2023年2月17日(金)
#457 THE DOORS「GREATEST HITS」(Elektra 7559-61860-2)
米国のロック・バンド、ザ・ドアーズのベスト・アルバム。95年リリース。ポール・A・ロスチャイルドほかによるプロデュース。
ドアーズは65年LAにて結成。当初はベースも含めた5人編成だったがすぐに4人となり、67年レコード・デビュー。
ボーカルのジム・モリソンの強烈な個性、そして他のメンバーの圧倒的な演奏力により、一世を風靡した。71年にモリソンがなくなり、翌年解散となる。
「ハロー・アイ・ラヴ・ユー」は68年のシングル。全米1位のヒット。メンバー全員の作品。サード・アルバム「太陽を待ちながら」からのカット。
メロディがキンクスの「オール・オブ・ザ・ナイト」に酷似していることはよく知られているが、キンクス側が寛容だったため、訴訟にならずに済んでいる。
アレンジ的にはクリーム風のサイケデリック・ロックなのがその時代っぽい。
「ハートに火をつけて」は67年、2枚目のシングルとしてリリースされ、全米1位の大ヒットとなり、ドアーズの名を一躍世界に広めた。ファースト・アルバム「ハートに火をつけて」からのカット。
他の曲同様メンバー全員の作品となっているが、作詞はギターのロビー・クリーガーが大半をやり、作曲はクリーガーとキーボードのレイ・マンザレクが主に担当している。
マンザレクのオルガン・ソロによるイントロがクール。ロック史にも残していいアレンジだと思う。
長いオルガンとギターのソロの末に再びこのフレーズが出て来る瞬間は、鳥肌ものである。
「まぼろしの世界(People are Strange)」は67年リリースのセカンド・アルバム「まぼろしの世界(Strange Days)」からのシングル・カット。
さほどヒットしなかったが、哀愁感漂うメロディがいい。
「ラヴ・ミー・トゥー・タイムズ」もセカンド・アルバムからカットされたシングル。
全体に聴かれるブルースっぽいノリは、ドアーズの本来の性格、ブルース・バンドを匂わせているね。
「ライダーズ・オン・ザ・ストーム」は71年リリースの6thアルバム「L.A. ウーマン」の最終曲。シングル化はされていない。
7分以上にわたる大曲で、その不吉な歌詞内容からモリソンの死を暗示しているとまでいわれているが、歌のモデルはビリー・クックという実在の犯罪者なんだそうだ。
ザ・ドアーズは、単なる「セックス、ドラッグ、ロックンロール!」なバカバンドではなく、文学的、哲学的なテーマを常に模索していた。
そのバンド名自体、英国の作家オルダス・ハクスリーの「知覚の扉(The Doors of Perception)」から来ているぐらいだしね。
そういう背景を知った上でドアーズの音楽を聴くと、また違ったものが見えてくるだろう。
「ブレイク・オン・スルー」は67年リリースのデビュー・シングル。ヒットには至らなかったが、ドアーズの革新性を象徴する名曲だと思う。
暴力的な手段によってでもこの世界をぶち破り、違う世界へと突き抜ける。
野獣じみたパワーに満ち溢れた、モリソンのシャウトが耳に突き刺さるナンバー。
「ロードハウス・ブルース」は、70年のアルバム「モリソン・ホテル」からのナンバー。ライブ録音。
ライブ・バンド、ブルース・バンドとしての原点にかえったサウンドだ。
オーディエンスとの直接のやりとりを楽しむモリソンが、リラックスしていてナイス。
「タッチ・ミー」は69年のアルバム「ソフト・パレード」からのシングル。全米3位。
ストリングスやブラスも加わり、えらくポップな仕上がりになっているが、ドアーズの本来の良さはあまり感じやるない。なんか、スコット・エンゲルみたいな路線だ。
やはり、彼らの魅力はバンド・サウンドにあるのだ。ただの売れ線ポップスをやるようになったら聴く気にならないなぁ。
「L.A. ウーマン」は同名アルバムより。シングル化はされていない。
それまでのドアーズでは少なかったアンプ・テンポのロック・ナンバー。
モリソンのボーカル・スタイルも年齢と共に徐々に変化して、枯れたブルースマンな雰囲気が増しているように思う。
