ドライブアウェイ・ドールズ/イーサン・コーエン監督
コーエン兄弟の弟が、一人で監督したらしい。なんでも弟の奥さんがレズビアンだったそうで、それを承知で結婚し子供をもうけ、今は別々のパートナーがありながら、それでも離婚はせず共同で暮らしているのだという(それが事実なのだろうが、それが一体どういうことなのか、考えてもよく分からない)。それでいわゆるレズ映画を撮る。徹底してそういう視点であるというところが、ミソでもあると考えていいだろう。下品でシュールなギャグ映画だけれど、そもそもコーエン兄弟には乾いた残酷性がウリではあった。一人になったら自制が利かなくなる、ということも考えられる。面白くないわけではないのだが、それがものすごく面白い訳でもない。
真面目と奔放な女性の友人同士が居て、奔放な方はレズビアンだ。二人は訳あって南のフロリダ近辺の町まで、指定の車を配送するという業務を兼ねて旅に出る。ところがこの車には問題があって、積み荷はマフィア関連のブツが載っていた為に、彼らに追われることになるのだったが……。
仕事を兼ねた旅行であるのに、奔放な方の娘はレズの相手探しの事しか頭にない。そうして旅の先々では、ちゃんとレズの集まるたまり場があったりして、セックスの相手探しには事欠かない。もともと喧嘩して別れた彼女もいるのだが、この元カノが警察官で狂暴性がある。マフィアと事件は絡んでいるのだが、そんなことはものともしない強烈さがある。ふつうならもっとシリアスに大変なことになるのだが、この物語はそんな方向には行くはずが無いのである。
つかわれている曲もなかなかいいのだが、ラリっているようなときにファンカデリック(maggot brainという曲の一部である。ちょっと飛んでいる感じのギターリフなのである)がかかるのである。やっぱり僕の世代の人なんだよね。それにしても渋すぎるんじゃなかろうか。僕は日本にいるのでわからないのだが、こういうのを聴くのは黒人だけじゃなかったんだ。
そんなに複雑な映画では無いのだが、それなりに事情が絡んで、いわゆる爆発を起こすしかなくなる(人間関係的な)。しかしそうなってしまうのは、意外な人たちなのだが……。まあ、こういう状況では、弱いものが壊れるのである。
日本だとこういう映画は、ちょっとしたミニシアター向けという気もするのだが、やはりそれなりの大御所が絡んでいるので、ちゃんとした商業映画になるのかもしれない。見方にもよるだろうけど、こういうのが普通であるからこそ、現代的なのかもしれない。でもまあアメリカはトランプさんになったので、この方向が維持できるものなのかどうか……。