飲んでいるときに野球や政治の話は禁物とされる。+宗教もかもしれない。実感としてそれはよく分かるわけで、言いたいことはあるが、相手次第では口をつぐむことになる。納得できない自分に苦しむが、しかしいつも喧嘩をしたいわけではない。平和の方が大切である。
それというのも、よくある政治家はひどいという話である。国会議員なら、国民を馬鹿にしているし、地方議員なら何も考えていない。首長も自己中だし、地元にもろくな人間はいない。選挙で選ぶべき人なんて一人もいないが、どうして必要な人が立候補しないのだろう。
確かに一部首肯できそうなところもあるのだけれど、それって本当にそうなのだろうか。ひどい人が混じっている可能性は高いと思うのだが、そんな人ばっかりなんだっけ。でもまあ誰彼は凄くいいよって話は、シラケるような気もしないではない。いい人いっぱい知ってるけど、そういうと決まってそいつもひどい、と返されるというか、また、面倒なんである。人の悪口は最高の酒の肴なのであって、ある程度は仕方がない。だけどなんだかな、と思う訳だな、これが。
しかしながら、普通の人たちというか、大衆というか、政治家でない日本人と、政治家である日本人に、それほどの犯罪などに手を染める資質に違いがあるのだろうか。特に金にまつわる不誠実さというのに、明確な違いがあるのか。政治家の方が金の誘惑に弱いとする根拠はあるのか。
実際にそういう事件はごまんとあるじゃないか、と言われるかもしれないが、それはニュースとして取り上げることにおいて、政治家がそうすると面白いから多く感じるのではないだろうか。だいたいニュースの基本というのは、面白いからであるし、珍しいからである。交通事故は日常茶飯事だが、大きく取り上げられるのは目を引く悲惨さがあるものだ。子供がたくさん犠牲になるとか。現実に一番多く犠牲になっている高齢者のものは、ごくたまにしか話題にならない。アクセルとブレーキを踏み間違えたとか逆走したとかいうような、一般の人にも恐怖を呼び起こす題材なら別だろうが。
何を言いたいかというと、ちょっとした金にまつわる犯罪は、圧倒的に一般の人たちの引き起こしたものが多いに違いない、と感じるからだ。銀行などの金融機関でのトラブルなんてものは、おそらくごまんとある。ほとんどは示談で、家族などが保証などして表に出ないだけだろう。僕の少ない体験を通してみても、金銭トラブルと実際には犯罪としても立証できただろう盗難や不正などは、これまでに数多く見ている。ほとんどは警察に届ける以前に話し合いの末、いわゆる内部の問題として済ませているだけである。実際に犯罪として表に出た例だって知ってもいる。ひどいのは知った人が強盗したというのだってある。しかしながらそういうものは、もちろん大きな報道に乗らないし、別段ひた隠しているわけでもないが、狭い社会のゴシップとして巷間に流れることもあるが、ニュースとして嗅ぎつけられることなんてない。ありふれているし、面白くもないからであろう。
一方政治家であればどうだろう。ちょっとした行き違いであっても周りの目が厳しく光っているし、うわさが流れると嗅ぎまわる人も出てくるだろう。そうして表に出るようなことになると、大して大物でなくともそれなりのニュースに取り上げられるだろう。結果的に起訴まで至らない場合でも、いわば公人の不正を断罪される場合もあるようだ。そうしてぬくぬくと生きていると言われる。誤解だったと言えば見苦しいと言われるのがオチだろう。
別段政治家を擁護する義理なんて無いが、政治家だから汚いなんていうのは単なる偏見に過ぎない(一般の人に比べるとむしろクリーンだし)。全体を見回せば完全にクリーンなんてありえないだけのことで、むしろ少ない難しい環境下でありながら不正に手を染める愚かな人間が居るに過ぎない。そういう厳しさの中で身を律して頑張って欲しいものではあるが、実際にそうしている方が大多数であろう。人間の弱さの見本として、そのようなことが起こるのだということであれば、むしろそれが人間の証明のようなものではあるまいか。良くは無いが、完全クリーンな人間ばかりの政治というのは、かえってクレイジーだろう。まあ、何処までいっても悲しい人間の荒涼としたサガを感じはするわけだが……。