2023年2月18日(土)
#458 CROSBY, STILLS, NASH & YOUNG「4 WAY STREET」(Atlantic 7-82408-2)
フォークロック・バンド、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング(以下CSNY)のライブ・アルバム。71年リリース。彼ら自身によるプロデュース。NY、LA、シカゴ録音。
先日デイヴィッド・クロスビーが81歳で亡くなったというニュースが伝わり、「そうか、彼らもそんな年齢になったのか」と、歳月の経過を身を持って感じた。
70年代初頭、CSNYの音楽を日常的に聴いていた当時の中学生、つまり筆者も、いまや65歳である。
筆者の思春期、そばに女子はまったくいなかったが(男子校というのが致命的だった)、常に彼らの音楽はそばにあったものだ。
筆者が中学3年から4年間参加した、学校のフォークとロックの同好会でも、CSNYやその各メンバーのソロ曲は同好会のメンバー全員が愛唱していた。まさに思春期の伴侶だった。
そんなわけで、今回はいつものような細かな説明はすべてすっ飛ばして、もっぱら個人的な思い入れを書かせていただく。
レコードは「組曲:青い眼のジュディ」の終盤から始まる。この曲は同好会のシマムラ君、イクノ君、スミタ君が完全コピーして、文化祭のステージで大ウケしていたことを思い出す。
ガロという日本のグループも同曲をコピーしてよく演奏していたものだが、その影響もあったのだろう。
よくあのギターとコーラスを高校生が再現出来たものだ。才能と情熱、両方がないと難しい。
3曲目の「ティーチ・ユア・チルドレン」は、CSNYの代表的なヒット曲だ。
71年の英国映画「小さな恋のメロディ」のエンディングで使われて、青春ソングのスタンダードになった。
この曲が筆者の参加した同好会のテーマ・ソングでもあった。高校3年の文化祭、ラスト・ステージのフィナーレでメンバー全員で合唱したのを覚えている。これぞ青春の一コマだな。
このライブでもリードボーカルのナッシュが「一緒に歌ってくれ」と聴衆に呼びかけ、会場は大合唱となる。実にいいムードだ。
「トライアド」「リー・ショア」はクロスビーのソロ曲。彼の独特の作曲センスが、ともによく表れている。内省的な曲調で、心にジワっと沁みてくる。
後者では、ナッシュがコーラスで加わり、息の合ったハーモニーを聴かせてくれる。
6曲目の「シカゴ」はピアノを弾きつつグレアム・ナッシュが歌うナンバー。クロスビーがコーラスでサポート。
これはナッシュとしては珍しいシングル曲。内容はラブソングの多い彼の他の作品とは異なり、硬派のプロテスト・ソング。けっこうヒットしたのを覚えている。
「ロック・バンドの『シカゴ』と紛らわしいじゃん!」というツッコミを入れたのも懐かしい思い出(笑)。
コンサートの前半(ディスクの1枚目)は、リズム・セクションを加えない、完全にCSNYのメンバーだけでの歌と演奏。
だから、ロック・コンサートのライブ盤とはとても思えないくらい「静か」な1枚でもある。観客の反応も、ダイレクトに伝わってくる。
メンバーそれぞれをフィーチャーしたかたちで、ステージは進む。ソロの弾き語りだったり、他のメンバーがサポートに入ったり。基本的には1、2人の編成だ。
クロスビー、ナッシュのソロ曲の後は、ニール・ヤングが登場する。
彼はすでに何枚ものソロ・アルバムを発表しており、CSNYにも最後に参加したので、彼のときだけ少し雰囲気が違うような気がする。
ソロ・アーティスト然としているといいますか。曲も多くはソロ・アルバムから。
「カウガール・イン・ザ・サウンド」は同好会のトップ・ギタリスト、ヤマジ君がアコギでよく弾き語りをしていたなぁ。哀感あふれる曲調がいい感じだった。
彼はその後、中央官庁のお役人になってしまって、以前会った時は「ギターはすっかり忘れてしまったよ」とボヤいていたが、定年を迎えてたまにはギターを弾いたりしているのだろうか。
ヤングの次はスティーヴ・スティルス。ピアノの弾き語りで「49のバイバイズ/アメリカズ・チルドレン」を歌う。
これが実にカッコいい。ゴスペルなノリでバッファローの「フォー・ホワット」の一節なども折り込みつつ、激しいボーカルを聴かせる。それまで静かだった会場も、次第に熱気を帯びていく。
そしてヒット・ナンバーの「愛への讃歌」。この曲では他のメンバーも参加して、ノリノリのハーモニーを聴かせてくれる。
LPの1枚目はこれで終了なのだが、CDは追加トラックがある。
ナッシュが歌う「キング・マイダス」は彼のホリーズ時代の作品(クラーク、ヒックスとの共作)。こういうあまり知られていない佳曲をやってくれると嬉しい。元曲を聴いてみたくなる。
