「切らずに治す脳卒中」日本脳神経血管内治療学会前々会長ブログ
第31回日本脳神経血管内治学会学術総会会長のブログ
会期:2015年11月19日~21日(無事終了しました)




岡山ローカルの山陽新聞の夕刊コラム「一日一題」に、この2月から3月にかけての2ヶ月間、毎週火曜日に執筆することになりました。2015.2.3がその初回でした。
自分の専門分野である「脳神経血管内治療」について、一般の方々にも理解しやすいように書いたつもりです。
折角ですので、このブログにも、原文を載せて、皆さんにご紹介したいと思います。


「脳神経血管内治療」
岡山大病院脳神経外科・IVRセンター准教授
杉生 憲志

 「脳神経血管内治療」をご存じですか? カテーテルなどの特殊な器具を使用して、レントゲン(X線)透視下に、血管の中から脳や脊髄など神経の病気を治す最新治療です。
 従来、脳の病気はわれわれ脳神経外科医が開頭術を行って手術的に治療していましたが、血管内治療であれば、開頭することなく、切らずに脳の病気を治すことが可能です。
 最新治療と書きましたが、日本でも通常の治療が難しい病変に対して、1980年代から苦肉の策として行われてきました。90年代後半になり、器具や機材の開発・改良に伴って、治療の有効性・安全性が格段に進歩し、2000年代以降急速に普及しつつあります。
 私自身は1987年に脳外科医となり、91年から血管内治療に携わってきました。当時は、一般脳外科診療の中の一部門として開頭術の片手間に血管内治療も行うような状況でした。歴史的にみると、日本では脳外科医が行うことがほとんどですが、欧米では放射線科の中で神経疾患を専門に扱う「神経放射線科医」が主流でした。
 私は幸運にも、ジュネーブ大神経放射線科に3年間留学し、世界最先端の知識と技術を学ぶことができました。帰国後は、血管内治療を専門として岡山大脳外科と関連病院で多くの患者さんの治療に当たってきました。「血管内治療」は患者さんの体に優しい最新治療ですが、最新機器が必要であり、医師にも高度の技術と経験が要求されます。私はこの治療を天職と考え、教育と普及に尽力していく所存です。
 ◇筆者紹介(すぎう・けんじ)専門は脳卒中治療、中でも脳血管内治療。久留米大医学部を卒業し、岡山大脳神経外科入局。1997年からスイス・ジュネーブ大に留学。帰国後岡山大に勤務、2012年から現職。15年度日本脳神経血管内治療学会会長。08年からサッカーJ2ファジアーノ岡山チームドクター。総社市出身、岡山市在住。51歳。


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