都市化するということは、コンクリート化することとかなり等しい。都市の建物すべてがコンクリートではないけれど、その多くはコンクリートだからだ。都市化して人々が集積してくると、建物は高層化し、道路も高架にかけられたりする。コンクリートは人工の石で、高度や耐久性に優れており、さらに加工が比較的安易である。さらにやはりその上に安価であることが多用される大きな理由だろう。
コンクリートは砂や砂利をセメントに水で溶いて固めたものだ。実際の建造物となると、実に大量の砂を使う。だからこそ都市化問題によって使われる大量の砂が、社会問題化しているということらしい。都市に住んでいる人間にはピンとこないかもしれないが、都市が膨張することで、地球規模の環境破壊が進んでいるのだ。
もともと建築資材としての砂は、川などからとられていた。しかしながらすぐに底をついてしまい。現在のコンクリート用の砂のほとんどは、海底より掘削されている。問題になっているのはその量で、大量に掘削されていることにより、砂浜が減少し、沿岸が浸食されたり防波堤が倒壊したりの被害が多発しているという。高波などの被害が拡大する原因とも言われており、実際に多くの地で海水の被害がでている。すべてが砂の影響ではないのかもしれないが、少なくともその原因とは確実に絡んでいる。それほどの大量の砂がすでに都市化の建造物のために失われ、そうして加速度的にその必要量は増え続けている。なぜなら世界の各地で、巨大都市は拡大し続けているからである。
また被害は沿岸部だけにとどまらない。海底の砂地の減少は、そこに住む生物の環境も破壊する。漁獲量減少とも関連するわけで、漁業を営む人の生活を圧迫させるし、食糧問題としても深刻である。自国の砂の掘削を規制しても、まだ規制の進んでいない国の砂が運ばれるだけである。たとえばシンガポールの建造物の砂は、その近辺の、例えばベトナムからの輸入である。複雑なのは、その砂を売って生計を立てている人もそれなりにいることで、規制をかけるとその人々の生活を圧迫させるということにもつながる。どちらに転んでも死活問題に変わりないのである。
砂以外の原材料は無いのかということは、当然模索されてはいる。バイオ資材であるとか、廃材や瓦礫などを再利用する取り組みもある。そうしてそういう研究もそれなりになされてはいるらしい。しかしながらそれでも抜本的な解決の道筋に至っていないのは、海底の砂を、いわば盗掘することの方が、明らかに経済的に優位だからである。だから唯一の解決の道は、砂がある程度とりつくされ、その価値が高騰して、その優位性が崩れることしか望めそうにないことだ。そういうことになるまでに、これまでの被害以上にどこまで深刻さが拡大するのかは、誰もわかりはしないだろう。