この間、主人が久しぶりにぱりっとした声で電話しているので何だろうと思って聞いてみると、東京にいた頃にお世話になっていたお肉屋さんに電話している様子。
懐かしい担当者の方の名前も聞こえてきました。
「お肉?何か作るの?」
と聞くと、
「ムサカ作りたくなって。ナバランも考えたけど、やっぱりムサカかなと思って。」
ムサカ? …ナバラン?
私には何の事だか分からなかったので聞いてみると、色々な意味でうちのシェフらしいな、と思うところがありましたので、ちょっと書いてみようと思いました。
長文になりますが、よろしければお付き合い下さい。
ムサカは、羊のひき肉とナス、ベシャメルソース(ホワイトソース)などを重ねて焼いたグラタンのようなもの。
想像だけでおいしいとわかっちゃうような料理!
ギリシャの料理で中東でよく食べられているらしいのですが、フランスでの歴史も長く、フランス人も大好きだそう。
ビストロなどの日替わりの昼ごはんで出てきたり、量り売りのお総菜屋さんで売られているような、すっかり馴れ親しまれた定番の料理だそうです。
最近は日本でも知られるようになり、何とかパットなどでもレシピが紹介されたり、テレビのお料理番組でも紹介されたりしているようですね。
私はその辺にうとく、全然知りませんでした…
ナバラン… こちらも羊料理ですが、ナバランは正真正銘、王道のフランス料理。
羊と野菜がゴロゴロ煮込まれたシチューのようなもので、シチュー皿やココットに盛られて出てくる事が多い料理です。
近年、そのナバランを星付きのレストランのシェフ達がメニューに載せるようになっているそうです。
例えば、お皿に大きな羊の肉の塊、そして考え抜いたトマトベースのソースがあしらわれ、選び抜かれたガルニ(つけ合わせ)が添えられ… といったように、シェフ達が自分の個性を存分に表現し、伝統料理であるナバランを一つ二つ高い所へ昇華させている動きがあります。
料理をしている方なら想像がつくそうですが、ムサカと比べたらナバランの方が、自分の個性を出しやすい、より複雑な味の組み合わせが表現しやすい、ビジュアル的にも華やかさを出しやすい、
・・・そうです。
それもふまえて、うちのシェフは
「やっぱりおいらはムサカかな。」
という結論に至り、羊の発注の電話をしていたわけです。
「ナバランの方が高く売れるんじゃないか、作れば?」
と言う妻に対し、
「そういう波がきたら作る、今はムサカを作らせてくれ。」
との事。
主人の古くからのご友人で青山でガストロパブをやっている方がいらっしゃいます。
その方もやはりフランスに精通なさっており、
「今年、行きました?」
「はい、そちらは?」
と毎回ニヤニヤで楽しく情報交換しているようです。
今年その方のお店にお邪魔した時、メニューにムサカがあったそうです。
「やっぱり時々、無性に食べたくなりますよね。」
「いいですよね~、ムサカ。」
しみじみと話したそうで、フランスをよく知る人にとって、なんとも言えない味があるもののようです。
ムサカはムサカ以上にはなれない感じが、どんなにいじってみてもやっぱり普通のがおいしいよね、という感じが、がつがつテレビ観ながら食べられる感じが、たまらなくかわいいんだそうです。
「フランス料理やってる男子は、みんな好きだと思いますよ、ムサカ。」
うちのシェフはにこにこで言っておりました。
ライオンミドリのムサカ、期待していいと思います!
準備が出来次第、またご紹介させていただきます。
ナバランも!!という方、ぜひ清きご一票を(?)
こちらは、去年パリでお散歩していて見つけた「ル・キガワ」というお店のナバラン。ミシュランガイドにも掲載されたお店だそうですよ。
ル・キガワの帰りにそう言えば、と思い出して行ったアルジア教会。
サンジェルマンデプレ教会やサンシュルピス教会(ダヴィンチコードに出ちゃった!)は何となく・・・敷居が高いような気がしちゃいますが、こちらは昔ながらの素朴な味わいのあるいい教会だそうですよ。
観光客がいないのである意味こっちの方が敷居が高いという声もあります!