小説新潮5月号の特集が二つあって、その一つがこの「これが警察小説だ!」である。
5本の小説である。例によって評価は以下のとおりである。
評価の項目 ①オチの意外性 ②納得性 ③余韻 ④嗜好性
評価 Aいい Bまあまあ Cあっそう D問題外 E読まなければよかった
「冤罪」今野敏 ①=B ②=C ③=C ④=C
警視庁刑事部長の伊丹は放火事件で誤認逮捕・冤罪があったということ聞き、所轄署へ行く。
事件の犯人を捕まえたと思ったら、別の者が自首してきたのだ。
現場では自首してきた者を真犯人とする意見が強いのであるが、どうしても最初の犯人が真犯人だという刑事がいる。
伊丹は迷った末に、同期の大森警察署長・竜崎伸也に電話をかけて相談する。
竜崎は面倒くさがりながらも一つのアドバイスを送る。
そのアドバイスに従った結果は・・・
「バスストップ」誉田哲也 ①=B ②=B ③=C ④=C
練馬署・刑事組織犯罪対策課の魚住久江巡査部長のもとに「強制わいせつ事案」の調査がはいった。
被害者からの事情聴取がすんだころ、警視庁から佐久間警部補がやってきて、その事案との関連事件を調査しているから調書を見せろと威丈高に言う。その後も捜査の指揮をとり、事件の翌日に現場にいたというだけの理由で一人の男を確保する。
魚住は、その男の話を聞いてつい先日友人の万里子から聞いた話を思い出し・・・・
事件というか男が現場に行かなければならない怪しい行動の理由の意外性というのも話の筋として面白いが、なんといったって佐久間警部補の傍若無人な態度に腹が立ち、それが最後に大逆転するのも面白い。
警察の階級制度と年齢との関係などによる人間関係が警察小説を面白くするひとつの要因であることがわかる。
「孤独の帯」安東能明 ①=C ②=C ③=C ④=C
本庁管理部門の経験の長い柴崎は、部下の拳銃自殺の責めを一人で背負わされ、綾瀬署の刑務課長代理となった。
刑務課長は次長が兼務しているが、その次長・助川は、柴崎が警部に昇任したときの警察学校で行われた「警部任用教養」の4ヶ月の研修のときの「刑事警察」の講師であった。
研修の際に「現行犯逮捕をしたことのない者」ということで1時間の授業中ずっと立たされていた。
その綾瀬署管内で『自絞死』の事件が発生し、柴崎は助川に連れられて現場に赴く。以後その事件に取り組むのであったが・・・
「邯鄲の夢」永瀬隼介 ①=C ②=C ③=B ④=Cマイナス
三鷹署の交通係長の国光警部補は、娘に婚約者を紹介され驚く。
それは昔、国光が警視庁生活安全部に勤務していた頃取り扱った事件、そしてその事件をもとに人生が変わってしまったことに関連していたことと関わりがあるためであった。
そして国光は昔の事件とのかかわりと娘の結婚を成就させるために・・・
なんというかちょっと前の時代のお話かと思う設定であった。
「禁猟区」乃南アサ ①=C ②=B ③=C ④=B
若山直子巡査部長は夫と社会人の長女と大学3年の次女がいる。
その直子はあることからホストクラブに出入りし脅されている少女たちの家から事件の解決をしてあげるといってお金をもらっていた。
また、以前補導したことのある男がホストになっていてそのホストクラブにも入り浸っていた。
そしてまたホストクラブに絡んだ事件でホストクラブと少女たちの家からお金を巻き上げようとするが・・・
この物語は警察組織のドラマではなく警察官のお話であり、それはそれで面白かった。
総評
5本ともおもしろかった。前3本は警察組織の階級制度のなかで自分と組織をどう折り合っていくのか、ということが隠れたテーマであったような気がする。
今の世の中、こういう階級制度というのはあまりなくなってきたので、警察という組織がある意味「新鮮」なのかもしれない。
「階級」ということが徐々になし崩し的に社会から消えていっていることについて今後警察はどう対応していくのだろうか?
