アンダー・ユア・ベッド/安里麻里監督
いわゆるおとなしく目立たない存在で、誰からも名前で呼ばれたことのなかった男は、学生時代に後ろの席に座っていた千尋からノートを見せてもらったばかりか、名前で呼んでもらえたことがあった。すっかり舞い上がって好きになってしまったものの、当然彼女には彼氏がいるらしく、空しくあきらめるより無かった。時は流れ、ふとあの頃の千尋を思い出して、興信所に頼んで居場所を突き止めた。ところがあの明るかった千尋の雰囲気は豹変しており、子育てのストレスでもあるのか、やつれて疲れ果てているように見えるのだった。男はどうしてもその千尋のことが気になり、仕事をやめて彼女が結婚して住んでいる近所に熱帯魚の趣味的な店を出して、その店舗の上の部屋に住んで彼女の家を監視するようになる。そうして彼女の謎を知ることになるのだったが……。
そもそも異常なストーカー行為なのだが、彼女の置かれている状況もかなり異常だ。そんな状況にありながら逃げようとしない千尋を見ていると、かなりイライラする。そうしてその状況を助けようとしても動けない男の姿にも、同じく激しい怒りを覚える。まあ、そういう設定を楽しむ映画なのだが、その設定と展開自体が、かなりイライラさせられるのである。こんな奴らは早く殺してしまえ、ってな気分になるのである。まあ、なっても仕方ないのだけれど。
しかしながら冷静に考えると、これらの異常な人々なら、こうなって必然なのかもしれないな、という事も考えてしまう。多かれ少なかれ、昔から家庭内の暴力はありふれているわけだし、だからそれでいいとは言えないまでも、一種のプレイ化してしまった人々だっていることだろう。この場合はそうではなくて異常なわけだが、そう簡単に他人が干渉できるものではないのかもしれない。明るく優しかった女性だからこそ、男の呪縛から逃れられない精神性が有る、という事なのかもしれないのだ。わからんことだが。
そういう訳でお話は進むのだが、ある意味究極の愛だとも言えて、考えさせられはする。結局イライラはするけれど、まあ、そういう人もいるってことで、納得するよりないではないか。