「ブラック・クイーン」はスティルスのソロ・ナンバー。ブルースに強く影響を受けたそのアコギ演奏は、圧倒的な迫力のひと言。
「ザ・ローナー~シナモン・ガール~ダウン・バイ・ザ・リヴァー」はヤングによるロング・メドレー。
ギターのイントロや最初のフレーズが出てきた時の聴衆の反応が、さすが人気シンガーと思わせる盛り上がりがある。
各メンバーでいちばん人気があるのは、実はヤングなのかもしれない。
ディスクの2枚目はバンド・スタイルによる演奏。ベースはカルヴィン・サミュエルズ、ドラムスはジョニー・バルバータ。
後半でも各メンバーの作品を取り上げていく。ナッシュの「プリ・ロード・ダウン」、そしてクロスビーの「ロング・タイム・ゴーン」。
いずれもCSNとしてのデビュー盤に収められた良曲だ。特に後者はドキュメンタリー映画「ウッドストック」でも、ステージ設営シーンで使われていて、印象に残っている人も多いだろう。
続くのはヤング作曲の2曲。「サザン・マン」と「オハイオ」。前者はソロ・アルバムから、後者はCSNYのシングル曲。
「サザン・マン」は13分以上にわたる、ヤングとスティルスのギター・バトルがまことに圧巻だ。
この2曲を聴くと思い出すのは、中学2年の終わりごろ行った、初めてのロック・コンサートでもあるクリーデンス・クリアウォーター・リバイバル公演のOAである。
先ほども言及したガロが、サポート・メンバーのベース・小原礼、ドラムス・高橋幸宏を従えてこの2曲を最後に連続で演奏したのだ。
その演奏の見事さに、日本でもこんな英米バンドにタメを張れるミュージシャンがいるんだと感動したものだ。
その高橋氏も、先日亡くなられてしまった。
いま筆者は自分の青春が、いっぺんに消えてなくなったような寂寥感を味わっている。
CSNYのコンサートのハイ・ライトはスティルス作の、これも13分以上におよぶ大曲「キャリー・オン」。
スティルスとヤングの壮絶なギター・ソロで、おなかいっぱいになれる。
ラストは4人のメンバーのみで「自由の値」を歌う。
これはヤングもコーラスに参加しているナンバー。
CSNYの黄金期のハーモニーが、この短い1曲に凝縮されていると思う。
懐かしさ、青春の苦さ、楽しさ、その他諸々の思いを喚起してくれる1枚。
あなたにも多分、この「4ウェイ・ストリート」にまつわる思い出がいっぱいあるに違いない。
そう。これこそが卒業アルバムのような1枚。
<独断評価>★★★★
フォークロック・バンド、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング(以下CSNY)のライブ・アルバム。71年リリース。彼ら自身によるプロデュース。NY、LA、シカゴ録音。
先日デイヴィッド・クロスビーが81歳で亡くなったというニュースが伝わり、「そうか、彼らもそんな年齢になったのか」と、歳月の経過を身を持って感じた。
70年代初頭、CSNYの音楽を日常的に聴いていた当時の中学生、つまり筆者も、いまや65歳である。
筆者の思春期、そばに女子はまったくいなかったが(男子校というのが致命的だった)、常に彼らの音楽はそばにあったものだ。
筆者が中学3年から4年間参加した、学校のフォークとロックの同好会でも、CSNYやその各メンバーのソロ曲は同好会のメンバー全員が愛唱していた。まさに思春期の伴侶だった。
そんなわけで、今回はいつものような細かな説明はすべてすっ飛ばして、もっぱら個人的な思い入れを書かせていただく。
レコードは「組曲:青い眼のジュディ」の終盤から始まる。この曲は同好会のシマムラ君、イクノ君、スミタ君が完全コピーして、文化祭のステージで大ウケしていたことを思い出す。
ガロという日本のグループも同曲をコピーしてよく演奏していたものだが、その影響もあったのだろう。
よくあのギターとコーラスを高校生が再現出来たものだ。才能と情熱、両方がないと難しい。
3曲目の「ティーチ・ユア・チルドレン」は、CSNYの代表的なヒット曲だ。
71年の英国映画「小さな恋のメロディ」のエンディングで使われて、青春ソングのスタンダードになった。
この曲が筆者の参加した同好会のテーマ・ソングでもあった。高校3年の文化祭、ラスト・ステージのフィナーレでメンバー全員で合唱したのを覚えている。これぞ青春の一コマだな。
このライブでもリードボーカルのナッシュが「一緒に歌ってくれ」と聴衆に呼びかけ、会場は大合唱となる。実にいいムードだ。
「トライアド」「リー・ショア」はクロスビーのソロ曲。彼の独特の作曲センスが、ともによく表れている。内省的な曲調で、心にジワっと沁みてくる。
後者では、ナッシュがコーラスで加わり、息の合ったハーモニーを聴かせてくれる。
