一日の勤務が終わりもう少しで我が家まで帰れる。時計は10時をだいぶ過ぎているが、駅前のバス乗り場には通勤通学の人々が帰りの方面別に寒さを堪えて列んでいる。
私も、いつもの乗り場に出来ている列の最後尾に列んだ。
この分なら座席に座れるな。
と、思いながらバスにのりこむと大方の席は埋まって、二人がけの片方がかろうじて数席空いていた。
バスの中程の席に腰を下ろす。
後ろの席の女子がふたりでなにやら話し合っていたが、バスが走り出して、暫くしたときに、その中のひとりが小声で、
「やめなよ~」なんぞと言っている。
なんか、気になって聞き耳を立ててしまった。
そうしたらなんと、聞き耳を立てるも何も、もうひとりの女子が大きな声でケータイで話し始めたではないか。
会話の中に、「ウザイ」とか「ムカツク」なんて言葉が出て来るのを聞いていると、それを聞いてるだけで、ウザイしムカツクよな。
周りの誰も車内でのケータイ使用を注意しようとしない。
私は、振り向いて、
「お前がウザイ、車内でケータイなんぞ使いおってホント、ムカツク」って言ってやりたいのをぐっと堪えた。
それは、車内の大勢の人の前で注意されたらどんな気分になるだろうなと考えたからだった。
私の降りるバス停にバスが停まったので、前の人に続いて車外へと出た。
すると、なんと後ろの席にいた先ほどの二人組の女子も同じバス停に降りたのだ。
田舎のバス亭は都会とは違い、薄暗い街路灯がポツンとあるだけで、周囲は藪と田圃だ。
「痴漢に注意しましょう」の看板も立っている。
私だったら、
「痴漢しないように注意しましょう」って、書くけどな。
そんなことは兎も角、私は前方を見たまま、
「君は、車内でケータイを使ってはいけないことを知らぬ訳じゃ無いんだろ」と、暗闇に向かって言葉を発した。
こんな、暗いところで、怪しいおじさんにいきなりそんなことを言われたら、いくら二人だとはいえそりゃ~怖かったんじゃないのかな。
小さな声で、
「だから、やめなって言ったのに」って、聞こえてきた。
振り向くと可愛い女子がふたり。ひとりがもうひとりの後ろへ隠れようとしている。
隠れようとしている方がケータイ女だな。
そちらの女子に正対して、
「車内でケータイを使ってはいけないって知ってるだろ?」と、言ってみた。
暗い路上に沈黙の時が流れる。
「どうなんだ、やってはいけないと思ってないのかね」
またも沈黙。
「どうなの、思ってないの」
漸く、小さくか細い声で、
「思ってます」って、返ってきた。
「やってはいけないと思うんだったら、やらないことだな」
それだけ、言い残して足早にその場を離れた。
しかし、若い娘っ子だったから、あんな注意が言えたんだけど、これがむかつけき巨躯の男子だったらこうは行かなかったろうな。(それじゃ弱い者いじめか)
まあ、ふたりの女子は驚いたり、怖かったりしたろうが、世の中には変な奴が居るってことを理解して、少しは自分の行動を慎むようになってくれれば良いんですがな。
ついでに、人の事を言う前に自分の行動をもうちっと考えなくっちゃなと、反省もしてみた。
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