豊橋や源口と同じで彼女を縛ることになると思って直前でキスを止め、改めて返事を待つことにします。
翌日、近藤からデートに誘えとアドバイスされた静也は放課後、雛乃と一緒に街へ出かけますが、高台で休んでいるときに、雛乃が自分のことではなく財産を全て失って静也を幸せにできるかどうかで悩んでいることを知り、その悩みを解消するために再び告白します。財産とか地位とか関係ない、“千鳥雛乃”が好きなのだと。そう伝えて彼女を抱きしめると、雛乃もようやく自分の気持ちに素直になり、静也のことが好き、静也と一緒にいたいと告白の返事をして、自分の意志で静也を選んだからキスをしてほしいと静也にお願いします。静也も彼女が自分を束縛するためではなく本心からキスを求めているのだと分かったため、雛乃とキスをします。そして、ホテルに移動して初体験を済ませた2人は晴れて恋人同士になったのでした。
2人が家に帰ってくると、源口と豊橋が来ていたため、応対した雛乃。案の定、誓約書を差し出してきた2人でしたが、雛乃はそれをキッパリと断ります。源口から使用人たちのことを言われると、一瞬躊躇したものの、雛乃の父親や使用人たちが一斉にやってきて雛乃の背中を押すと、雛乃はこんなにも思われているのに一人で抱え込んでと自分で自分で呆れかえり、苦笑いしながら豊橋の方へと向き直って、改めて婚約破棄を宣言します。すると、源口は遺言状を燃やそうと雛乃に襲い掛かりますが、静也が間に割って入ります。その拍子に雛乃は懐中時計を落としますが、そのとき懐中時計に入ったヒビに違和感を覚えた静也は、この懐中時計の中に2通目の遺言状があるのだと思い、自分の巻き鍵を取り出して日付調整の穴に差し込みます。そして、雛乃の父親から“雛乃の誕生日になれば”という祖父の言葉を思い出した静也は、雛乃の誕生日に日付を合わせると、カチリという金属音が響き、懐中時計の文字盤が開いて、その中には祖父の遺言状が入っていました。その遺言状には、1つ目の遺言状は全て無効にすること、他にも相続や遺贈の内容について書かれていて、最後にこう書かれていました。“雛乃よ、どうか家のためではなく、自分の幸せのために人生を生きてほしい”と。この遺言状により豊橋家との婚約は無効となり、豊橋と源口は逃げるように去っていくのでした。
それから迎えた雛乃の誕生日パーティ。本来ならその場で豊橋との婚約が発表されるはずでしたが、それは破棄されたため、豊橋と源口の姿はありませんでした。普通に誕生日パーティを楽しんだ雛乃ですが、ダンスの時間になると多くの男性の誘いを先約があると言って断り、給仕中の静也を誘ってダンスを踊ります。そして、パーティが終わった後も屋敷の庭で2人は踊り続けるのでした。
【アフターストーリー】
雛乃の誕生日パーティから1週間後。雛乃はその間、婚約破談による分家の不満を押え込んでいました。もっとも、源口家以外は本家に不満を言えるほどの財力も権力もなかったため、不満も形だけのものでした。その分家筆頭の源口家の当主は今回の一件で賄賂や横領などの悪行が露見し警察に逮捕され失脚、当主を失った源口家は権力を失っていました。そして、今まで頼りなかった雛乃の父親も、雛乃に青春を謳歌してもらいたいと言って、源口家が抜けた分をカバーすべく仕事を頑張っていました。雛乃はそのお蔭で暇な時間が出来ていましたが、今度は静也の方が雛乃を支えるために彼女に内緒で経済学や法律などの会社運営に関する勉強を始めていたため、恋人の時間はあまりありませんでした。静也は独学では厳しいと感じつつもあまりお嬢様には自由な時間を過ごしてもらいたいと思い、雛乃に教えてもらうことはしていませんでした。
そんなある日の事。雛乃の部屋から怒鳴り声が聞こえるというメイド達の話を聞いた静也は、何をしているのか確認するために雛乃の部屋に入ります。すると、部屋の中では雛乃がPCゲームをプレイしていました。静也はあまり夜更かししないように注意しますが、そんな静也に対して雛乃は不満をもらします。折角恋人同士になったのに全然構ってくれないから、寂しくてゲームで紛らわせていたと。静也はそれを聞いて迷惑をかけないようにと思っていたことが裏目に出てしまったと反省し、正直に雛乃を支えるために勉強していることを白状します。すると、雛乃は自由な時間は静也と一緒に過ごしたいのだから自分を頼ってほしいと言い、面と向かってそんなことを言われた静也は照れてしまいます。こうして、今後は雛乃に教えてもらうことになり、静也も雛乃に庶民のことを教えることになりましたが・・・。
