こんにちは、醒龍です。
今年の春は、ゾクゾクと肌寒い日が多かったですね。風も少し強い感じで冷えましたし、コートを脱いだりまた着たりとなかなか温かい陽気になりませんでした。体調は何とか健康をキープしていましたが、先日風邪をひいてしまいました。少しずつ気温も上がっているとは思いますが、体調を維持するのが大変だと思います。皆さんもお気をつけてくださいね。
さて、今回の記事ですが、79年に台湾で制作された映画『醉猴女』についてです。得利影業作品です。一風変わった映画で、なかなか記事にはしづらい面も若干あるのですが、今回見直してみましたのでいろいろ書いてみたいと思います。
以前、猿拳映画の系譜という記事を書きました。(リンクはこちらからどうぞ)
もうあれから8年も経過しているんですねー。他に真説モンキーカンフー、モンキーフィスト猿拳などが過去の記事でした。
まだまだ同じテーマについては書き切れないくらいあるのですが、その中の一つに今回加えてみようと思います。
この映画は猿拳と言っても他のものとは少々趣が異なっています。それは、本当にサルの格好をしているのです(笑)。人間がカンフーを使う映画ではないんですね。なのでこれはファンタジーと呼べるのかも。よって、正確には猿拳映画とは呼べないかもしれません(苦笑)。
でも、演じている俳優さんが、実際に猿拳を使っているということで内容を追ってみたいと思いました。
この映画の監督が「蛇鶴八拳」や「カンニングモンキー天中拳」でおなじみの陳誌華なんです。
とはいってもこの映画はあまりおすすめできません(笑)。得利影業公司ラインにチェン監督がコラボした珍しい形となっていました。
とはいってもこの映画はあまりおすすめできません(笑)。得利影業公司ラインにチェン監督がコラボした珍しい形となっていました。
では、その内容ですが、データを見てみると面白いことに気がつきます。それは、林昭雄って日本人みたいな人がクレジットされてたんです。
実はコレ下の点がないだけの林照雄の事のようでした(笑)。
彼はチェン監督の映画にはレギュラー出演してますので、きっと監督のお気に入り俳優さんですよね。あと、喬楓名義で出演したダニー周潤堅(故人)がいました。彼は邵氏出身ながら富国影業のカンフー映画にも出演していたり、そして成家班の一員としての顔もあった幅広い経歴をお持ちの貴重な存在だったのです。
主演の俳優さんはレアな顔で、確認してみると、チン・フォンリン(金鳳玲)という名前の女優さん。あまり映画に出演されていないのですが、他に1本だけ『硬功鐵橋三』(79)があるようです。こちらは真っ当なカンフー映画のようですが、機会があればまた別途記事を書いてみたいと思います。ただこの2本はHKFAにはデータが登録されているものの公文書からはもれてしまった様ですね。
79年ということで、酔拳というネタは時期的には超が付くほど流行りの題材だったと思うのですが、いってみれば"酔拳"と"猿拳"のコラボです。どんなヤツが面白いかアイデアをいろいろ絞って考えたりしたんでしょうね。
それで監督が「蛇鶴八拳」や「カンニングモンキー天中拳」でおなじみの陳誌華なんです。
とはいってもこの映画はあまりおすすめできません(笑)。
ローウェイ時代のジャッキー映画についてはダントツの完成度を誇っていた「蛇鶴八拳」など問題なかったのですが、それ以外の映画の場合、いろんな意味であまり恵まれてはいなかったように思います。いい機会ですので、今回は彼について思う事をいろいろ書いてみようと思います。
ジャッキーとはしばらくの間、おそらく上手くいっていたと思います。長年付き添ったジャッキーからの信頼がそれを物語っています。カメラマン一家ですので、ファミリー全体で映画を作ってたんですね。実際に撮影する方の功労者です。ローウェイ時代が終焉する80年以降は状況をあまり把握できませんが、「少林寺木人拳」で脚光を浴びたあと、ここまでが限界と思われます。ちょっと残念な気がします。
80年代前半に日本でブームが起きた頃、その頃に日本で公開できるような台湾製の映画がいくつも撮られていたらまた状況が変わっていたことでしょう。日本でのブームは何年も遅かったので過去の映画を順次公開していたに過ぎなかったんですね。
そこはまぁ置いといて、同時期のジャッキー映画以外の部分。変わったことにチャレンジする、または意欲がなくともやむを得ず映画を撮らなきゃいけないような状況だった(と思われる)ものがいくつかあったと思います。
では、この映画に話題を戻すとします。
可愛らしい野生のお猿さんとして登場した主人公は、やがて2人の老夫婦にカンフーを教わり、その後、人間へ転生するのですが、怪しい薬品(?)により全身の体毛がなくなって顔も人間っぽく変わって美しい人間の姿に変わります。
