カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

ロシア文学の魅力の詰まった小説   ロシア文学の教室

2025-02-13 | 読書

ロシア文学の教室/奈倉友里著(文春新書)

 少しぶ厚めの新書で、いちおう登場人物とかは最初に書いてはあったのだが、題名の通りロシア文学の入門書のようなものかと思って読んでいたら、小説だった。いや、実際ロシア文学を学べることにはなるので、そのあたりはなんとなく不思議な感じなんだが。
 大学のロシア文学教室の講義を受けている学生が、作品にのめり込むことで、文学体験をより深く理解するさまが描かれる。教えている先生のお話も魅力的だし、学んでいる学生たちの感性もみずみずしいものがある。そんな風にして文学を味わい学んでいくのか、という一種の理想形がここにある。若い学生なので、友人関係や恋愛もそこには含まれている。いつの間にか登場人物の中に好きな人が混ざりこんでいたりして、本人の感情もいやがうえにも揺さぶられる。ロシアの当時の時代背景や風俗に至るまで勘案しながら、文学を通して実体験してしまう訳だ。必ずしも幸福な話ばかりではないものがあったとしても、それは読む者に対して、実は救いになるような仕掛けや考え方があったりすることも分かるようになる。本当にそんな話だったかな、というのも無いではないが、文学作品を味わうという醍醐味が、十二分に語られる物語になっているのだ。
 正直に言ってほとんどの作品はよく知らないのだが、それにこれも正直に言って挫折して放り出したものもあるのだが、ロシア文学を深く読む人々がそこにいて、そうして物語を読む方法の多くが、そこに語られている。こういう学生が集まっている学校そのものが幸福なものだし、そういう学びの場そのものが、教養という学問なのだということが分かるはずである。そういう体験をしたことが無いのでわからないのだが、もう戻ることのない学生時代に、こんな教室があったなら、ずいぶんと楽しい事にはなったのかもしれない。おそらくほかにも勉強しなければならないことはあるだろうけれど、本を読み込みそれだけを考えられる毎日があるとしたら、その人の生き方そのものが、それからもずっと豊かなものになっていくのではないだろうか。そんなことも予感させられて、なんだか切ないような気分にもさせられた。もう忘れてしまった記憶ばかりだけど、未来があるというのは、実際にそういう事だったかもしれないな、と考えさせられた。また、時代を超えてロシア文学が読み継がれるとしたら、そういう人間的な根源が書かれていたロシア文学の奇跡がそこにあったからかもしれない。そんなことは、知らなかっただけのことだったのだ。
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