6曲目の「シカゴ」はピアノを弾きつつグレアム・ナッシュが歌うナンバー。クロスビーがコーラスでサポート。
これはナッシュとしては珍しいシングル曲。内容はラブソングの多い彼の他の作品とは異なり、硬派のプロテスト・ソング。けっこうヒットしたのを覚えている。
「ロック・バンドの『シカゴ』と紛らわしいじゃん!」というツッコミを入れたのも懐かしい思い出(笑)。
コンサートの前半(ディスクの1枚目)は、リズム・セクションを加えない、完全にCSNYのメンバーだけでの歌と演奏。
だから、ロック・コンサートのライブ盤とはとても思えないくらい「静か」な1枚でもある。観客の反応も、ダイレクトに伝わってくる。
メンバーそれぞれをフィーチャーしたかたちで、ステージは進む。ソロの弾き語りだったり、他のメンバーがサポートに入ったり。基本的には1、2人の編成だ。
クロスビー、ナッシュのソロ曲の後は、ニール・ヤングが登場する。
彼はすでに何枚ものソロ・アルバムを発表しており、CSNYにも最後に参加したので、彼のときだけ少し雰囲気が違うような気がする。
ソロ・アーティスト然としているといいますか。曲も多くはソロ・アルバムから。
「カウガール・イン・ザ・サウンド」は同好会のトップ・ギタリスト、ヤマジ君がアコギでよく弾き語りをしていたなぁ。哀感あふれる曲調がいい感じだった。
彼はその後、中央官庁のお役人になってしまって、以前会った時は「ギターはすっかり忘れてしまったよ」とボヤいていたが、定年を迎えてたまにはギターを弾いたりしているのだろうか。
ヤングの次はスティーヴ・スティルス。ピアノの弾き語りで「49のバイバイズ/アメリカズ・チルドレン」を歌う。
これが実にカッコいい。ゴスペルなノリでバッファローの「フォー・ホワット」の一節なども折り込みつつ、激しいボーカルを聴かせる。それまで静かだった会場も、次第に熱気を帯びていく。
そしてヒット・ナンバーの「愛への讃歌」。この曲では他のメンバーも参加して、ノリノリのハーモニーを聴かせてくれる。
LPの1枚目はこれで終了なのだが、CDは追加トラックがある。
ナッシュが歌う「キング・マイダス」は彼のホリーズ時代の作品(クラーク、ヒックスとの共作)。こういうあまり知られていない佳曲をやってくれると嬉しい。元曲を聴いてみたくなる。
「ブラック・クイーン」はスティルスのソロ・ナンバー。ブルースに強く影響を受けたそのアコギ演奏は、圧倒的な迫力のひと言。
「ザ・ローナー~シナモン・ガール~ダウン・バイ・ザ・リヴァー」はヤングによるロング・メドレー。
ギターのイントロや最初のフレーズが出てきた時の聴衆の反応が、さすが人気シンガーと思わせる盛り上がりがある。
各メンバーでいちばん人気があるのは、実はヤングなのかもしれない。
ディスクの2枚目はバンド・スタイルによる演奏。ベースはカルヴィン・サミュエルズ、ドラムスはジョニー・バルバータ。
後半でも各メンバーの作品を取り上げていく。ナッシュの「プリ・ロード・ダウン」、そしてクロスビーの「ロング・タイム・ゴーン」。
いずれもCSNとしてのデビュー盤に収められた良曲だ。特に後者はドキュメンタリー映画「ウッドストック」でも、ステージ設営シーンで使われていて、印象に残っている人も多いだろう。
続くのはヤング作曲の2曲。「サザン・マン」と「オハイオ」。前者はソロ・アルバムから、後者はCSNYのシングル曲。
「サザン・マン」は13分以上にわたる、ヤングとスティルスのギター・バトルがまことに圧巻だ。
この2曲を聴くと思い出すのは、中学2年の終わりごろ行った、初めてのロック・コンサートでもあるクリーデンス・クリアウォーター・リバイバル公演のOAである。
先ほども言及したガロが、サポート・メンバーのベース・小原礼、ドラムス・高橋幸宏を従えてこの2曲を最後に連続で演奏したのだ。
その演奏の見事さに、日本でもこんな英米バンドにタメを張れるミュージシャンがいるんだと感動したものだ。
その高橋氏も、先日亡くなられてしまった。
いま筆者は自分の青春が、いっぺんに消えてなくなったような寂寥感を味わっている。
CSNYのコンサートのハイ・ライトはスティルス作の、これも13分以上におよぶ大曲「キャリー・オン」。
スティルスとヤングの壮絶なギター・ソロで、おなかいっぱいになれる。
ラストは4人のメンバーのみで「自由の値」を歌う。
これはヤングもコーラスに参加しているナンバー。
CSNYの黄金期のハーモニーが、この短い1曲に凝縮されていると思う。
懐かしさ、青春の苦さ、楽しさ、その他諸々の思いを喚起してくれる1枚。
あなたにも多分、この「4ウェイ・ストリート」にまつわる思い出がいっぱいあるに違いない。
そう。これこそが卒業アルバムのような1枚。
<独断評価>★★★★