「ラヴ・ハー・マッドリー」は当初「あの娘に狂って」という邦題がついていたナンバー。今じゃそういう表現はヤバいから変わったみたいだけど。同じく「L.A. ウーマン」からのシングル。
以前のジャズィでプログレッシブなサウンドは影を潜めて、オーソドックスなロックになっている。
この曲もブルースへの回帰がはっきりと見て取れるナンバーだ。
「ザ・ゴースト・ソング」は78年のアルバム「アメリカン・プレイヤー」からの一曲。
当然ながらモリソンは生きてはいないわけで、これは残る3人のメンバーが再び集結して、生前のモリソンが自作詩を朗読したのに合わせて演奏したアルバムだ。
もともとドアーズは、モリソンが書いていた詩を他のメンバーに語って聞かせたところからスタートしたそうだから、これこそがバンドの原点なのかもしれない。
アルバムの他のナンバーには、相当エロティックな内容のものもあるそうだ。
かつての音からだいぶん変化して、時代を反映したフュージョン・サウンドになった新ドアーズにも注目である。
ラストの「ジ・エンド」は79年の映画「地獄の黙示録」の冒頭シーンで使用されたことで再び注目が集まった大曲。デビュー・アルバムの最後に収録。
エディプス王の悲劇を題材にしたといわれる歌詞は、ことに後半が難解で、いまだに決定的な解釈はないようだ。
そしてそのライブ・パフォーマンスもまるで巫覡、シャーマンの儀式のように、異常なまでの興奮・陶酔をもたらすものだったそうだ。
ドアーズを象徴するこの曲に目をつけたコッポラ監督はスゲーなと思う。
「地獄の黙示録」に登場する人々の狂気は、見事にこの「ジ・エンド」とシンクロしているのだ。
モリソンの生涯を描いた映画「ドアーズ」も作られて、バンドの足跡そのものがレジェンドとなったザ・ドアーズ。
人生を通常の何倍ものスピードで駆け抜けてしまったジム・モリソン。
そしてその天才性に引き寄せられた、3人のミュージシャンたち。
彼らが共に過ごした何年間かに匹敵する、濃い時間を体験したアーティストは、そういるものではない。
ザ・ドアーズは、ワン・アンド・オンリーなバンドとして、ロック・ファンの記憶に永遠に刻み込まれるに違いない。
<独断評価>★★★★
米国のロック・バンド、ザ・ドアーズのベスト・アルバム。95年リリース。ポール・A・ロスチャイルドほかによるプロデュース。
ドアーズは65年LAにて結成。当初はベースも含めた5人編成だったがすぐに4人となり、67年レコード・デビュー。
ボーカルのジム・モリソンの強烈な個性、そして他のメンバーの圧倒的な演奏力により、一世を風靡した。71年にモリソンがなくなり、翌年解散となる。
「ハロー・アイ・ラヴ・ユー」は68年のシングル。全米1位のヒット。メンバー全員の作品。サード・アルバム「太陽を待ちながら」からのカット。
メロディがキンクスの「オール・オブ・ザ・ナイト」に酷似していることはよく知られているが、キンクス側が寛容だったため、訴訟にならずに済んでいる。
アレンジ的にはクリーム風のサイケデリック・ロックなのがその時代っぽい。
「ハートに火をつけて」は67年、2枚目のシングルとしてリリースされ、全米1位の大ヒットとなり、ドアーズの名を一躍世界に広めた。ファースト・アルバム「ハートに火をつけて」からのカット。
他の曲同様メンバー全員の作品となっているが、作詞はギターのロビー・クリーガーが大半をやり、作曲はクリーガーとキーボードのレイ・マンザレクが主に担当している。
マンザレクのオルガン・ソロによるイントロがクール。ロック史にも残していいアレンジだと思う。
長いオルガンとギターのソロの末に再びこのフレーズが出て来る瞬間は、鳥肌ものである。
「まぼろしの世界(People are Strange)」は67年リリースのセカンド・アルバム「まぼろしの世界(Strange Days)」からのシングル・カット。
さほどヒットしなかったが、哀愁感漂うメロディがいい。
「ラヴ・ミー・トゥー・タイムズ」もセカンド・アルバムからカットされたシングル。
全体に聴かれるブルースっぽいノリは、ドアーズの本来の性格、ブルース・バンドを匂わせているね。
「ライダーズ・オン・ザ・ストーム」は71年リリースの6thアルバム「L.A. ウーマン」の最終曲。シングル化はされていない。