庶民のことを教える前にまずは身近なところからということで、メイドの手伝いをすることにした雛乃。しかし、あまりに家事スキルが低すぎたために、何をしてもことごとく失敗してしまい、いつもの態度とは違い、自分のことを無能だと言ってすっかり落ち込んで自信喪失していました。それから2週間。雛乃によるビジネス講義は続いていましたが、一方の雛乃が庶民を知る講義はまったく行われなくなり、それどころか雛乃が静也に内緒で1人で出かけることが多くなっていました。お嬢様にも秘密にしたいことくらいはあるだろうとは思ったものの、どうしても気になる静也は近藤に相談します。すると、雛乃が喫茶店っぽい店に入っていくのを見かけたと教えてくれたため、そのお店の場所を教えてもらって、次の休日に行ってみることにします。そして迎えた休日。雛乃がまた行き先を告げずに出かけたため、静也は少し遅れて近藤から教えてもらった喫茶店に向かいます。そして、お店に入って席に座ってウェイトレスが注文を取りに来るのを待っていると、雛乃がウェイトレスの格好をしてやってきます。雛乃は静也が来たことに驚き、静也は何故こんなことをしているのか彼女に聞くと、雛乃は今はアルバイト中だからまた後でと言って逃げ出します。その後、静也はずっと雛乃を観察していましたが、雛乃が休憩時間になったため、外に出て理由を聞きます。
雛乃がバイトを始めた理由。それは、屋敷でメイドの仕事を手伝って失敗しても皆がすぐに手助けしてくれる、危なくなったら心配して無理しなくていいと言ってくれる、しかし、それでは何も学べないから。だからこっそりアルバイトを始めたのだと言います。それを聞いた静也は、先ほど何度も失敗しても一生懸命働いている雛乃をずっと見ていたため、心配はしているけど辞めろとは言えない、むしろ応援すると伝えます。すると、雛乃は理解してくれたことにお礼と、秘密にしていたことを謝ります。とはいえ、恋人の時間が少なくなるのは寂しいため、それを正直に言って勝手なことを言ってすみませんと謝りますが、雛乃は本音を隠さないでお互いの気持ちを伝えあおうと言い、私たちは主と執事、それと同時に恋人でもある、それを忘れないでと言います。それからというもの、2人は少しずつ主従としてだけではなくその先へと進むためにお互いの距離を縮めていきますが・・・。
少々行きすぎな面はあったものの、自分の我儘を言うようになった雛乃。しかし、学園でエッチはさすがにマズイと思った静也は、学園でエッチするのとこれから休日はいつもデートするの、どっちが良いかと雛乃に選ばせ、雛乃はデートを選びます。そして、デートの日、2人は雛乃のお店にいってオムライスを食べさせ合ったり楽しい時間を過ごしますが、いつもの高台のところへ行くと、雛乃は不安を言います。今はもう家にいて窮屈に思うことはなくなった、そんなふうにしていたのは家のせいではなく自分自身だった、今はとても幸せだと、このままでいいのかと不安に思うときがあると話します。今はただ幸せを享受しているだけで、千鳥家次期当主の役目を果たしていないのではないか、このままでは幸せでいる資格なんてないんじゃないかと。静也はそんな不安げに表情を曇らせる雛乃を抱き寄せ、大丈夫ですよ、それは深刻に考えすぎているだけだと言い、お嬢様は幸せになれたからそれを周囲の人に伝えたいんです、支えてくれてありがとうという感謝の気持ちを・・・と。雛乃もその言葉に納得し、皆に感謝の気持ちを伝えるべく、それを伝えるための舞台を整えるためにあることを計画します。それは、来賓を呼ばず、屋敷の人たちの自分たちのためにホームパーティを開くというものでした。
