読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

蛍大名の変身 加藤廣 小説新潮12月号

2011-01-18 23:34:04 | 読んだ
小説新潮12月号は「時代小説年忘れ」で、その巻頭を飾る作品である。

加藤廣は「信長の棺」「秀吉の枷」「明智左馬助の恋」などで近頃注目の作家である。
ちなみに私はこのシリーズを読もう読もうと思いつつ「信長の棺」しか読んでいない。

さて、本作品の主人公は「京極高次」である。
京極高次といえば、今年のNHK大河ドラマの主人公「江」の姉「初」の婿である。
ということで、まあ時宜を得たというかブームに乗ったというか、そういう物語なのだなと思いながら読み始める。

しかし「初」はほとんど登場しない。
主人公は京極高次なのである。

名門ということだけで何の取り柄もないという設定。
そして、実は高次、茶々に惚れていた、というか双方にとって初恋の人という設定。

茶々が懐妊したことで、高次は憤る。
自分を捨てて、いやそれは許せるとして、あの秀吉の側室になるとは!
更に、秀吉の子などを懐妊するはずがないのに懐妊したというのは、絶対に不倫をしている!
ということから、高次は不倫相手を探ろうとする。

公家そして実の妹の龍(秀吉一番のお気に入りの側室)を通じて、高次はその不倫相手を突き止めようとする。

突き止める前に秀吉は死に、更に東西に分かれた争いごとに巻き込まれ、高次は京極家存続のため彼なりに努力する。

居城である大津城は関が原に向かう西軍に取り囲まれる。
彼は、西軍につくといっていながら(いわなければならない状況ではあったが)東軍に味方したのである。
しかし、関が原の前日に降伏し城を明け渡し、高野山に入る。

ところが関が原は東軍が勝ち。
西軍を3日ばかりとはいえ食いとどめた功により、6万石から9万石になり小浜に移る。

そんな京極高次について描かれているが、最初のテーマであった「茶々」の不倫相手も物語の途中で判明する。
うーん、そういう奴もいたか、という設定であった。

ところで題名になっている「蛍大名」とは何かというと、何の功績もないのに加増されていく高次は「女の尻の光で偉くなった」ということ尻の光にかけて「蛍」ということらしい。

確かに、秀吉の側室となった「茶々」を姉に、徳川家康の嫁で2代将軍秀忠の正室となった「江」を妹にもつ「初」の婿ということと、秀吉の寵姫であった妹を持つ名門の嫡子という事だけしか取り柄がないように思える。

でも、それだけでは戦国を生き抜くことは出来ない、それはなんだったのか?
ゼヒ機会があれば一読を薦めたい。


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