そういう意味で後の2編は、組織も階級もなく自分というものを強く意識したものであった。「邯鄲の夢」は昔風「禁猟区」は現代風であったが、自分を強く出したものであった。
警察という一般社会から見れば特殊な環境が警察小説をおもしろくさせている要因なのだなあ、と改めて思ったのであった。
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5本の小説である。例によって評価は以下のとおりである。
評価の項目 ①オチの意外性 ②納得性 ③余韻 ④嗜好性
評価 Aいい Bまあまあ Cあっそう D問題外 E読まなければよかった
「冤罪」今野敏 ①=B ②=C ③=C ④=C
警視庁刑事部長の伊丹は放火事件で誤認逮捕・冤罪があったということ聞き、所轄署へ行く。
事件の犯人を捕まえたと思ったら、別の者が自首してきたのだ。
現場では自首してきた者を真犯人とする意見が強いのであるが、どうしても最初の犯人が真犯人だという刑事がいる。
伊丹は迷った末に、同期の大森警察署長・竜崎伸也に電話をかけて相談する。
竜崎は面倒くさがりながらも一つのアドバイスを送る。
そのアドバイスに従った結果は・・・
「バスストップ」誉田哲也 ①=B ②=B ③=C ④=C
練馬署・刑事組織犯罪対策課の魚住久江巡査部長のもとに「強制わいせつ事案」の調査がはいった。
被害者からの事情聴取がすんだころ、警視庁から佐久間警部補がやってきて、その事案との関連事件を調査しているから調書を見せろと威丈高に言う。その後も捜査の指揮をとり、事件の翌日に現場にいたというだけの理由で一人の男を確保する。
魚住は、その男の話を聞いてつい先日友人の万里子から聞いた話を思い出し・・・・
事件というか男が現場に行かなければならない怪しい行動の理由の意外性というのも話の筋として面白いが、なんといったって佐久間警部補の傍若無人な態度に腹が立ち、それが最後に大逆転するのも面白い。
警察の階級制度と年齢との関係などによる人間関係が警察小説を面白くするひとつの要因であることがわかる。
「孤独の帯」安東能明 ①=C ②=C ③=C ④=C
本庁管理部門の経験の長い柴崎は、部下の拳銃自殺の責めを一人で背負わされ、綾瀬署の刑務課長代理となった。
刑務課長は次長が兼務しているが、その次長・助川は、柴崎が警部に昇任したときの警察学校で行われた「警部任用教養」の4ヶ月の研修のときの「刑事警察」の講師であった。
研修の際に「現行犯逮捕をしたことのない者」ということで1時間の授業中ずっと立たされていた。
その綾瀬署管内で『自絞死』の事件が発生し、柴崎は助川に連れられて現場に赴く。以後その事件に取り組むのであったが・・・
「邯鄲の夢」永瀬隼介 ①=C ②=C ③=B ④=Cマイナス
三鷹署の交通係長の国光警部補は、娘に婚約者を紹介され驚く。
それは昔、国光が警視庁生活安全部に勤務していた頃取り扱った事件、そしてその事件をもとに人生が変わってしまったことに関連していたことと関わりがあるためであった。
そして国光は昔の事件とのかかわりと娘の結婚を成就させるために・・・
なんというかちょっと前の時代のお話かと思う設定であった。
「禁猟区」乃南アサ ①=C ②=B ③=C ④=B
若山直子巡査部長は夫と社会人の長女と大学3年の次女がいる。
その直子はあることからホストクラブに出入りし脅されている少女たちの家から事件の解決をしてあげるといってお金をもらっていた。
また、以前補導したことのある男がホストになっていてそのホストクラブにも入り浸っていた。
そしてまたホストクラブに絡んだ事件でホストクラブと少女たちの家からお金を巻き上げようとするが・・・
この物語は警察組織のドラマではなく警察官のお話であり、それはそれで面白かった。
総評
5本ともおもしろかった。前3本は警察組織の階級制度のなかで自分と組織をどう折り合っていくのか、ということが隠れたテーマであったような気がする。
今の世の中、こういう階級制度というのはあまりなくなってきたので、警察という組織がある意味「新鮮」なのかもしれない。
「階級」ということが徐々になし崩し的に社会から消えていっていることについて今後警察はどう対応していくのだろうか?
そういう意味で後の2編は、組織も階級もなく自分というものを強く意識したものであった。「邯鄲の夢」は昔風「禁猟区」は現代風であったが、自分を強く出したものであった。
警察という一般社会から見れば特殊な環境が警察小説をおもしろくさせている要因なのだなあ、と改めて思ったのであった。
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