#148 チャック・ベリー「Everyday I Have the Blues」(Live at the Fillmore Auditorium/Special Product)
チャック・ベリー、67年サンフランシスコ、フィルモア・オーディトリアムでのライブより。メンフィス・スリムの作品。
チャック・ベリーといえば、説明不要の「キング・オブ・ロックンロール」。ビートルズ、ストーンズ、ビーチボーイズをはじめとする白人ロックバンドたちに、最も強い影響力を持った黒人シンガー/ギタリストだ。
26年、カリフォルニア州サンノゼ生まれ。50年代には連続して大ヒットを放った彼も、60年代には女性スキャンダルで刑務所入りを経験するなどやや失速気味だったが、彼を父のように慕う白人ロッカーたちのおかげもあって、60年代後半には表舞台への復活を果たすこととなる。
67年のこのライブ盤は、まさに「王の復権」を象徴する記録といえそうだ。
バックにはデビューしてまもないスティーブ・ミラー・バンドを従え、個人的にも親交のあったメンフィス・スリムの代表作を歌い、かつ弾きまくっている。
これがまたなんというか、まんま「チャック・ベリー節」なんだよなあ。
もともとこの曲は、戦前のブルースマン、アーロン・スパークスの曲にヒントを得て、48年にメンフィス・スリムが作曲、「Nobody Loves Me」というタイトルで初録音をしているが、彼固有のレパートリーというよりは、「Everyday I Have the Blues」という別のタイトルでブルース界全体にスタンダードとして広まっていく。よく知られているのは、B・B・キング、ローウェル・フルスン&ロイド・グレン、そして以前「一日一枚」で取り上げたこともあるジャズ歌手、ジョー・ウィリアムズのバージョンだ。
他にもさまざまなシンガーが取り上げているが、チャック・ベリーが歌うとはちょっと驚きではあるね。
このフィルモア・ライブでは他にも「C・C・ライダー」チャールズ・ブラウンの「ドリフティン・ブルース」、「フーチー・クーチー・マン」といったブルース・ナンバーを演っており、チャックのステージとしては異色の構成となっている。
これはまあ、チャックの原点回帰ともいえなくもない。ロックンロールも、もとをたどれば黒人のブルースをルーツとする音楽。これに白人のカントリー系音楽がブレンドされ出来たハイブリッドなんだから。セントルイス育ちのチャックも、子どものころは極めてブルースな環境で育ったはずだ。
とはいえ、彼の歌うブルースは一般的に知られるブルースのスタイルを、もののみごとに逸脱している。とにかく陽気というか、若気の至りというか、ノリノリな音楽なんである。
リズムからして、元気がよすぎるくらい。エルモア・ジェイムズ風のビートにのせて、べらんめえ調で威勢良くシャウト。ギターも、例によってペケペケとしたチャック・ベリー・スタイルで妙に歯切れがよく、ブルースギターにありがちなタメは、一切なし。
本来はけっこう陰鬱な内容のブルースなのに、「毎日しんどいわ~」というよりは「毎日しんどいですが、それが何か?」という居直りさえ感じられるね、個人的印象では。
この、底抜けの明るさ、タフネスこそがチャックの身上。不遇もスキャンダルもすべてはねのけ、しぶとく生きていく不屈の精神ってやつです。
この何年か後、彼は折りからのオールディーズブームにのり、ヒットチャートに返り咲く。72年には最大のヒット「My Ding-a-Ling」も出る。
人生で二度頂点にのぼりつめた男、チャック・ベリー。その天衣無縫な魅力を、このブルースナンバーで味わってみてくれ。
チャック・ベリー、67年サンフランシスコ、フィルモア・オーディトリアムでのライブより。メンフィス・スリムの作品。
チャック・ベリーといえば、説明不要の「キング・オブ・ロックンロール」。ビートルズ、ストーンズ、ビーチボーイズをはじめとする白人ロックバンドたちに、最も強い影響力を持った黒人シンガー/ギタリストだ。
26年、カリフォルニア州サンノゼ生まれ。50年代には連続して大ヒットを放った彼も、60年代には女性スキャンダルで刑務所入りを経験するなどやや失速気味だったが、彼を父のように慕う白人ロッカーたちのおかげもあって、60年代後半には表舞台への復活を果たすこととなる。
67年のこのライブ盤は、まさに「王の復権」を象徴する記録といえそうだ。
バックにはデビューしてまもないスティーブ・ミラー・バンドを従え、個人的にも親交のあったメンフィス・スリムの代表作を歌い、かつ弾きまくっている。
これがまたなんというか、まんま「チャック・ベリー節」なんだよなあ。
もともとこの曲は、戦前のブルースマン、アーロン・スパークスの曲にヒントを得て、48年にメンフィス・スリムが作曲、「Nobody Loves Me」というタイトルで初録音をしているが、彼固有のレパートリーというよりは、「Everyday I Have the Blues」という別のタイトルでブルース界全体にスタンダードとして広まっていく。よく知られているのは、B・B・キング、ローウェル・フルスン&ロイド・グレン、そして以前「一日一枚」で取り上げたこともあるジャズ歌手、ジョー・ウィリアムズのバージョンだ。
他にもさまざまなシンガーが取り上げているが、チャック・ベリーが歌うとはちょっと驚きではあるね。
このフィルモア・ライブでは他にも「C・C・ライダー」チャールズ・ブラウンの「ドリフティン・ブルース」、「フーチー・クーチー・マン」といったブルース・ナンバーを演っており、チャックのステージとしては異色の構成となっている。
これはまあ、チャックの原点回帰ともいえなくもない。ロックンロールも、もとをたどれば黒人のブルースをルーツとする音楽。これに白人のカントリー系音楽がブレンドされ出来たハイブリッドなんだから。セントルイス育ちのチャックも、子どものころは極めてブルースな環境で育ったはずだ。
とはいえ、彼の歌うブルースは一般的に知られるブルースのスタイルを、もののみごとに逸脱している。とにかく陽気というか、若気の至りというか、ノリノリな音楽なんである。
リズムからして、元気がよすぎるくらい。エルモア・ジェイムズ風のビートにのせて、べらんめえ調で威勢良くシャウト。ギターも、例によってペケペケとしたチャック・ベリー・スタイルで妙に歯切れがよく、ブルースギターにありがちなタメは、一切なし。
本来はけっこう陰鬱な内容のブルースなのに、「毎日しんどいわ~」というよりは「毎日しんどいですが、それが何か?」という居直りさえ感じられるね、個人的印象では。
この、底抜けの明るさ、タフネスこそがチャックの身上。不遇もスキャンダルもすべてはねのけ、しぶとく生きていく不屈の精神ってやつです。
この何年か後、彼は折りからのオールディーズブームにのり、ヒットチャートに返り咲く。72年には最大のヒット「My Ding-a-Ling」も出る。
人生で二度頂点にのぼりつめた男、チャック・ベリー。その天衣無縫な魅力を、このブルースナンバーで味わってみてくれ。