ここだけでも仰天してしまいますが、その転生は不完全で、ある体の部位がこの映画のポイントになります。これを逆に奥の手として使っています。
本編のおさらいをすると、いくつかパートに分かれます。
1.モンキーガールの登場
2.ドタバタ・カンフー入門
3.四皇子との出会い
4.転生
5.決戦
概要はこんな感じです。とにかく発想はブッ飛ぶ内容の映画である事は間違いないですね。
問題は流行とはいえそのコラボ、酔拳の描き方にあると思うのです。
いくら酔拳が爆発的なヒット、酔拳ならイケるという目論見でそれを入れてみたからといって、安易な作りでは観客は離れてしまうでしょう。
それ以外にも、最もこの映画でマズい点。これを書いておきたいと思います。
1つ言えることは、ロー・リエの扱いがあまりにも雑過ぎていて、途中の賊襲撃シーンとラストにほんのちょっとだけ参加させているのですが、台詞もなにも無いまま、あっさりと終わってしまいます。これはヒドいですね。下手をすると、誰だか分からないまま終わってしまう可能性もあったかと・・。
そして、オチに当たる部分。チェン・シンにトドメを刺さない蛇鶴のラストとそっくりなシーンで、ここでトドメを刺すことができないのは分かるのですが、その隙に林照雄が投げたナイフが刺ったままチェン・シンはワープして逃亡、そのままどこかへ消えてしまい、横で格闘中のロー・リエのバトルに乱入し、同じ戦法で今度はトドメを刺すというかなり無茶な展開でした。
なんでこうなってしまったのでしょうか?
台湾で活躍していた監督、ホウ・チェンが一応脚本を書いている様ですが、全盛期の倉田先生とも離れてしまってからはかなり質が落ち込んでしまいましたね。
低予算が見え見えとなっていまっている、俗にいうロー・バジェット・ムービー(LBM)なんでしょうが(もちろん台湾製)、とにかく見るからに出演者が乏しいですよねぇ。ストーリーもまともであるとは言い難く、なんとかゲスト出演者に空手スター、チェン・シンを引っ張ってこれた感じ。70年代後期はチェン・シンやロー・リエという強者がカンフー映画のボスを演じたりするケースが多くなっています。この映画も御多分にもれずそんな傾向、性質を持っています。
私がいいなぁと思ったのは2点。ロー・リエのトンファーを使ったバトルと人間への転生後の特訓シーン。トンファーはシーンとしては短いですが、先が尖ったタイプのトンファーを使用しており、ロー・リエの武器さばきは流石で本当に巧いのです。惚れ惚れしてしまいました。ここに関しての難点は短いところ。もうちょっとチェン・シンVSロー・リエを見たかったですね。
特訓シーンは、仕上げの段階でロウソクを並べた八卦陣でカンフーを披露します。台湾らしい表現で80年代によく見られたキョンシーの映画に通じるものがあると思います。ここで流れるのはアンジェラ・マオの『鬼怒川』にも使われていたミキス・テオドラキスの「Z」の音楽ですが、ここから別の曲がかかったりしてますので、ここはまぁまぁの場面ですね。
あと興味深い部分は、康煕帝の遺詔を書き換えるシーンで、例の十四皇子の"十"を"于"の文字に変えるところがありました。これは必ずやっておかないといけないんですね(笑)。
最後にアクション面ですが、あの女優さん、まともにアクションはできない様子で、高度なアクションはすべて吹き替えというアクションに終始してました。台湾で79年に公開され、香港での公開は未調査ではありますが、もしかしたら未公開の可能性もありますね。内容的にはちょっとお粗末な映画でした。ここで今回の記事を終わります。
追伸:参考までにオンライン・ショップ情報を乗せておきますね。こちらで英語版ソフトが購入できます。
次回、平成最後の記事になってしまうかも(!?)ですが、あの女ドラゴンが登場の予定です。
The Ape Girl (1979)
Chan Chih Hwa (D)
Chin Feng Ling
Chan Sing
Miao Tien
Danny Chow
Lo Lieh
【作品DVD】
どうしてもDVDの情報を参照したい人向け。(注)リージョン1です。英語音声。
Lady Iron Monkey (Dubbed In English) | |
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【サントラ】
こちらは、デジタル・ミュージックです。(アルバム全曲試聴できます)
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