昨日は、第7回岡山t-PA研究会に出席してきました。
t-PAとは、tissue plasminogen activator(組織プラスミノゲン活性化因子)のことで、血栓(血の固まり)を溶かす薬です。
脳梗塞は脳の血管が詰まることが原因ですが、t-PAを投与(静脈注射)すると、t-PAの作用で血栓が溶けて、詰まっていた血管が再開通し、脳梗塞にならずに回復する、或いは脳梗塞に陥る部分が少なくてすみ症状が良くなると期待されます。
ただし、発症から早い時間で投与しないと、うまく再開通できても、すでに脳の神経細胞が死滅していれば症状の回復が期待できないばかりか、逆に出血性の合併症を引き起こすこともあります。
このt-PA静注療法は、米国で脳梗塞発症後3時間以内の超急性期例に対する有用性が証明されて、急速に普及しました。そこから遅れること約10年後の2005年に日本でも正式に認可されました。今から10年前のことですが、当時はマスコミも含めて、「脳梗塞に対する夢のような薬が登場した!」ともてはやされました。残念ながら、”万能薬”ではないのですが、t-PA静注療法は5-6割の患者さんには有効であると言われています。2012年からは発症4.5時間以内の患者さんに使えるように適応が拡大され、急性期脳梗塞の患者さんに対して、まず第一に行うべき治療です。
さて、昨日の岡山t-PA研究会では、t-PA静注療法の有効性をいかに高めるか、またt-PA静注療法が無効だった患者さんに脳血管内治療をいかに早く追加するか等々、岡山県の脳卒中に関係する先生方の発表を拝聴して、意見交換してきました。
そして、特別講演では日本医科大学神経内科教授 木村和美先生の「脳梗塞急性期に対する血栓溶解療法の現状と新たな展開」を拝聴しました。木村先生は2004年から倉敷にある川崎医科大学の神経内科に赴任され、2006年から脳卒中科の教授として一昨年まで岡山県のみならず全国の脳卒中研究を牽引する活躍をされてきた先生です。特に、このt-PA静注療法に関しては、日本のトップの先生です。最新のt-PA静注療法の知見に加えて、脳血管内治療の有効性が先週の米国での学会で認められたこと、現時点ではとにかく治療を早く行うことが重要と強調されました。私にとっても、非常に共感できる内容で、大変勉強になりました。
実は、先生は私の1級上の熊本大学サッカー部出身で、学生時代はお互い存じ上げていなかったのですが、非常に親しみやすいお人柄です。昨日も、研究会終了後は岡山大学神経内科教授阿部康二先生に連れられて、木村先生を囲んで意見交換会をし、いつものように楽しく過ごさせていただきました。東京に行かれても持ち前のバイタリティで大活躍をされていることがよくわかりました。東京での先生のさらなるご活躍を祈念するとともに、時にはこうして岡山に来て頂いて、引き続きご指導いただきたいと思います。木村先生、ありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
昨日は写真を撮るのを失念していました・・・残念。
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