はるか昔
2500年ほど昔
お釈迦様のお住まいのほど近く
パンタカと言う名の青年がいました
パンタカは大変頭が悪く、物覚えの悪い人でした
しかし、お釈迦様に対する尊敬の念は人一倍
頭の良い兄の勧めもあり、二人でお釈迦様のお弟子さんになることにしました
先輩のお弟子さんたちはみんな、長いお経をすらすらと暗唱できていました
パンタカのお兄さんもすぐにお経を覚え、日々修行に邁進していました
しかしパンタカ本人は長いお経はおろか、短い詩も覚えられませんでした
自分に悲しくなったパンタカは、教団を出ていこうとします
しかし、お釈迦様はそこを呼び止めます
お釈迦様「どうしてここを出ていこうとするんだい?」
パンタカ「私は大変頭が悪く、お経のひとつも覚えられません。悟りに到達することなど到底むりです。里に帰ります」
お釈迦様「パンタカよ。真の愚か者とは自身の愚かさを知らないものだ。自身の愚かさを知るあなたは、賢者と呼ばれるべきだ。もう少し、勤めてみなさい。」
お釈迦様の声かけに感激し、パンタカは修行生活の継続を決意します
その時、お釈迦様はとても短い言葉をパンタカに授けます
それは、「ちりを払え、汚れを拭え」と言う、大変簡潔な詩でした
この短い言葉のみを繰り返し、パンタカは日々言いつけられた掃除のみに没頭していました
そうして、掃除とは物質的な汚れやちりを拭うのが目的ではなく、自らの心の汚れに気付き、それをきれいにすることが肝要であることを悟ります
そうしてパンタカは優秀な兄をも追い越し、瞬く間に悟りの境地を体得してしまいます
悟りに大切なのは頭や要領の良さではないことがこのお話では語られます