草むしり無念無想の地を広め 井上信子
今から六十五年ほど前に書かれたようです。
このさきを考へてゐる豆のつる 吉川雉子郎
のちの吉川英治さん。
音もなく花火のあがる他所の町 前田雀郎
花火に誘ってくれた友人への、詫びのハガキに添えた句。
わくらばのいちまいにまいいぬのしり 高田寄生木
すべてひらがなでかかれていてことばであることをみうしなってしまいそうになります。
フライパンの重さと春の水平線 加藤久子
この句は、アンソロジー『はじめまして現代川柳』未収録。
残業がなければ川を見て帰る 楢󠄀崎進弘
楢󠄀崎さん、楢崎さん、どちらが本来の表記なのでしょう?
鏡から小人が駆けてくる時間 坂東乃理子
このかたの句集も新規参入組には入手困難なので助かります。
しまもと莱浮(抄出)
最後に。私が購入した初版本には訂正箇所が十六箇所ありました。初版本をお持ちのかたは、付属の正誤表を確認されることをおすすめします。
『近・現代川柳アンソロジー』 桒原 道夫/堺 利彦 編 新葉館出版 2021年12月21日初版 より