最近の冬場は房総方面の方が多くて、ここ数年足が遠のいていた伊豆に四、五年ぶりで行ってみようかということになった。それも三連休なので伊豆だけではもう何回も訪ねているので退屈しそうと、静岡より東側の富士周辺に温泉なぞないものかと調べたら、地図にポツポツと疎らに温泉マークがあるなかに、芝川町は小さな川の奥、行き止まり手前に飛図温泉なる所を見付けた。川奥というロケーションに惹かれて、またここなら最終は清水の魚市場で仕入れもして帰れるなと、どんなところかと初めての宿を予約しての出発となった。
伊豆は勝浦みたいな大きな朝市は無いし、伊豆高原に多い美術館、ミュージアム、博物館やいろんなところに点在するテーマパーク、各種動植物展示園などなど、バラバラなテーマの私設館みたいなものばかりが多くて、いかにも観光!観光!だぞーといった感じ、どれをとってもこじんまりし過ぎていてさらにいろんな場所にばらけていて、焦点が無いなぁという印象が僕にはあるのです。大きくかつ見所がある施設としては、熱海のモア美術館と稲取のバイオパーク以外は僕は知りません。湿性花園がある箱根のように、もっと狭い地域に集中して美術館などがあるのと比べても見劣りするし、一回行けばまたという気持ちにさせるものがあまり無いのですね。歴史でも鎌倉時代のものは話として残っているだけで、具体的な名所旧跡は黒船以来のものが中心、あとは伊豆の踊子だけになってしまいますか。道路条件が悪いのもなんとかして欲しいですね。と否定的に書いてしまったが、伊豆はやはり美しい景色と温泉、それに新鮮な海の幸(中伊豆は川と山の幸が加わるけれど)が売り、これにプラスアルファして何かが今ひとつと言いたかったのですよ。天城名産ワサビ漬にしても、静岡の田丸屋みたいに茎ばかりというのは止めて、きざんだ根を一杯いれるぐらいの拘り、心掛けが必要なんじゃないでしょうかと、もう一つ八つ当たりしておきましょうかね。
という訳で、途中寄る当てもないので朝7時に家を出て、厚木から小田原厚木道路経由早川出口ではもう少し渋滞気味。やはり三連休の初日なんで、房総と同様に半島なかばの伊豆高原付近まではかなりの渋滞にはまってしまった。これを嫌って以前は早く出発したものだが、そうすると早すぎてまだ何にもやっていなくてということになってしまうのも困りもの。早くからでも自由に見られる景勝地でも何回も行く程でもないし、またじっくり街歩きという所が無いのがつらいですねぇ。伊豆へはこのほかスカイラインから中伊豆を河津に下るコースもあって、景色は良いのだが冬場は雪に要注意となる。また西伊豆から入って逆コースも考えられるが、これはまだやったことはありません。結構時間がかかってしまい、伊豆高原あたりでぐずぐずするとあとが大変と稲取まで直行し、まず最初は土日の午前中やっている港の朝市会場に立寄ることに。地元の魚、干物や野菜、ミカン、手作り加工品などを売っていて、東京では高いデコポンなどがあればこの時期は狙い目なのだ。ちょうど隣の会館内で保育園のバザーがあって、女房は目ざとくスチール製の雪達磨を模ったガーデン人形を300円で買いこんでいましたよ。
雪ダルマ人形は我家の鉢植えガーデンに
また最近ではここでは2月から始まる雛飾り展示が新聞などにもとりあげられているが、江戸時代から地元に伝わる風習を観光用に旅館組合が復活させたのだそうだ。ここのは庄内地方やこれも最近始まった千葉勝浦のような雛人形を段飾りするものではではなくて、小さな縫い包み風の縮緬細工人形などを紐で吊るして飾ったものが主役になっているのだが、華やかさがあって復活は成功していると言ってよいでしょう。これらの縫い包みは100種類以上があって、それぞれ女の子の健やかな成長を祈っての意味があるのだそうだ。町内2箇所の展示場では200円を取って見学させていたが、街内のいくつかの民家で飾りが覗けるところもありましたよ。販売もしていたがかなりお高い値段をつけていましたなぁ。自分で作るキッドも売っていて、女房は興味を示していたようだが、それも結構なお値段ですぞ。奇麗に飾られたものは30~40個以上乃人形が円周に吊り下げられているのだから、少々買って作っても華やかさは出ませんね。手間だって大変だしで止めさせましたよ。<女房はその後に公共施設での期間限定の縮緬細工教室などを見つけて、結構作れるように、いい根性をしてるねぇ>
吊るし雛の展示
