オムニバス作品『喜怒哀楽(Four Moods)』(70)の2つ目のエピソードは『怒』。この部分を監督したのがキン・フーです。
まずは、こちらの動画をどうぞ。
借金に苦しむリー・ハンシャン(左端)のために作った映画らしい。
邵氏の『黒店』で描かれていたシーンで、店に客が来たとき慌ててアクロバティックな動きを見せて、客を招き入れるというシーンがありました。実はこの『怒』でも、全く同じ、そのシーンがあります。映像としてのモデルは『怒』にあった可能性が高いです。つまり『黒店』という映画は映画史的には『怒』の後ろ側に続く映画に属し、これらの作品群はそういった繋がりを持っていますので、
『大酔侠』(66)-『龍門客棧』(67)-『怒』(70)-『黒店』(72)---『迎春閣之風波』(73)・・・
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上記のようなプロセスになりますね。(図:客棧電影リスト)
この『怒』から枝分かれするものが、他にもまだあるかも知れません。
フー・チンと張鵬
『怒』はこんなお話です。
北宋時代の物語。楊六郎こと楊延昭(曹健)の部下であった焦贊将軍(薛漢)は人殺しの罪で流刑となった。途中で暗殺されることを心配した楊は焦贊の同僚、任堂恵(張鵬)に忍び姿で向かい、焦贊を護衛するように命じた。焦贊を護送する4人の役人(陳寶亮、黄國柱、杜偉亮、李逵)。人里離れた場所、三岔口に到着した一行は宿をとる。この宿屋は夫婦が経営していた黒店であった。
店主の劉利華(陳慧樓)とその妻(胡錦)は旅人から財物を奪ったりする悪人だったのだ。任堂恵があとから宿に到着、部屋へ案内する劉妻。任堂恵が持っているずっしり重い銀貨も気になる様子だ。役人たちは劉利華に吹き込み、寝ている任堂恵に斬りかかろうとするが、察知した任堂恵はうまく攻撃をかわす。そして暗闇の中、宿にいる者たちの静かな決闘がはじまった・・・。
衝撃的なラストとなっていますが、結末は原作とは違う展開となっているようです。
客棧で胡錦がいくつものろうそくの灯を硬貨で投げ消し、暗闇でのバトルがはじまるという演出がとても良い!!
任堂恵を演じた若き張鵬が東山紀之そっくりで思わず笑ってしまいますが、陳慧樓とのバトルも二人の動きはなかなかいいですね。
役人の一人はクレジットだと”杜偉亮”という名の人がいます。実はこの人、杜偉和だったんですね。杜偉和は意外や意外、キン・フー作品の常連さんなのでありました。(あの龍飛も一瞬ですが、どこかにいます(笑)。探してみてくださいね。)
杜偉和(左)
『怒』は以上ですが、時間にすれば30分ほどですが、リー・ハンシャンの為とは言え、キン・フーは客棧を使った短編を製作したのでした。京劇の武劇「三岔口」をそのまま映画にしたそうですので、見比べてみると面白いですね。
【参考】京劇・三岔口ダイジェスト 動画はこちらから
(※日本語説明文入り)
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