#282 ベニー・スペルマン「Fortune Teller」(Fortune Teller: A Singles Collection 1960-67/Spin)
黒人R&Bシンガー、ベニー・スペルマン、62年のヒット曲。ナオミ・ネヴィルの作品。
皆さんの大半は「ベニー・スペルマン? 誰ですかそれ?」とお思いでしょうが、とにかく曲を聴いてみてほしい。おそらく、一度は耳にしたことがあるはず。でしょ?
そう、ローリング・ストーンズのファンなら初のライブ・アルバム「Got Live If You Want It!」(66年)で、ザ・フーのファンなら「Live At Leeds」(70年)で。
筆者は後者のクチなのですが、この歌がザ・フーのオリジナルでないことはわかっていても、ベニー・スペルマンのカバーであることなど、最近まで全く知りませんでした、ハイ(汗)。
大体、作曲者のナオミ・ネヴィルって何者やねん!って感じですが、実はこれ、先週の当コーナーにも登場したアラン・トゥーサンの変名なのであります。なんでも、彼の母親の、旧姓名を使ったとか。ただし、かのネヴィル・ブラザーズとは全く血縁関係はないそうで。
ベニー・スペルマンは31年、フロリダ州ペンサコーラ生まれ。59年まではフロリダに住んでいたが、巡業でやってきたヒューイ・ピアノ・スミスのトラブルを助けたのがきっかけで、スミスにくっついてニューオーリンズに移住、そのバックバンド、クラウンズに加入してしまったという、えらくお気楽な風来坊ミュージシャンなのである。
NOのレコード会社、ミニット・レーベルと契約したものの、やって来るのはバックボーカルの仕事程度。アーニー・K・ドゥーの「マザー・イン・ロウ」のバック・ボーカルは彼だったりする。
だが、この曲がナンバーワン・ヒットになったことがプラスに働く。K・ドゥーのプロデューサーだったアラン・トゥーサンがそのバリトン・ボイスに惚れ込み、スペルマンをソロ・シンガーとして開花させようと考えたのだ。
で、生まれたのが「Lipstick Traces (On A Cigarette)」とこの「Fortune Teller」の2曲だ。前者はバラード、後者はビート・ナンバーで、それぞれA面、B面という扱いだったが、ともにヒットしたのである。
カバーについては、圧倒的に「Fortune Teller」のほうが多く、ストーンズ。フー以外にもホリーズ、マージービーツ、ダウンライナーズ・セクトなどがカバー、英国のビート・バンドにとってスタンダードともいえる重要なレパートリーとなっている。
曲の構造は、きわめてシンプルだ。ひたすら同じメロディを執拗に繰り返していくスタイルなのだが、それゆえの力強さはこの曲の大きな魅力となっている。先週の「Get Out Of My Life, Woman」にも共通した、トゥーサン・ナンバーの特徴といえるだろう。
スペルマンのシブい声の魅力、トゥーサンの曲の魅力、そしてバックのタイトなリズムなどがあいまって、一級のビート・ナンバーに仕上がっている。
そしてこの曲のもうひとつの魅力は、その歌詞だろう。占い女のところで恋愛運を占ってもらったら「貴方は恋に落ちるだろう」といわれたものの、好きになれる女がいっこうに見つからない。文句を言おうともう一度占い女のところに行ってみたら、ふとひらめくものがあって、その女のベールをはぎ取ってみる。その素顔を見たとたんに、彼女に恋をしてしまうという結末。まあ、オチは見え見えなのだが、いいよね、こういう展開って。
恋という名のマジックをテーマに、これだけシンプル、キャッチー、かつ力強い曲にまとめあげたのは、アラン・トゥーサンならではの技だろう。
事実、この曲を振り出しにトゥーサンは、新しい時代のR&Bを精力的に生み出し、その名を轟かせていくのだから、重要な一曲といえよう。
文字通り一発屋ではあったが、その声の魅力で今後もツウなリスナーたちを魅了するであろう、ベニー・スペルマン。名曲「Fortune Teller」は不滅です。
黒人R&Bシンガー、ベニー・スペルマン、62年のヒット曲。ナオミ・ネヴィルの作品。
皆さんの大半は「ベニー・スペルマン? 誰ですかそれ?」とお思いでしょうが、とにかく曲を聴いてみてほしい。おそらく、一度は耳にしたことがあるはず。でしょ?
