カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

ひたすら耐えるような心情になる   喜劇愛妻物語

2022-11-26 | 映画

喜劇愛妻物語/足立紳監督

 売れない脚本家の男は、妻の稼ぎに頼りながら細々と仕事をつないでいるが、幼い娘もおり駄目おやじぶりで、妻には半ば愛想をつかされており、セックスレスである。そんな中四国へ取材のチャンスがあり、いっそ家族旅行を兼ねて、夫婦家族ともども円満に持ち込もうと画策するのだったが……。
 最初から、かなり妻からの拒絶が強く、取りつく島が無い。実際何をやってもダメな感じで、しかし性欲だけは前面に出ていて、情けない。これでは畢竟破綻するしかないようにも思うが、なんだかんだと文句を言いながら、妻は家族を支えている。そういう状態を何もできずに追い込んでいくのが、この男のようにも思える。
 そんな男にも、最初に妻に好かれた才能のようなものがあった。それでも駄目はダメという感じだけれど、いい感じのセンスはあったはずで、それは頑張れば、もう少し何とかなると、妻は心のどこかにそう思っているようだ。その努力の行き方に足りないものがあり、不満が募るばかりなのだ。そうなのに男は、自分の性欲に行き場の方ばかり気が行って落ち着かず、馬鹿なことばかり妄想し、何もまともに手につかないありさまなのである。そうしてこの家族は、どん底にまで落ち込むことになるのだった……。
 まあ、言ってみればそういう喜劇もあるんだろう、ということなのだろうか。面白く観ているというか、妻の毒気に冒されて、どんどん気分が悪くなるというか。笑いどころのツボがつかみにくい展開である。俳優たちは持ち前の雰囲気を持っていて、その駄目さぶりというのもよく分かるのだが、いくらそうでも、映画の演出的に、どこかで復活するというか、いいところだってあるというか、そういう感じで転換して欲しいものなのである。それが映画的なカタルシスというか。そういうものが無い映画だってそりゃあ在るというのは分かっちゃいるけど、期待するのが人情というものである。落ちるだけ落ちて、もう笑うしかないよな、というのは分かった。分かったが、やはりつらかった。
 そういう訳で、喜劇というより、これはもっと別のものである。まあ、それでも仲よくということで、マゾッけの強い映画ということになるんだろうか。
コメント
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