熊本県川柳研究協議会(熊本川柳研)

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会員エッセイー現代川柳のゆくえー

2022-08-26 09:01:58 | 川柳一般

ふりょの星』暮田真名(くれだ まな) から  

 左右社 二〇二二年四月二十八日発行

寿司ひとつ握らずなにが銅鐸だ

いけにえにフリルがあって恥ずかしい

正体が笑気ガスでも友達だ

十字路がある水でよかった

意味は自動ドアごしの黙祷

やがて元通りに嘘になるだろう

余力があれば荒廃しよう

貧乏だといわれた方が幸せだ

調律をしても心が痛まない

ほんとうはあらゆるものが裏起毛

シャトルバス以外は荒野なのだから

音がないところもあるが友達だ

彼女の句は言葉の意味に過剰に頼ることを良しとしていない。短歌から入り、川柳を書き始めてわずか5年で『補遺』『ぺら』『当たり』(3つとも私家版)、『ふりょの星』と川柳句集を出している。書いたものは世に問うという純粋な文芸の世界だ。

全日本川柳協会という大きな組織を意に介せず、各地大会にも何の関心ももたずに、ただ書きたい川柳を書いて世に問う。彼女はSNSでも毎日多くの発信をしている。彼女の川柳の魅力に集まる人にWEB上のオンラインで有料の講座まで開いている。名前を検索すると何件もヒットする。そのような積極的な若い人は少なからず見られる。文学を深く学んだ基礎があるとはいえ、向き合い方が半端ない。彼女にとって川柳は趣味ではないのだ。

webのTHA SANKEI NEWSの【聞きたい。】から彼女の言葉(「 」内)と記者の書いた記事から箇条書きで引く。(赤字部分)

・「…(川柳人の)小池正博さんの『水牛の余波』という句集に衝撃を受けました。そこでは言葉が人間の目的のために使役されず、人間とは無縁に存在しているように感じられたんです」

・「一般的な川柳は、共感を誘い、くすっと笑えるものを目指していますが、それって現状を追認する危険性をはらん

でいるように感じます。私は読んで安心できないものを書きたい」

・一般になじみのある川柳が「あるある」を志向するならば、自身は逆に「ないない」を目指すのである。

・言葉にピンときたら、それを川柳の定型「5・7・5」のなかに放り込む。その際に論理性は無視する。

・「『溜飲(りゅういん)を下げる』といった心性から無縁であるという一点において、これらの奇行は美しい」

最近の現代川柳は彼女のほかにも短歌や映像から若い世代が流れてきている。俳句よりも短歌と川柳は近い。そもそもジャンルという概念が崩れてきているのかもしれない。先日、やはり最近歌人ながら川柳句集を出した平岡直子さんとの対談で、「人を傷つけないでおこうと思ったことはない」と発言した。つまり、純粋に書くことだけに向き合うという文学的示唆に富んだ発言だろう。

間口の広い川柳の世界だからこそこのような川柳を無きものとしてはならない。未知の分野を排除すれば趣味や楽しみとしての川柳は残るだろうが、文芸としての川柳はやせ衰えてゆく。定型(五七五または七七)で話し言葉で詠むというくくりである以上、たしかに川柳にちがいないのだから。私の詠む川柳が古川柳の域に入ろうとしているのを実感する。50年後100年後はどのような川柳世界が展開されるのだろう。立ち会うことができないのが残念だ。              いわさき楊子   


令和4年噴煙川柳大会のお知らせ

2022-08-20 09:08:15 | 川柳一般

令和4年噴煙川柳大会が開催されます。

期 日 2022年9月18日(日)

ところ 熊本市民会館シアーズホーム夢ホール 2階 大会議室

欠席投句締め切り  9月5日(月)消印有効 

下の投句用紙は欠席投句者用です。A4大です。9/18当日ご参加の方は会場で渡される句箋用紙に書いてご提出ください。


残暑お見舞い申し上げます

2022-08-13 17:20:49 | 川柳一般

阿蘇の秋の花々が美しい季節です。阿蘇では野の花を盆花とするそうです。

 コオニユリ

 ヒゴタイ

 エゾミソハギ

 カワラナデシコ

 コスモス

 栗

                                  ※写真はしろ猫さんのブログからいただきました。

逆さまに貼った切手で秋が着く  木本朱夏(三省堂 新現代川柳必携  田口麦彦編)

仏さまへ首の短い花を撰る  森中惠美子(川柳句集 水たまり今昔)

九月の海失くしたものはいらぬもの  宮本美致代(句集 新町四丁目)

九月来る瞼のおりてくるように  八上桐子(三省堂 新現代川柳必携 田口麦彦編)

九月の蠅を拾い集めるシニフィエ氏  飯島章友(成長痛の月)

月で待つ見知らぬ人の振りをして  西沢葉火(擬態するパピプペポ)

目薬を買い足して秋の七草  森山文基(にいな 森山文基句集)

秋の気配は肉球の温かさ  猫田千恵子(川柳作家ベストコレクション)

金木犀ピアノは妹を選ぶ   芳賀博子(髷を切る)

「またね」って言ってくれないから秋ね  やすみりえ(ハッピーエンドにさせてくれない神様ね)


再UP8月締め切り大会

2022-08-09 20:19:24 | 句会・大会

■ 第五十回 くろがね吟社句碑まつり川柳誌上大会(福岡県) 投句締切 令和4年8月10日 当日消印有効 

■ 第11回入来温泉川柳大会 (鹿児島) 応募締め切りは8/15。

昨年の大会大賞句

小学生の部 おんせんでほっと一いきふにゃふにゃだ  景浦 希子

中学生の部 湯につかりきっと忘れる嫌なこと  西薗 季

高校生の部 青い汗湯船にさらす試合あと  福山 澪和

一般の部  砂風呂の砂にストレス置いてきた  古賀順子 

■ 第1回薩摩川内こころの文芸大会(鹿児島)

国民文化祭を2015年に開催後、毎年行われてきた川柳大会を文芸大会へ広げて新たに開催されます。今までになかった、異なる短文芸ジャンルを包括した企画の大会が開かれます。応募締め切り8/31.


会員エッセイ

2022-08-03 08:04:06 | 川柳一般

      ウインカーで会話 🚗

最近運転中の車の合図について思うことがあります。合図の時期、合図の省略、法に定めのない合図、等々です。

合図の問題は、今に始まったことではないのでしょうが、最近は著しく多くなった気がします。進路変更の3秒前とか交差点の右左折は30m手前とかは、法令の初歩の初歩ですよね。しかし、現状は著しく守られていません。円滑な交通を阻害するレベルくらいにはなっています。

でも、譲ってくれた後車にハザードランプを点滅させて謝意を表する行為は、法令に定めが無いのに、日常的に履行され一般化しています。これをやらないドライバーは礼儀知らずと思われかねない状況です。この、車という自分だけの個室空間はネット社会におけるSNSの匿名性の空間と心理的に似たところがあるような気がします。ネットでは、利用者同士の暗黙のルールに従わないと炎上したり、逆に緊密なグループの繋がりでは、返信・既読ひとつの扱いで関係が壊れかねません。車の運転を、個室や匿名のSNSと同列にとらえ、更に無意識であることから、運転中の合図も自己表現のツールと考え、周りの人や車との間に合図で会話していると認識されていないのではないでしょうか。うつむきながらスマホに集中し、生きた人間を見過ごすのと似ている気がしてなりません。

表情がない故怖し野の埴輪・・・しろ猫