世界経済危機 日本の罪と罰/野口悠紀雄著(ダイヤモンド社)

野口悠紀雄は僕にとっては超整理法の人なのだが、本職は経済学者なのでこのような本も書く、というかこれが本領であるのだろう。超売れっ子で量産作家でもあるから内容的にタイミングが良すぎて、さらに書きとばしているのではないかという先入観も少しあったけれど、まったく杞憂といっていいだろう。いや、むしろ失礼で、書いてあることにはぶれもなく、シンプルかつ力強くものすごく分かりやすい。お勉強の本なのに面白くてすみませんというレベルまでクリアしており、これを読まずして何を読むのかという感じすらする。もの凄く影響力のある人なので、すでに多くの人が手に取ったであろうことを思うと、この本がまともに受け入れられて世論形成までしてくれることを願う気持ちまで湧いてきた。少なくとも、この本の指摘するような現状を把握する程度には、世論についてきて欲しいと真剣に考えてしまったのであった。そうでなければ日本はまともに道を踏み外す。今でもかなりそんな感じが漂ってきておりもして、危険が危険を呼び込む水域に達している感すらあるくらいである。そういう意味では早く手にとってもらわなくてはならない本といえるだろう。
第一に米国発の金融危機について、ほとんど日本も同罪だというシステムというか、からくりを明らかにしている。この関係は以前からかなりのひずみであることは分かっていながらも、結局日本はしてやられてしまってお終いである。悔しいが、馬鹿だったとしか言いようがない。問題はこれからも同じように馬鹿のままで生きていかなければならない宿命ではないということだ。いじめられっ子だって、自分の力がまったくの無力ではないことを知ることから反撃の方法を考えなければならない。無力のままなら絶望しかないではないか。
もう一つの柱である円安バブルの崩壊についても、日本の立場としてある意味でまっとうな戦法であったとも思うが、歪んでしまっていたこともまた事実であり、救いようのない過ちであったことも明らかにされてゆく。いびつな歪というものは、やはり自然のうちではいつまでも耐えきれる状態なのではない。そうしていづれははじけてしまう。まさに、今がその状態なのだろう。現状を知らないままに行動することが一番危険で、暗闇の中崖があるかもしれない位置から駆けだす馬鹿はいない。まずは足元を照らすことが必要で、自分の傷口の手当が必要だということだ。腫瘍が悪性なら、除去する必要だってある。今はそういうことだということなのである。
また経済学的な見方として、日本の国力をどのように伸ばすのかというシンプルな考え方も披露してある。題材としてダメな見本で語られる農業政策の現状をデータを基に明らかにしていく手法も、目新しくはないがその通りで、説得力は高い。いや、これだけでもみのもんたファンには読んで欲しいくらいだ。いや古館伊知郎やNHKも同じことだ。これぐらい当たり前の認識くらいを前提にして報道する学力と、他人におもねることを捨てる気位と勇気を持ってほしい。
それでもやっぱり道は険しい。そんなことは重々承知しているけれど、やはり認めることはつらいことかもしれない。この本は単に危機感をあおるだけの「大変だ宗教」の本ではない。では何をすべきかという明確な道しるべなのでもない。少なくとも、もっと絞りだすような懸命な労力が必要だということを教えてくれるのみである。もちろん、その力の入れようがあるということは理解する必要があって、「今だって頑張っているのに」という泣きごとをいうつもりの人にはたぶん役に立たないだけの話である。いや、それだけでも十分に戦力になることは日本という巨大な国には言えることなので、要は諦めない処方箋であることは間違いがないのである。

野口悠紀雄は僕にとっては超整理法の人なのだが、本職は経済学者なのでこのような本も書く、というかこれが本領であるのだろう。超売れっ子で量産作家でもあるから内容的にタイミングが良すぎて、さらに書きとばしているのではないかという先入観も少しあったけれど、まったく杞憂といっていいだろう。いや、むしろ失礼で、書いてあることにはぶれもなく、シンプルかつ力強くものすごく分かりやすい。お勉強の本なのに面白くてすみませんというレベルまでクリアしており、これを読まずして何を読むのかという感じすらする。もの凄く影響力のある人なので、すでに多くの人が手に取ったであろうことを思うと、この本がまともに受け入れられて世論形成までしてくれることを願う気持ちまで湧いてきた。少なくとも、この本の指摘するような現状を把握する程度には、世論についてきて欲しいと真剣に考えてしまったのであった。そうでなければ日本はまともに道を踏み外す。今でもかなりそんな感じが漂ってきておりもして、危険が危険を呼び込む水域に達している感すらあるくらいである。そういう意味では早く手にとってもらわなくてはならない本といえるだろう。
第一に米国発の金融危機について、ほとんど日本も同罪だというシステムというか、からくりを明らかにしている。この関係は以前からかなりのひずみであることは分かっていながらも、結局日本はしてやられてしまってお終いである。悔しいが、馬鹿だったとしか言いようがない。問題はこれからも同じように馬鹿のままで生きていかなければならない宿命ではないということだ。いじめられっ子だって、自分の力がまったくの無力ではないことを知ることから反撃の方法を考えなければならない。無力のままなら絶望しかないではないか。
もう一つの柱である円安バブルの崩壊についても、日本の立場としてある意味でまっとうな戦法であったとも思うが、歪んでしまっていたこともまた事実であり、救いようのない過ちであったことも明らかにされてゆく。いびつな歪というものは、やはり自然のうちではいつまでも耐えきれる状態なのではない。そうしていづれははじけてしまう。まさに、今がその状態なのだろう。現状を知らないままに行動することが一番危険で、暗闇の中崖があるかもしれない位置から駆けだす馬鹿はいない。まずは足元を照らすことが必要で、自分の傷口の手当が必要だということだ。腫瘍が悪性なら、除去する必要だってある。今はそういうことだということなのである。
また経済学的な見方として、日本の国力をどのように伸ばすのかというシンプルな考え方も披露してある。題材としてダメな見本で語られる農業政策の現状をデータを基に明らかにしていく手法も、目新しくはないがその通りで、説得力は高い。いや、これだけでもみのもんたファンには読んで欲しいくらいだ。いや古館伊知郎やNHKも同じことだ。これぐらい当たり前の認識くらいを前提にして報道する学力と、他人におもねることを捨てる気位と勇気を持ってほしい。
それでもやっぱり道は険しい。そんなことは重々承知しているけれど、やはり認めることはつらいことかもしれない。この本は単に危機感をあおるだけの「大変だ宗教」の本ではない。では何をすべきかという明確な道しるべなのでもない。少なくとも、もっと絞りだすような懸命な労力が必要だということを教えてくれるのみである。もちろん、その力の入れようがあるということは理解する必要があって、「今だって頑張っているのに」という泣きごとをいうつもりの人にはたぶん役に立たないだけの話である。いや、それだけでも十分に戦力になることは日本という巨大な国には言えることなので、要は諦めない処方箋であることは間違いがないのである。