そう、ローリング・ストーンズのファンなら初のライブ・アルバム「Got Live If You Want It!」(66年)で、ザ・フーのファンなら「Live At Leeds」(70年)で。
筆者は後者のクチなのですが、この歌がザ・フーのオリジナルでないことはわかっていても、ベニー・スペルマンのカバーであることなど、最近まで全く知りませんでした、ハイ(汗)。
大体、作曲者のナオミ・ネヴィルって何者やねん!って感じですが、実はこれ、先週の当コーナーにも登場したアラン・トゥーサンの変名なのであります。なんでも、彼の母親の、旧姓名を使ったとか。ただし、かのネヴィル・ブラザーズとは全く血縁関係はないそうで。
ベニー・スペルマンは31年、フロリダ州ペンサコーラ生まれ。59年まではフロリダに住んでいたが、巡業でやってきたヒューイ・ピアノ・スミスのトラブルを助けたのがきっかけで、スミスにくっついてニューオーリンズに移住、そのバックバンド、クラウンズに加入してしまったという、えらくお気楽な風来坊ミュージシャンなのである。
NOのレコード会社、ミニット・レーベルと契約したものの、やって来るのはバックボーカルの仕事程度。アーニー・K・ドゥーの「マザー・イン・ロウ」のバック・ボーカルは彼だったりする。
だが、この曲がナンバーワン・ヒットになったことがプラスに働く。K・ドゥーのプロデューサーだったアラン・トゥーサンがそのバリトン・ボイスに惚れ込み、スペルマンをソロ・シンガーとして開花させようと考えたのだ。
で、生まれたのが「Lipstick Traces (On A Cigarette)」とこの「Fortune Teller」の2曲だ。前者はバラード、後者はビート・ナンバーで、それぞれA面、B面という扱いだったが、ともにヒットしたのである。
カバーについては、圧倒的に「Fortune Teller」のほうが多く、ストーンズ。フー以外にもホリーズ、マージービーツ、ダウンライナーズ・セクトなどがカバー、英国のビート・バンドにとってスタンダードともいえる重要なレパートリーとなっている。
曲の構造は、きわめてシンプルだ。ひたすら同じメロディを執拗に繰り返していくスタイルなのだが、それゆえの力強さはこの曲の大きな魅力となっている。先週の「Get Out Of My Life, Woman」にも共通した、トゥーサン・ナンバーの特徴といえるだろう。
スペルマンのシブい声の魅力、トゥーサンの曲の魅力、そしてバックのタイトなリズムなどがあいまって、一級のビート・ナンバーに仕上がっている。
そしてこの曲のもうひとつの魅力は、その歌詞だろう。占い女のところで恋愛運を占ってもらったら「貴方は恋に落ちるだろう」といわれたものの、好きになれる女がいっこうに見つからない。文句を言おうともう一度占い女のところに行ってみたら、ふとひらめくものがあって、その女のベールをはぎ取ってみる。その素顔を見たとたんに、彼女に恋をしてしまうという結末。まあ、オチは見え見えなのだが、いいよね、こういう展開って。
恋という名のマジックをテーマに、これだけシンプル、キャッチー、かつ力強い曲にまとめあげたのは、アラン・トゥーサンならではの技だろう。
事実、この曲を振り出しにトゥーサンは、新しい時代のR&Bを精力的に生み出し、その名を轟かせていくのだから、重要な一曲といえよう。
文字通り一発屋ではあったが、その声の魅力で今後もツウなリスナーたちを魅了するであろう、ベニー・スペルマン。名曲「Fortune Teller」は不滅です。
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