7分以上にわたる大曲で、その不吉な歌詞内容からモリソンの死を暗示しているとまでいわれているが、歌のモデルはビリー・クックという実在の犯罪者なんだそうだ。
ザ・ドアーズは、単なる「セックス、ドラッグ、ロックンロール!」なバカバンドではなく、文学的、哲学的なテーマを常に模索していた。
そのバンド名自体、英国の作家オルダス・ハクスリーの「知覚の扉(The Doors of Perception)」から来ているぐらいだしね。
そういう背景を知った上でドアーズの音楽を聴くと、また違ったものが見えてくるだろう。
「ブレイク・オン・スルー」は67年リリースのデビュー・シングル。ヒットには至らなかったが、ドアーズの革新性を象徴する名曲だと思う。
暴力的な手段によってでもこの世界をぶち破り、違う世界へと突き抜ける。
野獣じみたパワーに満ち溢れた、モリソンのシャウトが耳に突き刺さるナンバー。
「ロードハウス・ブルース」は、70年のアルバム「モリソン・ホテル」からのナンバー。ライブ録音。
ライブ・バンド、ブルース・バンドとしての原点にかえったサウンドだ。
オーディエンスとの直接のやりとりを楽しむモリソンが、リラックスしていてナイス。
「タッチ・ミー」は69年のアルバム「ソフト・パレード」からのシングル。全米3位。
ストリングスやブラスも加わり、えらくポップな仕上がりになっているが、ドアーズの本来の良さはあまり感じやるない。なんか、スコット・エンゲルみたいな路線だ。
やはり、彼らの魅力はバンド・サウンドにあるのだ。ただの売れ線ポップスをやるようになったら聴く気にならないなぁ。
「L.A. ウーマン」は同名アルバムより。シングル化はされていない。
それまでのドアーズでは少なかったアンプ・テンポのロック・ナンバー。
モリソンのボーカル・スタイルも年齢と共に徐々に変化して、枯れたブルースマンな雰囲気が増しているように思う。
「ラヴ・ハー・マッドリー」は当初「あの娘に狂って」という邦題がついていたナンバー。今じゃそういう表現はヤバいから変わったみたいだけど。同じく「L.A. ウーマン」からのシングル。
以前のジャズィでプログレッシブなサウンドは影を潜めて、オーソドックスなロックになっている。
この曲もブルースへの回帰がはっきりと見て取れるナンバーだ。
「ザ・ゴースト・ソング」は78年のアルバム「アメリカン・プレイヤー」からの一曲。
当然ながらモリソンは生きてはいないわけで、これは残る3人のメンバーが再び集結して、生前のモリソンが自作詩を朗読したのに合わせて演奏したアルバムだ。
もともとドアーズは、モリソンが書いていた詩を他のメンバーに語って聞かせたところからスタートしたそうだから、これこそがバンドの原点なのかもしれない。
アルバムの他のナンバーには、相当エロティックな内容のものもあるそうだ。
かつての音からだいぶん変化して、時代を反映したフュージョン・サウンドになった新ドアーズにも注目である。
ラストの「ジ・エンド」は79年の映画「地獄の黙示録」の冒頭シーンで使用されたことで再び注目が集まった大曲。デビュー・アルバムの最後に収録。
エディプス王の悲劇を題材にしたといわれる歌詞は、ことに後半が難解で、いまだに決定的な解釈はないようだ。
そしてそのライブ・パフォーマンスもまるで巫覡、シャーマンの儀式のように、異常なまでの興奮・陶酔をもたらすものだったそうだ。
ドアーズを象徴するこの曲に目をつけたコッポラ監督はスゲーなと思う。
「地獄の黙示録」に登場する人々の狂気は、見事にこの「ジ・エンド」とシンクロしているのだ。
モリソンの生涯を描いた映画「ドアーズ」も作られて、バンドの足跡そのものがレジェンドとなったザ・ドアーズ。
人生を通常の何倍ものスピードで駆け抜けてしまったジム・モリソン。
そしてその天才性に引き寄せられた、3人のミュージシャンたち。
彼らが共に過ごした何年間かに匹敵する、濃い時間を体験したアーティストは、そういるものではない。
ザ・ドアーズは、ワン・アンド・オンリーなバンドとして、ロック・ファンの記憶に永遠に刻み込まれるに違いない。
<独断評価>★★★★