親の住んでいたところに建て替えて住んでいるので、子供の頃からずっと同じ環境にいるようなことになっている。しかしながら子供の頃とは周辺は一変しているし、徒歩や自転車生活と、今のような車中心というのとでもまったく感覚は違う。
ご近所は増えたが、以前からの人々はそれなりに年を取ってしまった。あい中が飛んで僕ら世代があって、ちょっと若い人がボツボツという感じだろうか。
それでも若いころにはちょっとの期間だけだが、別のところに住んでいたことも無いではない。当時のことは忘れてしまったことが多いけれど、漠然と違う場所での生活への期待の方が大きかったようにも思う。
後になって聞いたことだが、人間も他の哺乳動物と同じように巣立ちのようなものがあって、住み慣れた場所から離れて暮らしたい欲求のようなものが芽生えることがある、という。知り合いにも矢鱈に屋移りを繰り返すような人間がいて、あれは若さの一種だろうと思っていたが、それなりに落ち着いていても、時々また移っているとも聞く。別に転勤族でもない訳だし、これは若いだけの習性ではないのかもしれない。
多少例外的なものはあろうが、若いころには少なくとも、一人になりたい、というか、独立したいというか、そんなような気分があるのは間違いないのではないか。人間は社会性の高い生き物だから完全に孤立したい訳ではなかろうが、いわゆる自立のまねごとというか、そんなような気分はあるのではなかろうか。
まあ家にいると何かとめんどくさいというか息苦しいというか、そのようなシグナルを受けて仕方なく出ていくような人もいるのかもしれないが、やはりある程度のタイミングで家を離れるような経験が無いと、下手に巣篭りが続いてしまうようなことにもなって困ることになるかもしれない。それでいい人は別にいいけど、外に出てみて帰ってくるのと、そのままそこにとどまるのとでは、なんだか少しくらいは違いがありそうな気もしないではない。
そうはいっても実質上一人暮らしをしたのは3年程度のことで、後は親と暮らし、家庭を持ってしまった。だからといって家庭的な男とは言えないだろうことは、なんとなく分かっている。まあ、でも一人で生きるには向かないだろうことも分かっている訳で(たぶんほどなく自殺でもしてしまうのではなかろうか)、万事はこれでいいのだろう。
時々旅行や出張などで、もうしばらくアパートなどを借りて住んでみると面白いところかもしれないな、と思うことがある。でもまあまた来ればいいだけだな、とすぐに思い直す。新しく何かを準備するようなことも、なんだかけっこう億劫だ。結局それはかなわない訳だし、何というか向いてないな、とも思う。結局仕事場に通える範囲の場所で暮らしていかなければならない訳で、そうするとベストポジションがやっぱりここになってしまうのかな、ということなんであろう。