誰も書かない「ハリウッド・ハワイ・米国」の本音トーク

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ハリウッド・人種差別・早川雪洲/ A Long-term Racial Segregation in Hollywood (Sessue Hayakawa)

2020-10-01 | ハリウッド

「健全な民主主義の先頭に立つアメリカ合衆国でありながら、いまだに人種差別問題が解決できず苦悩していることが、なげかわしい!」

米国の大学で映像・映画の歴史を勉強すると必ず「ハリウッドで初めてトップスター・セックスシンボルになった俳優ラドルフ・ヴァレンティーノ (イタリア人 Rudolph Valentino 1985~1926) は… 」という記述が出てくる。ところが、ハリウッド草創期のスーパースター・セックスシンボル(silent-screen superstar & sex symbol) は セッシュー・ハヤカワ(日本人 Sessue Hayakawa / 早川雪洲 1889~1973)で、 1910 年代、1920 年代に数々の映画で主演しヒットさせ、フランスでも映画に、英国でも舞台に出演し、ドイツを含めた国々で超有名だった事実を知っている人は、今ほとんどいない。喜劇王チャーリー・チャップリン(英国人 Charlie Chaplin 1889~1977)と当時、世界映画の人気を二分していた。それを象徴するかのように、雪洲のハリウッドの豪邸で頻繁に行われていた華麗な夕食会・大パーティにはヴァレンティーノやチャップリンがたびたび招待され出席していた。

数々の書物・参考書にはサイレント・フィルム時代のトップスターとして、ヴァレンティーノ、チャップリンの他、ダグラス・フェア―バンクス(米国人 Douglas Fairbanks 1883~1939) 、西部劇のウィリアム・S・ハート(米国人 William S. Hart 1864~1946) 、喜劇のバスター・キートン(米国人 Buster Keaton 1895~1966) 、喜劇のハロルド・ロイド(米国人 Harold Lloyd 1893~1971)  などが明記されている。そこには雪洲の名前はない。そして、彼らと共演した有名女優も全員が白人(Caucasians) であった。

なぜ Sessue の名前が何処にも出てこないのか?初期の米国映画産業界でスーパースターとして栄光の座に君臨したものの、黄色人種・アジア人ということと、当時の日本人排斥運動が重なって、あらゆる書物の記述・記載から完全に消されてしまったのだ。非常に残念で悲しいことである。

セッシュー・ハヤカワ(早川雪洲)は本名を早川金太郎といい、千葉県の裕福な網元であった早川家に6人兄弟の3男として生まれた。海軍兵学校を受験したが不合格で自殺をはかる。21才の時、渡米するが苦学し厳しい生活をおくる。その後、ロサンゼルスの日系人社会に移り演劇を学ぶ。当時すでに女優としていた活躍していた青木鶴子と出会い、彼女のツテで映画入り。後に鶴子と結婚。60本以上のサイレント・フィルムに出演し頭角を現す。そして欧米で映画の大スターとして認知される。トーキー Talkie になってから出演した『戦場にかける橋 The Bridge on the River Kwai 』(1957年コロンビア映画)でアカデミー助演男優賞にノミネートされる。この映画は、アカデミー賞の作品賞、監督賞、主演男優賞、脚色賞、撮影賞、編集賞、作曲賞の7賞を総ナメにし世界的大ヒットとなった。でも、ハヤカワは助演男優賞を取れなかった。皮肉にも、同年のアカデミー賞を争って4部門の賞を取った映画『サヨナラ Sayonara』(1957年ワーナー・ブラザーズ映画)でナンシー・ウメキ Nancy Umeki (日本人 ミヨシ・ウメキ Miyoshi Umeki / 梅木美代志 1929~2007) が助演女優賞を獲得した。アカデミー賞の91年の歴史の中で、最も注目される演技の4賞(主演女優賞、主演男優賞、助演女優賞と助演男優賞)で賞を取った日本人は、今までに彼女1人だけである。



コロンビア映画『戦場にかける橋』


一時期、「白人だけのハリウッド映画」という強烈な批判が全米で起こり、また「アファーマティブ・アクション」(Affirmative Action =黒人、少数民族、女性など歴史的、構造的に差別されてきた集団に対し、雇用、教育などを保証するアメリカ合衆国の特別優遇政策)を強く意識し、映画・テレビの主役級は、白人1人、女性1人、黒人1人、アジア・ヒスパニック系1人の4~5人の構成を半強制的に起用するドラマが多数、制作された。また、出演者全員が黒人である映画も意図的に作られたりした。それでもなお、いまだにハリウッドで白人至上主義がはびこっているのが不思議である。■YS


【参考ブログ】
差別問題
『ハーフ・混血児・人種差別・大坂なおみ』(2018・9・15)
『人種差別(2)』(2009・8・3)
『人種差別(1)』(2009・5・24)
映画・俳優関係
『アカデミー賞(2)』(2020・2・10)
『三船敏郎(恩人)』(2015・6・27)
『アカデミー賞(1)』(2013・3・12)
『米国で最も有名な日本人:クロサワ・ミフネ(黒澤明&三船敏郎)』(2011・11・7)
『サイレント・フィルム』(2009・10・18)





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