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僕が子供の頃にはまだまだ明治の名残があって、母の実家にいくと祖母はいつも火鉢の炭火で煙管に刻み煙草の火を点けて吸っていたのを思い出す。あの頃は女性も田舎の年寄は堂々と煙草を吸っていた、その先祖帰りで現代は若い女性が紙巻タバコを吸う時代かもね。でもいまや禁煙が社会の主流、ましてや刻み煙草など過去の遺物になりかけているのではとも言えるのだが。
そんな煙管と煙草入れのセットは明治大正以前には多く作られていて、そのデザインでは遊び心のある粋なものを競って身に付けていたという。そういうのを最近まで使っていたのは落語家などだろう、高座でもご隠居さんなどを演じて煙管を吸うしぐさなどお目にかかれるのでは。
そういうものだから隠れたコレクターもいるようで、中には大層立派なしつらえのものもあって高価らしい。今でも鳶の親方など、ハレの舞台用に金に糸目もつけずに豪華でいい物を買うということも聞いた。渋谷にあるタバコと塩の博物館には多くの収蔵品があるようだ。
そういう今では用も無い煙管と煙草入れのセットをかなり昔に面白半分で買っていて、もちろん安かったからで高級なものではありません。その一つが冒頭写真のもので筒差し煙草入れというらしい、次の写真は二重引出し方式の籐網代の煙管筒を抜いて煙管も出して写したものである。これは我家に長火鉢もあるから、そのアクセサリー用にと購入、決して使おうというものではありません。それに僕はもう禁煙歴30年以上だからね。
全体の組合せ
ズーッとほったらかしだったが、この際こういう無くなる運命のものについて調べてみようとネットでいくつか、今でも骨董以外で新しいものを作って売っていたのには驚いた、どういう人が買うんだろうか。
さて、こちらの煙草入れは印伝ということだったが、これだけ古くなると肉眼では刺繍布との区別がつきにくい、でも拡大鏡で見たらどう見ても布らしいから相良繍というのかな。アクセントとなる前金具をよく見ると、浪にもまれる舟の上に武将らしきが弓を手にしている姿ではないかと、これは誰を表現したものか。もしかして義経の八艘飛びだったら面白いのに、煙草入れの花の図柄との組合せでは関係はない感じ、深読みですかねぇ。表側には大きな菊のような花の図の痕跡があるのだが、この部分がほかの模様とどう違っていて色が消えたかは分からない、また裏には蝶なのか蛾なのかがこれは明らかにほかと違う刺繍になっている、こちらは花に蝶でしょう。
緒締は象牙だろうが、掘られたものが何かは皆目分からない。これも何かを表現しているはずなのだが、ハテ?
そして煙管の軸筒(羅宇)は竹、雁首と吸口は真鍮だと思われるのだけれど、吸口のほうには大輪の一輪作り菊のような彫金が付けられている。
全体に花がモチーフになっているようだが、前金具の舟に乗る武将らしきとの繋がりがどうも分からない。そんなことは関係なく拵えたものなのか、シャレが効いたところがこういうものの撮り得のはずなのだが、もしかして前金具は浪の花ということか。それでは緒締の彫りは何だろう。