文化公園の展示場を出ると停めた駐車場の先につい最近TVに出た魚屋の女将がやっているという食事処、田村丸の看板が見えたので、調度昼時にさいわいじゃと店に向かう。店の前まで来ると一瞬?印、お世辞にも小奇麗とは言えなさそうな様子、ショーケースの見本なども日焼けして色が変わって、これでは繁盛しているとはとても思えない。でも車が停められたことだしで店内に入ると先客は2組の5人がまだ料理待ち、女将は厨房で調理中の様子、でも客が入ったのは分かっているはずなのにいらっしゃいの声が無い。数分ほど経っても手伝いの中年女性もいるのだがお茶も出ないし、注文も聞いてこない、女房に奥に注文いいですか行かせたら待っててくれだと。5分ぐらいして最初の客の料理が出された時に初めて注文を聞くありさま。そうこうしていると、やはりTVで見たらしい客が何組か駐車場ないですかと中に入ってきたら、その応対も無愛想そのもの。先客もお茶がなくじっと待っていたので、TVできたらしいことがうすうす分かりましたよ。それで肝心の料理はというと、魚屋がやっていて魚の種類は多いようだけど、所詮は素人料理ですね。僕の網元膳は刺身はまあまあだが、煮魚は煮汁が濃いのに味が沁み込んでいなくて歯当りのふにゃっとしたもの、ご飯もまずい。女房のマグロ丼も三崎のようなヅケにしたものではなく、切ったままを乗せただけでゴマもかかっていないというしろもので、醤油用小皿もなしできたので、このまま上からぶっかけて食べるのか文句をいう始末。そういえば僕の刺身にはワサビがついていなかったしねぇ。TV局もどういう基準でこういう店を出すのか、これは罪作りですよ。帰りしなには、外で待つワゴン車の7人客によっぽど止めた方がと言ってあげたかったですねぇ。稲取ではここよりは多少値段は高くても(高いといってもほんの少しだけでリーズナブル)徳造丸の方がずっとお薦めである。また時間によっては、手前の熱川やこの先の下田方面で昼という選択肢もありますね。
今日泊る今井浜に近い河津駅周辺は明日の日曜日から桜祭ということで、し見ていこうと立寄る。この河津桜は寒緋桜と早咲き大島桜の自然交配したものが偶然に見つけられ増やされたものだそうで、早咲き、濃色大きめの花は2月上旬から1ヶ月間は楽しめるそうだ。前回たまたまこの時期に来てからは既に5年ほどとなるので、大きく見栄えが良くなっているのを期待したのだが、染井吉野などと違って成長が遅いらしく、見違えるほどとはいかなかったが数は増えていましたよ。これを見ると明治初期に植えられた信州高遠の小彼岸桜は樹形もかなり大きく見事で、あれほどになるのは歴史が必要なんだとヨーク分かりました (弘前城のソメイヨシノも明治15年の植樹だそうで実に見事) 。また今回の旅行では伊豆のいろんな場所で桜がもう咲いていたが、全部が河津桜ではないでしょうにねぇ、やはり暖かい土地なんでしょう。
河津桜の濃い紅と菜の花の黄色
明日は松崎経由で北に上る予定で、第一日目に下田にも行っておこうと足を伸ばす。途中すぐ手前の爪木崎は水仙自生地として有名だが、2月もこの時期になるともう終りです。下田にも何回か来ているので、少しは変わっているかという興味だけで町の中心部を少しだけ歩く。車は市民会館が催し物で駐車できなかったので、日米修好条約が調印された了仙寺奥の観光客用駐車場に入れる。この寺の正面側を出ると、川沿いのペリーロードというレトロな雰囲気が残った一郭がある。中心街の端っこにあたり、ここから街中は歩いてもそう広くはないからブラブラ歩きで一巡りできる。
下田で必ず立寄るのが杉浦陶房という個人陶芸作家の店。静岡県は春野町出身で、東京芸大出の陶芸家の作品販売所で、昔は年寄りのお親父さんが息子がここ下田の土で作っていますと熱心に客相手していたものだが、今は連添いが店を守っている。その作品は見るほどに素晴らしく、これまでにぐい呑、湯飲、小皿、コーヒーカップなどを買ったものだが、今はかなり高い値段がついてきていて、ちょっといいなという中皿など20000円からと即座に買うわけにはいかなくなりましたなぁ。奥方いわく、本人は絵を描きたくて過ぎるのですと言っていたが、我々は鳥のデザイン化されたなんとも味わいのある絵は好きですねぇ。カラスの掻き落しなどの絵柄はほかでは見られないもので、その深めの大皿は10年ほど前で35000円が今では倍ぐらいの値段ではないでしょうか。ここ以外では銀座和光で売られたことがあるそうだが、僕は日本橋三越の芸大卒業生展で販売されていたのを見たことがあります。もう一つ立寄るのが小樽の吹ガラスなどを売るはしよねという店名の女性がやっている店。値段はやはり高目はあるが、手作り不揃いなところに味があっていいものです、でも下田で小樽のガラスというのも何か変ですかね。
杉浦陶房
小樽ガラスの店