そして、ホームパーティを開くために、主も使用人も関係なく屋敷にいる皆でパーティの準備を進め、その中でも雛乃が1番張り切っていました。多少不安な部分はあったものの、バイトの経験を活かし以前のような失敗をしなくなったことに使用人たちは驚き、雛乃の父親も楽しそうに準備をしている雛乃を見て感動していました。そして、準備が終わり、皆で正装して開かれたホームパーティ(アーノルドも参加w)。最初に雛乃のスピーチがあり、2つ話したいことがあると言います。1つは豊橋家との縁談を断って皆に迷惑をかけたことを謝ります。しかし、このことについては全員が納得した上で決めたことのため、誰も責める人はいませんでした。そして、もう1つは静也との婚約発表でした。自分の幸せを願えるようになったのは、静也と皆が支えてくれたおかげだと言い、感謝の気持ちを伝え頭を下げます。今までありがとう、そして、これからもよろしくねと。すると、雛乃の父親や使用人の皆は一斉に拍手をし、その目には涙が浮かんでいました。その後、雛乃の父親は静也の手を取り、娘を頼むと言って静也に雛乃のことを託し、静也も必ず幸せにすると約束。その後、婚約の証として、静也と雛乃はみんなの前で誓いのキスをします。それから数年後。2人は教会で結婚式を挙げるのでした。
忘却執事と恋するお嬢様の回想録 感想
まぁよくあるお嬢様の政略結婚を阻止して主人公と幸せになるというお話ですね。前置きが本編になるので、ずっとじれったいまま物語が進みます。あと、ほとんど予想出来たシナリオで、実際ほぼ予想通りの展開になってたので本編はちょっと退屈でした(爆) もう少し短くまとめてくれても良かったかも・・・というか、長引いたのは雛乃お嬢様が頑固だったせいもあるけど、主人公が若干ですが恋愛方面でヘタレだったせいもありますね。雛乃の父親も頼りなくて、元凶の1人なのに自分のことを棚上げしてるし、豊橋や源口といい、この作品に出来る男はいないのかw 個人的には源口家当主だけじゃなく豊橋家の御曹司にも痛い目に遭ってほしかったわ(´ー`)
個人的にはアフターストーリーの方がメインだったなぁ。アフターは主人公の言動を除いては概ね良かったと思います。少し短いけどね。表情豊かになる雛乃お嬢様が可愛かったです。まぁクールで頑固で素直じゃなかった雛乃お嬢様が飼い犬にそっぽを向かれてショックを受けてたときはウケましたが、やはり笑顔を見せたり感情豊かな方が女の子は可愛いですね。ただ、もう少し恋人生活を見せてほしかったかなぁ~って思います。アフターストーリーでも主人公が雛乃お嬢様を放置したりやらかしてたのがなぁ・・・これだから一人称が「僕」の主人公は嫌なんですよ(´ー`) 主人公がキッチリ行動できてたのは執事として行動したときだけですしね。そんな恋愛下手な主人公を導いた友人の近藤君に殊勲賞をあげたい気分ですw 彼こそ恋のキューピットと言えるでしょうw 1番まともな男だった気がするw アフターストーリーでは主人公に蔑ろにされてたけど(爆)
Hシーンは計4回。本編では1回だけでアフターストーリーは3回あります。回数は少な目ですが、アフターストーリーはそれぞれ本番が2回ずつあるし、1回あたりの尺が長めなので、ロープラなら充分な量かなと。おっぱいはそれほど大きくなく、ふくらみかけ~普通乳くらいかな?ナツウソの葵ちゃんと同じかそれより少し大きいくらいですが、全ての本番Hでおっぱい見せてくれたので満足でした。一応、パ○ズ○フェ○もありますし、なかなかエロかったので良かったと思います。この子は前戯では少しだけSっ気を見せますが、本番になるとMになるところが良かったです。普段の態度からするとSに思えますけど、この子はどちらかというとMですね。自分はHになるとMになる子は好きなので満足しましたw あとはもう少しおっぱいが大きければなぁ・・・。それはもうどうしようもないことですがw
とまぁそんな感じで。主人公が若干恋愛方面でヘタレることはありますが、素直になった雛乃お嬢様の破壊力はなかなかなので、可愛がってあげてください(*'∇')
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【ハルウソ】【天文時計のアリア】【ナツウソ】【罪恋×2/3】【Triangle Love】【Deep Love Diary】【アキウソ】
【不運と幸運と恋占いのタロット】【初恋*シンドローム】【フユウソ】
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アーノルドをモフモフする雛乃お嬢様をもっと見たかったですね~、モフモフしてるときが1番可愛かった(爆)