2022年11月25日(金)
#376 南佳孝「SEVENTH AVENUE SOUTH」(CBSソニー28AH-1462)
シンガーソングライター、南佳孝82年リリースのスタジオ・アルバム。
南も実に息の長い歌い手である。デビューは73年、南23歳である。トリオ・レコードよりファーストアルバム「摩天楼のヒロイン」をリリース。
しばらくのブランクの後、76年CBSソニーに移籍、「忘れられた夏」をリリース。
お茶の間でもメジャーな存在となったのは79年の「モンロー・ウォーク」、81年の「スローなブギにしてくれ」のヒットあたりからだ。わりとスロースターターな南ではあったが、以降は順調にアルバムを発表し続けている。
「SEVENTH AVENUE SOUTH」はアメリカ・ニューヨークでの録音。もちろん、初めての海外録音だ。
ジャケットに使われた印象的な絵画は、エドワード・ホッパーという米国の画家の「Nighthawk」という作品。アルバムタイトルと相まって、いかにも深夜のニューヨークという雰囲気が満ち溢れている。
プロデューサーは南自身と高久光雄。
ミュージシャンは現地のスタジオマンたちで、アレンジはニック・デ・カロと井上鑑(「ルビーの指輪」のひとだね)その他なんだが、とにかくミュージシャンが一流揃いだ。
サックスのデイビッド・サンボーンを筆頭に、デイビッド・スピノザ(G)、トニー・レヴィン(B)、リック・マロッタ(Ds)、ラルフ・マクドナルド(Pc)と、すでに高い評価を得ていた凄腕ミュージシャンたちが名を連ねている。
この最高のメンツをバックに、自作曲をゆったりと歌い上げる南。アルバムのコンセプトは、いうまでもなく「都会の生活」だ。
「夏服を着た女たち」という曲名さながらに、まるでアーウィン・ショーの短編小説の如き、黒一色の夜、あるいは淡彩色の洒落た世界を展開する一枚だ。
筆者的に好きなのは、オープニングの「COOL」、そしてそれに続く「SCOTCH AND RAIN」かな。
前者のサンボーンの咽び泣くようなアルト・ソロ、後者のスピノザのギターやマイケル・チャイムズのハーモニカ・ソロの切ない響きは、一度聴いたことがあるひとなら、いまだに耳に残っているのではないかな。
松本隆による歌詞もいい。都会生活者の優雅で孤独で感傷的な世界を描かせたら、彼の右に出るものはいないだろう。
「波止場」はそんな中でも、出色の出来だと思う。行きずりの男と女が、ひととき心を通わせあう。ふたりとも
どこか訳ありな感じ。でも、お互いに深く尋ねることはせず、恋というには淡い関係を一夜だけ持つ。
実に粋じゃないか。
十代、二十代の若者にはちょっと歌えそうにない、おとなの世界。南佳孝、32歳にして初めて到達出来た境地といえそうだ。
ひとつひとつの曲に、ストーリーがあり、聴く者の想像力をかき立てる、そんな「歌による短編小説集」。
当時、親元を離れて東京でひとり暮らしを始めた筆者にとっても、この上なく重要でお気に入りの一枚。
すべてのニューヨーカー、そして東京生活者にお薦めしたい。
シンガーソングライター、南佳孝82年リリースのスタジオ・アルバム。
南も実に息の長い歌い手である。デビューは73年、南23歳である。トリオ・レコードよりファーストアルバム「摩天楼のヒロイン」をリリース。
しばらくのブランクの後、76年CBSソニーに移籍、「忘れられた夏」をリリース。
お茶の間でもメジャーな存在となったのは79年の「モンロー・ウォーク」、81年の「スローなブギにしてくれ」のヒットあたりからだ。わりとスロースターターな南ではあったが、以降は順調にアルバムを発表し続けている。
「SEVENTH AVENUE SOUTH」はアメリカ・ニューヨークでの録音。もちろん、初めての海外録音だ。
ジャケットに使われた印象的な絵画は、エドワード・ホッパーという米国の画家の「Nighthawk」という作品。アルバムタイトルと相まって、いかにも深夜のニューヨークという雰囲気が満ち溢れている。
プロデューサーは南自身と高久光雄。
ミュージシャンは現地のスタジオマンたちで、アレンジはニック・デ・カロと井上鑑(「ルビーの指輪」のひとだね)その他なんだが、とにかくミュージシャンが一流揃いだ。
サックスのデイビッド・サンボーンを筆頭に、デイビッド・スピノザ(G)、トニー・レヴィン(B)、リック・マロッタ(Ds)、ラルフ・マクドナルド(Pc)と、すでに高い評価を得ていた凄腕ミュージシャンたちが名を連ねている。
この最高のメンツをバックに、自作曲をゆったりと歌い上げる南。アルバムのコンセプトは、いうまでもなく「都会の生活」だ。
「夏服を着た女たち」という曲名さながらに、まるでアーウィン・ショーの短編小説の如き、黒一色の夜、あるいは淡彩色の洒落た世界を展開する一枚だ。
筆者的に好きなのは、オープニングの「COOL」、そしてそれに続く「SCOTCH AND RAIN」かな。
前者のサンボーンの咽び泣くようなアルト・ソロ、後者のスピノザのギターやマイケル・チャイムズのハーモニカ・ソロの切ない響きは、一度聴いたことがあるひとなら、いまだに耳に残っているのではないかな。
松本隆による歌詞もいい。都会生活者の優雅で孤独で感傷的な世界を描かせたら、彼の右に出るものはいないだろう。
「波止場」はそんな中でも、出色の出来だと思う。行きずりの男と女が、ひととき心を通わせあう。ふたりとも
どこか訳ありな感じ。でも、お互いに深く尋ねることはせず、恋というには淡い関係を一夜だけ持つ。
実に粋じゃないか。
十代、二十代の若者にはちょっと歌えそうにない、おとなの世界。南佳孝、32歳にして初めて到達出来た境地といえそうだ。
ひとつひとつの曲に、ストーリーがあり、聴く者の想像力をかき立てる、そんな「歌による短編小説集」。
当時、親元を離れて東京でひとり暮らしを始めた筆者にとっても、この上なく重要でお気に入りの一枚。
すべてのニューヨーカー、そして東京生活者にお薦めしたい。
<独断評価>★★★★
http://www.macolon.net