旧望月の南側の山合いに入って行った場所にある春日温泉には数軒の宿があるが、今回我々が泊まったのは佐久市が運営する国民宿舎のもちづき荘(冒頭写真)で、どうしてここを選んだかというと10月にこちらに立寄り湯したときにあまりにもいい湯だったことからと、その時に宿泊料金を訊いたらとても安いしで、それに立寄り湯の帰りに見た駐車場では宿泊するらしい県外ナンバーの車が多くやってきているのにビックリし、かなり人気の宿らしいと睨んだものだから。
望月は古代には良駒の産地として知られ朝廷の御牧も置かれたところ、そんな歴史があるからでしょう、入って最初の受付には大小の藁細工の馬がズラッと並べられていたのは流石と、これらは売り物じゃないみたいであったが、土産物売場にはこういうのを置いてもいいんじゃないかと。玄関のすぐ目の前には売場があって、その一番前の目立つところには信州リンゴ三兄弟の箱に混じって春日産の白ゴボウという太いのがあって、これはこのあとの夕食ですき焼きに入っていて柔らかく美味しいと、リンゴはもっと安いのを買ったしでこちらだけを帰りがけにお買上げ。
受付カウンターの上に
信州リンゴ三兄弟と白ゴボウ
こちらに来るまでの望月の街中はまだ紅葉は進んではいなかったが、宿がある辺りは山に近いからちょうど真っ盛りになりかけ、客室の途中にあったロビー風の休憩所の前には里山の景色が広がり、ほとんど散ってきていた桜の向こう側に見えた低い山はいい色に染まってきている。この宿の周囲には桜が多く植えられているから春もいいかもね。
客室棟の休憩ロビーから
この旅館はかなり大型で収容力があって、中の施設には健康増進室なるものがあって、そこに卓球台があるのもレトロなと感じさせるように、建物自体は建てられてからかなり経過していると思われるが、適切に手を入れているようで内装はそんなにはみすぼらしくはないし、何よりも部屋のトイレがウォシュレットになっているのがいい。それと温泉はこの前に立寄り湯した風呂だけじゃなく、宿泊者専用の岩風呂というのもあるのには嬉しい驚きであった。ただし宿泊料金が安いから寝具の上げ下げはやってくれない、従業員は少なくしてヤリクリしているんでしょうな。
卓球台が3台も
開湯380年という温泉は成分表で見ると成分は薄いのに湯自体はトロリ、ツルリと肌に纏わりつくという気持ちいい湯で、注ぎ口にはコップがあって飲泉も出来るようになっていて、湯は湯船からあふれ出るという源泉掛け流し、洗い場のカランからの湯も源泉を使っているのが分かるという本物の温泉だ。このトロリ感のある湯はPH9.6というのとメタケイ酸が多いからだろうと推察する。泉温は21℃というから沸かし湯なのだが、湯温は40℃ちょっとぐらいでジックリ長湯してアー!いい湯だなと堪能しちゃう。宿泊者専用の方は内湯だけだが、もう一つの滝の湯というほうはジェットと打たせ湯があって、やはり両方に入って楽しんじゃおうと温泉のハシゴ、窓からの眺めも滝の湯の方がいいからね。ちなみに濃度が薄い湯だから、飲泉してもクセが無くて飲みやすいというのもこの湯の特長だ。効能では美肌に卓効とあって女性に喜ばれそう、長湯すれば角質がとれるから男性には水虫に効能があるだろうね。リウマチにもというのは飲泉によるものかな。出来ればサウナを設けて、源泉そのままの水風呂を作ったら評判になるのじゃないかと思うんだけどね。
温泉成分表
夕食はやや殺風景な長テーブル席の並ぶ食堂での郷土料理中心となっていたが、品数も多くてこの値段でこんなにと驚かされた。メインはすき焼でこれに佐久は鯉で有名だから洗いとの二つがメインか、あとは田舎料理ということで煮物などが、この中で海のものはブリ大根のブリと酢もの小鉢のカキぐらいで山の幸を多くというのは場所柄でこのましい。郷土料理の前菜皿にモロコらしきがあるのはいいけれどイナゴの佃煮はゲテモノで僕は好かん、というのも子供の頃に半生に焼いた青臭いイナゴ竹串を体にいいからと強制的に食べさせらた記憶が強烈で、これだけはもう絶対に食べないぞ。
酒は地酒の牧水という銘柄で火入れしていないという本生冷酒を、これはかって若山牧水が滞在したという武重酒造のものでその由来からの名づけ、ここ旧望月にはほかにも大澤酒造という造り酒屋があって、小さな町なのに近世も中山道沿いの豊かな歴史ある土地だったんだとの思いを馳せながら飲みましょうやとなった。
夕食
最後に出されたご飯は松茸ご飯が、国産かどうかは分からないが秋の炊込みご飯はマツタケだよね。それ以上にこれは美味しいと女房と意見が一致したのが一緒に出された岩海苔のお澄ましで、出汁味がよく出ていて海苔の風味と合わさってこれはいいと、最後のお椀というのは食事全体の印象には実に重要ですな。この宿は今後も利用しようと思わせましたよ。
翌朝も二つの風呂にとあとからの滝の湯に向かったら、その手前の食堂では7時半からの朝食の前なのに早立ちの人達はもう食べていて、こういう融通も利くんだねぇ。時間通りに食堂に行ったら昨晩の人たちは既に座っていて我々が最後の方かと思ったら、昨夜の夕食には団体で別室で宴会だったらしい小諸中学の同窓生という我々と年齢が近い連中が食堂に賑やかにやってきて、これに早立ちの客も加えたらかなりの入りだったんだと、平日でもこれだけ利用客があれば民宿に毛が生えたぐらいの値段でもやっていけるんだね。
朝食は煮物2種類、野菜サラダ、納豆と温泉粥はバイキング形式となっていて、全部を欲張ったらまたも腹いっぱいになってしまった。この宿は煮物の味付けはほど良い具合、これが暖かければ文句なしなんだけどねぇ、そして朝の味噌汁も美味しくて昨晩のお澄ましといい汁物の出汁のとり方が上手なんでしょうな。
朝食
翌日はお天気は下り坂となるというが夕方過ぎに家に帰り着くまでは大丈夫そうと、駐車場の目の前からの山里の秋の風景を目に留めてから二日目は長野方面に向かうことに。
山里の秋の風景