何度も洗い、少し使い古した感じの白い肌襦袢を腰の帯のところまで下ろし、スッとした背筋で肌のキメがとてもキレイな30代ぐらいの男性が、薄くなった白い敷き布団の上に座禅の形のまま背中をこちらに向けて座っている。
辺りは月明かりがある夜の9時・・10時ぐらいの浅い暗さなのだが、男性の周りだけほのかに白く光が広がっている。
肌の奥が…少し透けている。
頭を隙がないぐらいのきっちりした剃りあげ方、首筋から肩にかけて細い筆で書いたような線に見える。
若い僧侶の方?
背中の○側半分に太字の筆の墨で書いたような大きめの梵字が浮かんできた。
最初には見えなかったけれど、意識を集中すると見えてきた。
「ふう~ん・・背骨の真上には書かないのね…」なんて不思議な発言をしながら私はその男性を見ていました。
その男性の耳から首筋…の皮膚がゆっくり動き、右側から私の方を振り向き…
顔半分だけ見せている。
唇が動いているのがわかるが言葉が聞こえない…
私が読み取るしかない…
口の形を読む。
「なんとかできないか?」と感じる。
'なんとか…ってなんなのかしら?
梵字を消す?
修行を辞める?
自分の状態が困ってる?
…なんとかって…なに…
って…関わっていいのかしら?
……視る…
この梵字…
菩提心ではなくて、まるで○◯の、強く、厳しく、意味深き書き方の気持ちで書いてあるわ…
ああ、無理やり刻んだのね…
前世では仏に使えるだけの○○を○していない人が・・無理矢理してしまったような感じで。
聞こえてきた
「辛いんだ…」
あるがままを受け入れた自然に向かうのではなく、早くなんとかしたくて無理やり心に刺したみたいなやり方をしたから…
この人の修行の仕方では…仏法を学んでも○○がついていないから真の○○○には進めない。
…と言っているワタシも進んでいないけれど、その事を私から言わなければ…
背中の梵字の一文字に
「これに集中しなさい、と聞こえています」と彼に話すと、彼は軽く頭を下げて、身体を動かすこと無く、固まったままでいて、そしてそれから少しして組んでいた足を組み直し、一息ついてから少し背中を伸ばしました。
それから上を少し見てからまた下を向き・・背中を振るわせていました。
心の底からつらかったんだよね…
彼もこうなる前は普通の"人"だったのだから。
遥か昔は…教えてくれる人もなく、各個人の思想心情で自然に向かっていたものだったけれど、そのうちものすごい才能や叡智にたけている人が現れて師弟関係ができたり…
それにしてもやっぱり修行はキツイ…
幸せな家族で育った人ならなおさら…。
あれだけの梵字を無理に背負ったらとっても大変なのに、越えられるかしらかこの"人"と思った瞬間、目が覚めました。
目が覚めてからも
「辛いって・・辛いよね」と思いながらのカーテンの向こう側から朝の陽を感じ、天井を見ていました。
「"人"であってはならぬのだ」
いつも聞こえてくる言葉です。