ちょいボケじじいの旅・酒・エーとそれとね

毎晩酒を愛で古き日本と温泉を愛す、少し物忘れも出始めた爺が、旅日記やコレクション自慢などと、時々の興味のままを綴る。

空海と密教美術展に行ってきた

2011-09-03 16:09:26 | その他

 9月1日は防災の日で世間一般は訓練で忙しいだろうし、折から台風も接近してきていて遊びに出掛ける人は少なかろうと逆手をとったつもりで、人気で観客が多いという上野の東京国立博物館で開催中の空海と密教美術展に今日なら混まないだろうという目論みで出掛けてみた。

 この展示内容は高野山の総本山金剛峯寺、京都の東寺、神護寺、仁和寺、醍醐寺、香川の善通寺などを初めとして、関西と四国の各地に残る空海ゆかりの密教美術を網羅していて、出展リストによれば全部で66点中に1点だけ無指定のものがある以外は国宝または重要文化財に指定されているものばかりという豪華版で、これを見逃すともう見られないもののオンパレードなのだが、女房はゴン太を3時間以上は家に置いておけないというので僕だけで11時ごろに家を出た。

 東京国立博物館は2006年の全国から集められた素晴らしい観世音菩薩像を展示した「仏像・一木に込められた祈り展」以来、今回はその時以上の期待感を持っていたが、ちょうど昼時にかかるので御徒町で降りて、お手軽にガード下のその名も御徒町食堂という和洋中なんでもありの大衆食堂に入って腹拵えすることに。こちらの方は格調が低かったようであるなぁと。

                        

 ここのラーメンは旨いと聞いたことがあって、ラーメンと麻婆丼のセットランチを注文、手際よく出てきたものを見たらサラダ付きで、丼も半チャーハンぐらいかと思ったらもっと多く、これは僕には多すぎる分量じゃないですか。肝心の味の方だがラーメンはあまりにスープの色が濃いから心配したが見た目よりショッパクなくて、昔風中華ソバのやや濃いめぐらいでマァマァかな。麻婆丼は辛さはあるが山椒が利いていないから奥行きや香りがなくて町の中華屋さんのそのもの、それと作り置きしているからだろうけど片栗粉の粘りが強すぎてシツコクなっていて、これはチャーハンセットにしておけば良かったなと。まぁこれで780円というのは安いし、出てくるのも早いしで文句はありませんがね。常連らしきサラリーマン達の注文を聞いていたら、5種類ずつのメインとサイドメニューが選べる定食で刺身定食をとっている人が多かったみたい。

                   

 さてここから上野公園を突き抜けて歩くのに雨が降らなかったのはいいのだが、かわりに気温が高めで台風の影響で湿度もジットリと高くて大汗をかいてしまった。途中の東京文化会館手前の野球場の入口上の球場名に、正岡子規記念球場とあったのは初めて知ったが、ベースボールを野球と名付けたという子規はこの公園で野球を楽しんだのだそうだ。

                   上野公園正面入口

 お目当ての密教美術展は平成館で、こんな日和でも大勢の見物客が詰め掛けてはいたが、想像するに普段よりは少ないかったんだと思う、そんなには展示物の前で人混みの頭越しなんてことは無かったし、列が止ってしまって動かないということも最初のコーナーだけだったしね。

 展示は四部構成になっていて、経典や仏画を含む書画、仏像、法具、曼荼羅などがやや薄暗くした館内に展示されていたが、やはり目玉は空海直筆の聾瞽指帰と風信帖でこれには見入る人が群がる、他の活字みたいな経典などの文字に比べると肉付きが大きい雄大な書き方で素人目にも闊達な書体だと感心するけど、これが全く読めないんだよね。特に風信帖は手紙だから、草書でくだけた感じに書かれている部分が多いのと漢文調文体では歯が立たない。こういう時には古文が読めたらなぁと痛切に感じるよね、明治生まれか戦前に教育を受けた人ならかなり草書が読めただろうけど、今の時代はもうこの方面の専門家以外は全くダメだろうね。ということで2時間を超える見物は迫力を感じても消化不良で終了することとなった。

                   平成館は奥に

 帰りがけに日本ギャラリーの本館に入って行く人を見掛けたのでどんなものか回ってみたら、館内にいる人は入場料を払って正門を入ったことが分かっているから常設展は無料なんだそうで、これはこの前には知らなくて損したな。夕方前に帰らないといけない用事があって時間があまり無かったが、1Fの分野別と2Fの時代順の展示を一通り急いで見て回る。こちらにも美術の本に載っている写真の実物に、本当の大きさはこんなだったのなどと、やはり実物を見ると違いますなぁ。今回は金沢文庫の運慶展で見た現在は真如苑が所有する大日如来にもここで再会することができましたよ。

                   

                           日本ギャラリーの本館正面、左手の大木はユリノキだそうだ

 ほかにも今回は時間が無くて回れなかったがアジアギャラリーや法隆寺宝物館もあって、これらも見られるならもっと時間をとって来ないといけません。

 その後に家でビデオに撮っていた空海の書の番組「名筆の誕生」を見ていたら、七祖像に空海が書いたという不思議な文字のことや今回は出展されていなかった高野山霊宝館が保存する六朝時代の古い書体を入唐時に学んだんだろうという巻物の字は漢字の原型を見るようで、番組最後には空海が残した性霊集に字とは人間が万物に感動して作り出されたものだからそれをそのままに形どるべきだと書いてあると締めくくっていて、これには最近何冊か読んだ白川静の漢字の世界の話に通じるものだと、やはり空海は原始からの霊感を直感だけで得ることができた別格で偉大な人物だったのだと甚く感心してしまった。

 昨年は高野山に泊まり奥の院のお大師様に結縁したが、団体バスツアーで霊宝館など見る時間が無かったから今回の展示は是非見たかったのですよ。


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