サラリーマンが定年後の趣味としてやりたいものの人気ランクで、常に一番上位になるのは陶芸と蕎麦打ちだそうだ。僕もその仲間入りということになるが、今所属している蕎麦打ち同好会で手順を追って写真撮影してみた。
蕎麦打ちの基本は変わらないものの、打ち方の細部では流儀でかなり違いもあるようで、あくまでもこれは我らが先生のやり方を説明する。今やっているのは外2蕎麦、毎回同じようにやっているようでも出来上がりは変る、単純なようで奥が深いのが蕎麦打ちだとは先生の弁。
材料は蕎麦粉、つなぎ粉、打粉、これに加わるのは錬る粉に対し標準50%の水
まずは篩いをかけて鉢に粉を、蕎麦粉500gとつなぎ粉100gで計600g、篩いはやらなくてもいいが鉢で事前に2種の粉がよく混ざるように掻き回す、この量で5~6人前くらい
第一回目の加水は全部で300gのうちの80%、240gが目安だがその日の湿気で調整する、人によってはこれを2回に分けて入れることも
加水した部分の周囲の粉を上から掛けてしばし粉に水が浸透するのを待つほうがそのあとが幾分やりやすい
両手の指の先を鉢につけたままで回転させながら全体をよくかき混ぜる水廻し、最初はやや大きめな団子が多い、絶対に捏ね合わせないこと
この作業の早い段階で鉢にくっついてしまった粉や手に付いた粉は除去して全体の中に戻す、くっついていた粉はつなぎ粉だからだ(冒頭写真はこの初期段階)
全体に満遍なく水が廻ると粉は小さい玉になり色も変るし香りも発ってくる、大豆大のものは少しは残っていてもいいが鉢周辺にはもう粉っぽさはなくなっているように
この段階で出来が決まるといっていいからここまでを入念めにやること
二回目の加水は手に少しずつ取りながら振り撒く、加水量の調整は前段階のものを握ってみての水分の多少で加減する
適切な水分量であれば自然とそれまでの小さな粒がまとまってきて次第に大きな玉に成長する、まとまってきた最初は手の平部分を使って糞ころがしのように扱ってやるといい、指先は鉢に付けては同じだが手の平をやや下げる、
捏ねに移って最初は体全体を使って強く、棒状縦横に入れ替えて数回、粘りが出てきたら丸く菊の花状の皺が出来るように菊錬り、この段階で徐々に力は抜いていき最後は鉢の縁を使って生地を廻しながら優しく手前中心部に引きつけるように撫でこみをしながらまとめていく
赤ちゃんの肌のように肌細かい表面になっているはず
へそ出しして中の空気を抜くようにする
鏡餅のようにして捏ねは終了、捏ね鉢は奇麗になっているはず
打粉を薄く巻いたうえに鏡餅をとり、まずは手延べで大きい円形にしていく
最初の側は中央部は残して周辺部から薄く延していくのだが、外延に割れが入らないように手の平で外側をあてがいを入れて養生してやるといい
裏返して中央部を押して延し回転させながら全体が同じ厚さで奇麗な円になるようにする、厚さは手で撫ぜれば分かるので厚い部分があればそこを延す
この段階で均一な厚さで大きい円が作れればあとのめん棒での作業が楽になる
円状の生地をめん棒でさらに薄く延す、この場合打粉で験しを一箇所につけ30度ずつ回転させなが延す、上下反転だけで左右斜めと中央を延しさらに残った左右を延す、生地を回転させながらめん棒を時計回りに1/4回転させながらのばすと、熟練度に応じて皆さんやっている
めん棒に巻いて延すのは最初の2回は前後反転、次は左右側を反転で同じく2回、その後は時計周りに90度ずつ一回転させる4回の延しで菱型、四角、菱型、四角となって延し台の四角に合せて広げる
巻き延しは大きくなるほどくっつきやすくなるので打粉を忘れずに、どうしても中央が薄くなるのは避けられないので手を外側に当てるほど力を強くするように調整する、途中で形が歪になったらめん棒に巻くときもっと延したい部分を押してやったり、転がす最初に部分的にそこに追加作業してやるなど調整する
この作業終了後に手に打粉を付けてめん棒をしごいてそれまでの生地からの湿気を除去して、次の仕上の猫の手延し作業での滑りの支障にならないようにしておく
猫の手は親指を内側に畳みこんで軽く握った形でめん棒に当て、掌親指腹を使って前に押し転がし、爪先を宛がって引き戻しという作業の繰返し、押す際に手は横移動させたり一箇所にあてたりと延す目的範囲で使い分ける
延し台上部に延せる余裕をとってまずは左右角出し、中央部辺延しを行い、上下反転して同じ作業、そしてもう角出しは最初に終っているから最後に残った2辺だけを順次延す、以上は生地の半分ずつの作業となる、全体の厚さを見ながら猫の手でまずは広く大きくそして延したい部分に手を持っていき前方にめん棒をころがす、要は厚さを均一にすることがまず大事
生地は広がるほど乾きが早くなるからこれらの作業はスームースに行うこと
要点は前段階の巻延しでは中央より外周が注意しても厚めになるのでこの作業はそこを延して全体を同じ厚さにすること、最後にめん棒に巻き取って棒に沿って厚さをみて厚い部分を押えて延すこともできる、どうしても最後の調整で真四角にならなくてもどちらかの対向辺が平行になればいい、そちらの辺を合せるように最初に折り畳めば半端切り部分は出来ないから
この量であれば全部を一つに折り込む、平行2辺が上下であればまず打粉を上半分に撒き、下側をめん棒に少し巻きとり上に持っていって、巻き戻しながら辺が合わさるようにそっと置く、右利きなら次は右半分の折れる部分に多めにしながら全体に打粉を撒き左側をその上に折る、さらに同じ方向に同様の折りをすればあとは切るだけ
真名板に不陸調整用の打粉をして折畳んだ蕎麦生地を載せ、さらに切り口に掛けるためと駒板を滑らすための打粉を上にタップリ掛けてマッチ棒よりやや細くなるように蕎麦庖丁で切っていく
庖丁先端が生地上端の先2~3cmになるようにして刃を前に押し出しようにしてなるべく力を入れずに切る、一旦停めて左に庖丁の背の厚さだけ倒しまた同様に切っていく、駒板が真名板と平行を保っているかを見ながらリズミカルに、決して刃の先端を右側から覗き込むことはしないように、切るにつれて身体も左に移動して斜め位置関係を一定にする
生地左端にきたら真名板の中央に移動させ切り易いように、切った蕎麦は庖丁を裏返して先端で一人分ずつすくい取り上でやや広げて打粉が切口に付くようにしてから手にまとめとって余分な粉を振り2回で持ち替えながら落として保存容器にしまう
茹で方は沸騰するタップリ目の湯にほぐし入れ、箸で静に廻し、麺が浮いてきたら掬いとって冷水で締めればシッカリとコシのある蕎麦が味わえる
以上、蕎麦打ちの際に自分で気をつけようとしていることを整理してみた。実際に作業に夢中になるとついどこかに飛んじゃうんで、今一度しっかり頭に叩き込んでおこうと思って
もう80歳に近い大先生は長年の経験が身に浸み込んでいるから臨機応変でかなりアバウトでもちゃんと仕上げてしまうだけれど、そこまではとてもトテモ
全国の達人の方、このほかに腕を上げる方策や注意すべきことがあったら教えてください