熊本県川柳研究協議会(熊本川柳研)

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山茶花十句

2024-01-28 00:00:01 | 川柳一般

           写真提供 村上和巳さん

        散りながら咲く山茶花の疲労感  河村啓子

        山茶花の白に返せぬ借りがある  嶋澤喜八郎

        山茶花の艶死ぬ気など無いらしい  平沢やす子

        山茶花の赤に囲まれここは圏外  情野千里

        山茶花の散ったことろにある情け  土井直子  

        山茶花に呼ばれたような別れ際  藤井幸子

        いづれさざんか人体かくもけなげ    加藤知子

        さざんかの寝ぐせを直す母である    岸本マチ子

        白さざんか剃刀は一枚で足りる      塩野谷仁

        避難所に避難者の息さざんか散る    矢野千代子

                  出典 川柳データバンク 現代俳句データベース )


フォト句集という試み

2024-01-22 12:51:41 | 川柳一般

写真をみて詠むという方法があります。見たものを説明するのではなく、それから発想を飛ばすというごく詩的な詠みです。手元にある高橋かづきフォト句集『ふあんのふふしぎのふ』(2017.11.4 川柳杜人社発行)から、いくつかのページを紹介します。作者は川柳人。川柳の間口の広さをおもいます。(Y)

 

                

 おぼえてはいないだろうが抱きしめる

 

 うつくしい青いぼくらの蒙古斑

 

 おすすめのワクチン接種してもらう

 

   いっぽんの木から捥ぎとる誕生日


いしかわ百万石文化祭2023 大会誌

2024-01-15 06:20:06 | 川柳一般

                                   いしかわ百万石文化祭2023

                     第38回国民文化祭 第23回全国障害者芸術・文化祭

                       2023ビエンナーレいしかわ秋の芸術祭連携事業

                     文華の粋を詠うin七尾市「川柳の祭典」

                                                             

入 賞 作 品

〇文部科学大臣賞

    いのちみな生きてひとつになる祭り   青森県 岩崎眞里子

〇国民文化祭実行委員会会長賞

    てっぺんに立てば迷子になるらしい   奈良県 加藤江里子

〇石川県知事賞

    傷ついておいでアップルパイ焼けた   愛媛県 正岡 鏡花

〇石川県教育委員会教育長賞

    戦争と平和を兼ねる武器らしい      北海道 飯田 活魚

〇七尾市長賞 

    緞帳が下りる瞬間まで祭り           青森県 髙瀨 霜石

〇七尾市教育委員会教育長賞

    七難をかくすとぼくが消えました    石川県 表 よう子

〇一般社団法人全日本川柳協会理事長賞

    祭りです白で生まれて白で死に     北海道 田中 良積

〇一般社団法人全日本川柳協会理事長賞

    先端にいるのは命ある兵士           岐阜県 毛利まさ子

〇石川県川柳協会会長賞

    泥水も火の粉も今のありがとう       石川県 竹中つる子

〇石川県川柳協会会長賞

    モナリザはきっとモンペが似合うはず  茨城県 小島 一風

入 選 作 品(熊本県のみ)

「祭り」梅崎流青 選 

 〈佳 作〉

       出し切った祭りの後の虚脱感        北村あじさい

     くまモンがいるだけで祭りなんです   阪 本 ちえこ

     気がつけば祭りばやしのうずにいた   寺 中 良 好

     ささやかに最後の祭り家族葬      村 上 和 巳

「兼ねる」大島凪子選

 〈準特選〉

       書き置きの重しになっていた指輪    寺 中 良 好

 〈佳 作〉

       三権のすべてを兼ねる独裁者      村 上 和 巳

       お互いが兼用傘になる夫婦       北村あじさい

「先 端」岡本 聡選

 〈佳 作〉

       先端の傷は特別痛いです         内 田 則 子

       同意書に最先端と書いてある               緒 方 正 堂

「地 味」濱山哲也選

〈準特選〉

       名声もトリミングして地味に生き      道 田 佳 香 

 〈佳 作〉

      地味装う下着は華やかなわたし          荒 木 昭 美

      地味めな色が踊り出す水墨画            阪 本 ちえこ

      こつこつと積み上げてゆく研究者         徳 丸 浩 二

「プラス」大竹 洋選

〈準特選〉

      審判の目に追加するカメラの目      田 中 賢 治

〈佳 作〉

        少し欲男と集う焼き鳥屋          平 田 朝 子

「七」片岡加代選

〈佳 作〉

     散骨も七つの海を渡る旅          道 田 佳 香

      七三に分けられるほど髪がない       田 中 賢 治

      手術中かがり火七つ燃えている       草 間 呱 呱

                                                                                          (レポート 北村あじさい)

   この大会誌は2024.1.1の能登半島地震の直後に送られてきました。心よりお見舞い申し上げます。


会員よーこエッセイ

2024-01-10 17:06:35 | 川柳一般

                わたしの詠みたい川柳 

                     冬薔薇のつぼみ 撮影:村上和巳さん

                

具体的には人の役に立たないもの。感動をあたえすぎないもの。想い出つづりでも格言でも報告書でも挨拶文でも説明文でもお礼状でもないもの。読んですぐは軽いけれどしばらくしてから重く感じるもの。最初は冷たいけれどしばらくく触れているとある程度の温度を感じるもの。詩情はあるが自己愛に陥らないもの。すべてに平等な視線でながめたもの。遠くを眺める感じで自分をみたもの。少しの微笑をもって読めるもの。そして具体的には何も伝えないが心の奥底に沈んで豊かさを醸しだすもの。

そんなものを書けないだろうか。理想だけは高く持ち続けよう。  (いわさき楊子)