長江哀歌/ジャン・ジャンクー監督
長江の三峡ダムの建設によって水没していく街の人たちの、主に人探しの物語のようだ。とはいえ風変わりな映画で、ギャグなのかSFなのかよく分からないものが映像で出てきたりする。そうして二つの人探しの話が出てきて、無関係なのに何か関係がありそうなそぶりを見せるのだが、ちょっとどうしてそうなっているのかはよく分からない。しかし並べられて、元に戻って、平然と話は進んでいく。そういう混乱を含めて、雰囲気を楽しむ映画なのかもしれない。
どういう訳か娘を見たいという理由で、16年ぶりに妻に会いに来る男がいる。しかしまちは水没しているので、妻は別の下流のまちに行っているらしい。仕方がないので、この町でしばらく働いて待つことにするのだった。一方以前夫に会いに来た妻がいて、これは一緒に探してくれる人がいて、なんとか翌日に遭うことができるが、しかし離婚したいのだという。また元に戻って、やっとまちに妻が帰って来ることになるが……。
という話のはずだが、間違ってたらごめんなさい。とにかく間合いは長いけど、よく内容が分からないのである。これって、本当につながっている話なんだろうか?
しかしながら上流の町から下ってきて、不良ばかりが住んでいる街に来て、何となく苦労はするが馴染んでいって、しかしやっぱり帰っていくのだろうと思う。どうして離れたのかがそもそもよくわからないが、都合があってそうならなければならない。そこには本当に愛があったのかさえよく分からない。何となく感情はありそうだけど、かなりドライな感じもするし、あえて表に出さないだけの問題かもしれない。そのほうが雰囲気が出て、いい感じになるという計算でもあるんだろうか。
でもまあ、実際そんな感じで、悪くないものも伝わる。変な社会の話なので、素直にギャグとしても面白いのである。北野武映画のように、かっこつけてるのかもしれないが、そういう気の衒い方は、あんがい映画を観る者には親和性のあるものかもしれない。素直にわからないままでいないで、何か余分に考えてしまうせいだろう。
ところで僕は、この辺りは若いころに旅行した。けれどちっとも懐かしい雰囲気ではない。中国って、やっぱりいろいろ事情が激変した国なのかもしれない。本当にこれからどこに行くのであろうか。