パーマネント野ばら/西原理恵子著(新潮文庫)
先日観た映画の原作漫画。ウチでとっている新聞によく出てくる漫画家さんであるが、特に僕は熱心な読者ではない。雑っぽい絵だが、それが味である。作品とは直接関係ないかもしれないが、旦那さんはアル中の写真家で、既に亡くなったのではなかったか。
映画を先に観たので、なるほど原作か、という感慨があったが、エピソードは映画の基本としてあるという感じで、漫画はやはりサイバラ作品という展開を見せている。ちょっと下品なところがあるけど、そういう正直さと過剰さが、彼女の魅力なのだろう。僕は男なのでよく分からないところも多いのだが、女の目からすると、やはり多くの男は女にとってくだらなく愛らしい存在なのだろうということは見て取れる。なるほどと思う面もあるけど、見えている世界というのは、性別でこんなにも違うものなんだな、とも思うのだった。
血なまぐさい闘争もあるし、実際に人も死ぬ。いわゆる殺しに近いものがあるような予感もする。しかしそれらは罪のあるものではなさそうで、いわゆる父性で法律が成立している社会ではない。それは当然であるし人情的であるけれど、これを笑うのがこの漫画の読者の正しい立ち位置なんだと思う。詩的な面も多いけれど、基本的には現世があまりにつらいからかもしれない。恋愛や男と付き合っていく女の世界というのは、このような地獄絵図がある中での幸福なのかもしれない。
僕がふと思い出したのは、なんだか奴隷や差別の無くならない黒人社会の物語のような気もした。虐げられた人々が、その底辺にありながら笑いを忘れず、天国に行く幸福を知っている。日本社会の女性というのは、いまだにそのような立場にある人々のことなんだということかもしれない。特段社会的な発言があって成り立っている漫画ではないけれど、これは女性の中では共有できる感覚なんだろうか。ちょっとシュールな感じもするんだけどな。しかしまあ、逆の目線で過去の日本文学の作品なんかを見てみると、第二の性である女に振り回される男ばかりだった訳で、そうするとこれは、まさに時代が下って文学的というべきものなのかもしれない。
ぱらぱら読んで楽しんでけっこうだと思うが、なんとなく重たいものがあるような、不思議な読後感のある作品なのだった。