熊本県川柳研究協議会(熊本川柳研)

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会員エッセイ

2022-02-27 12:15:06 | 会員エッセイ

  

お内裏様とお雛様の位置についてはいいろいろ謂れがあるようです。上の写真はあじさいさんから。  

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  🌸 会話 コメント

東京五輪や、北京の冬期五輪などでの競技前後の選手インタビューでの受け答えで、スケートボードやスノーボード等の選手のコメントが自然な会話調で新鮮に聞こえました。理由は最近のスポーツ選手とインタビュアーの会話は、まるでコンビニのマニュアル会話のように定型化されていたからです。

「自分がどんなパフォーマンスが出来るか楽しみです」とか「出来ればいいのかなアと思います」といった表現の仕方が非常に多く、会話としてではなくスポーツ紙にまとめられた寸評のようなコメントが非常に多い昨今です。

以前、町中を訪ね歩くという民放の中継番組で、レポーターが道端で作業をしているお爺さんに「お爺さん、こんにちは~」と声をかけたら、「さっき挨拶したばっかりじゃろう」と応えられて「さっきはリハーサル今度は本番」と動揺しつつも内幕をバラすことで、スタジオの笑いをとっていました。

お笑い界における失敗をも咄嗟に笑いに代える芸に妙に感心した覚えがありますが、それよりも更に「へエ~おかしな連中だな」と半分あきれ顔で、構わず作業を続けていたお爺さんがとても新鮮で頼もしく見えたものです。

震災直後、お気に召すコメントを求めて、同じ質問を角度を変えて繰り返すインタビュアーに、辟易した実体験から、スポーツ選手が会話をコメントとして纏めてしまいたい気持ちも理解はできるのですが・・。

迂闊には答えられない問いばかり・・・しろ猫

      byしろ猫


森中惠美子さん

2022-02-22 15:20:59 | 川柳一般

永く熊本日日新聞の「読者文芸欄 川柳」の選者をされていた森中惠美子さんが4月から木本朱夏さんへ変わります。(2022.1.25)のブログ参照。ここでは森中惠美子さんの句集の一つ『ポケットの水たまり』を紹介します。

負け戦から山国に住み慣れる

米代を稼ぐミシンだとは言わず

雲流れ流れて友はみな嫁ぎ

うつくしく書く薄情な男文字

髪梳いて縁のなかった人と知る

子を産まぬ約束で逢う雪しきり

夏みかんはげしき思慕を押さえ得ず

あるときの母を憎んで三十五

いっしんに男を思う糸を吐く

衿芯を好きだ好きだと刺している

母はまだひとりでまたぐ水たまり

しあわせをつかみ損ねた木綿糸

朝ごはん男と食べたことがない

仏壇を開きさくらを見せてあげ

冬の入口でイヤリングを落とす

上の写真の文庫サイズの句集の最後に「森中惠美子の世界 雪の約束」として梅崎流青さんが22ページにわたって書いておられます。昭和25年、20歳のときの新聞投句から始まった惠美子さんの歴史を知ることができます。上に紹介した句は梅崎流青さんの抄出されたものから抄出。以下は最後の部分のくだりです。

 「平明なことばで深い川柳」とは川柳家の目指す指標だ。一見、いつでも手の届く所に翻る旗のようだが歩みよると遠ざかる。その旗をあの「フランス人形」は造作なく自分の彩に染めてしまう。

 これはもう持って生まれた天性のもの、といっていいだろう。

 「無技巧で心から心へ」の惠美子川柳は、私たちの「川柳とは」の問いかけに対し時には「春風」、時には「ヤスリ」となってこれからも応えてくれるだろう。

 達筆な惠美子さんご本人の句のサイン

  本の奥付

追伸

今年2022年5月22日に予定されれている本研究協議会主催の川柳大会に選者として森中惠美子さんが来熊の予定です。木本朱夏さんも同行の予定です。無事に大会が開催できることを願うばかりです。(Y)


いまさら新子それでも新子

2022-02-16 00:00:01 | 川柳一般

現代川柳選1『月の子』新子自選集 から

昭和62年発行の「有夫恋」が話題をよんで時実新子がブレイクしたのはご存知のとおり。この本はその9年も前の昭和53年に発行されたもの。書かれた年代ごとに5章に分かれている。昭和4年生まれの新子が川柳をはじめた25歳~34歳のころから48歳までの句が載っている。圧倒的な湿り気に溺れそうになるが、正直に真直ぐに書くことが新しかった時代だ。次の8句は最初の章「四時の汽車 昭和二九年~三八年」から引いた。

靴音が近づき胸を踏んで過ぎ

恋成れり四時には四時の汽車が出る

凶暴な愛が欲しいの煙突よ

劣等感一途に烏賊のわたを抜く

ガーベラの赤企みを休ませず

切手の位置に切手を貼って狂えない

その上にまだ同情という侮辱

よく笑う妻に戻って以来 冬

 写真は本の奥付

なお、この本は田口麦彦氏が所有していたものらしい。熊本市上通の舒文堂から購入した。新子さんが亡くなったのは2007年3月10日もうすぐ15年になる。(Y)


椿

2022-02-06 00:00:01 | 川柳一般

  カーネーション椿 あじさいさん写真提供

命日につばき一花の遠い恋  黒木せつよ

椿落つ音なく時が横たわる  奥山晴生

すこしだけ椿の赤に近くなる  大西康世

裏切った数だけ落ちてくる椿  間瀬田紋章

てのひらに乗せると眠る紅椿  本田洋子

ポタリ落ちまだ温かい紅椿  森廣子

【句の引用出典

三省堂新現代川柳必携  川柳データバンク  現代俳句データベース