宇宙はこう考えられている/青野由利著(ちくまプリマー新書)
副題は「ビッグバンからヒッグス粒子まで」。ヒッグス粒子の発見のニュースは、しばらく報道を騒がせていたが、何かすごいらしいというのは分かるのだけど、そのすごさの程度というと今一つ分からないという印象だった。理論的にヒッグスさんの提唱していた粒子があるはずとされていたが、実験で実証されることが世代を超えた事件であるというのもいまひとつピンとこない。ただでさえ理解されにくい考え方を、何かもう少しすんなりとわからせてくれる方法はないのか。また宇宙を構成させている物質の5パーセント程度しかまだ分かっておらず。わかっていないものが暗黒エネルギーだったり暗黒物質だったりするらしいというのも、わかるようなわからないような。ビッグバンやら、膨張する宇宙の話になると、それは科学というよりSFではないかとさえ思えてしまう。量子力学に至っては、ほとんどオカルトである。
ということで入門書を読むよりない。少し前に超ひも理論の本を読んでいて、実は数回目の試みだったのだけど、大体で投げ出してしまった。面白くないわけではないが、専門的すぎる箇所は、正直言ってチンプンカンプンだった。これはまったくもって歯が立たない。少し戻るよりないではないか。
もちろん入門書の分かりやすさには、時折物足りなさもあったり、また端折りすぎている場合もあったりする。そういう時には注意も必要だが、なにしろ考え方や、そのつながりが分からないことにはどうにもならない。だいたい網羅的でありながら、考え方の筋が整理できることは本当に助かる。実際にこれを読んでいて、本当に助かる思いがした。
ものすごく小さいことは肉眼ではすでに見えないし、宇宙のことも専門的な望遠鏡でも見えないものはある。英語で宇宙のことをスペースというのは、なんとなく味気ない気もする。しかし何万光年先の光が地球に届いて、さらにそれを見た僕らが星を確認できるという神秘については、何かものすごく心を動かされるものがある。それは一体どういうことなのかを、知りたくない人間はいないのではあるまいか。最初は無から大爆発が起こって宇宙が始まったというのは、実に大変に昔の話であって、その爆発の先の宇宙の果ては、さらにスピードを上げて膨張を続けている。面白いけれど、じゃあその先は一体どうなっているのだろうか。
まあ、想像するのは自由ではあるのだけど、事実らしいことを知ったうえで想像するのと、まったくわからないまま想像するのでは意味が異なるだろう。もっと物事を考えたい人にとっても、その想像を超える事実らしいことが、宇宙の中では考えられているのである。そういうことを必死で考えている人々が、さらに何世代にもわたって考え続けていることが、今現在の私たちの立ち位置なのである。いつかすべてわかる日が来るのかどうかも、実際にはわからない話なのである。
というわけで、簡単ではないけどかなりわかりやすい話で解説されていて、本当に助かる本なのである。賢い人の話は分かりにくい場合があるが、このように賢い人がまた解説してくれる世界がある。人間社会は、ある意味でありがたく親切なのではあるまいか。