かみさんよ、安らかに・刑事コロンボ/ヴェンセント・マケヴィティ監督
刑事というのは人に恨まれる職業なのだろうか。答えはイエスとも考えやすいが、しかし捕まった本人がつかまえた人をそんなに直接に恨むものなのだろうか?もともと警察に追われることはある程度分かっていて罪を犯す場合が多いだろうから、運が尽きるというような自分を恨むような気がしないではない。
ところが、コロンボの様に名推理の人はどうだろう。さらにじわじわ追い詰められて嫌になる人だっているだろう。考えようによっては、コロンボというドラマ自体が、犯人いじめを楽しむ工程そのものだとは言える。やはりコロンボの奴め、と考えるような人がいてもおかしくない。彼さえいなかったら、悠々とシャバで暮らして行けたかもしれないのだ。もちろんそれは逆恨みには違いないが、正当な逆恨みということでもあるかもしれない。
ということでコロンボは復讐の対象になっているのだが、途中でそのことにコロンボ自身は気付いてしまう。そうして騙されたふりをして、さらに犯人をある方法でひっかけて自白に導くというお話である。このような捜査が可能なのかに目をつぶると、上手いことしてやったりだけど、しかし騙された腹いせでビンタを食らってしまう。やっぱり悪いのはコロンボだったんだ!という印象さえ残るのであった。
実際のピーター・フォークのかみさんはともかく、コロンボのかみさんというのは本体のコロンボ・シリーズでは出てこない。コロンボ本人が語るところを見る限り、それなりに夫婦仲は良さそうな印象も受ける。コロンボの細部にこだわる性格や、しつこく仕事ばかりしている事を考えると、それなりのご苦労があるらしいことは見て取れる。聞くところによると何か資格を取ろうと勉強していたりすることもあったようで、しかし専業の主婦なのかどうかは不明だ。
僕自身は結婚後いつかはカミサンという言葉を使いたいという欲求があったが、これが若い頃にはなかなか様にならないことに気付いた。ぼちぼち使いだしたりしたが、いまだにしっくりこない。もちろん僕はコロンボのようなキャラクターじゃないので、何の努力なのかは不明なのだが、いつかはもっとしっくりくる場面で「ウチのかみさん」とやってみたい。まったくの一人芝居だから、上手く出来た報告をするかどうかは未定である。