2022年11月26日(土)
#377 松田聖子「Seiko-Index」(CBSソニー 30AH 1223)
松田聖子のベスト・アルバム。82年リリース。
80年にデビュー、2枚目のシングル「青い珊瑚礁」でブレイクした松田聖子の80〜82年は、まさに「快進撃」の2年だった。
およそ3か月に1枚リリースするシングルは毎曲ヒットチャートを賑わし、彼女はあっという間にアイドル・シンガーの頂点に登りつめたのであった。
そんな聖子の、ファースト・ラウンドをまとめた一枚。シングルヒットと若干のB面曲、アルバムの人気曲で構成されているのだが、もう全部名曲だらけですわ。
A面は「青い珊瑚礁」から快調にスタート。5thシングルの「夏の扉」がそれに続く。
作曲は前者が小田裕一郎、後者は財津和夫。いずれも初期聖子の世界を作り上げた重要なコンポーザーだ。アレンジはともに大村雅朗。
この大村アレンジはかなり衝撃的だった。洋楽をまんまお手本にしたニューミュージック、シティポップスのサウンドを、アイドルシンガーにそのままぶつけて来たのだから。
トト、デイビッド・フォスター、ジェイ・グレイドンを想起させるハードなバッキング。新しい時代のポップスの誕生、だった。
ファースト・アルバムの人気タイトル曲「SQUALL」に続いて、松本隆の初作詞による「白いパラソル」。6枚目のシングルで組んだこの作詞家は、聖子のアピール・ポイントを完全に把握して、パーフェクトな歌詞を生み出していく。
初期聖子に一貫したテーマ、それは「季節感覚」「色彩感覚」そして「リゾート感覚」だ。松本はそれを初代作詞家の三浦徳子から引き継いで、集大成させる。
次の「いちご畑でつかまえて」は、まさにそんな聖子ー松本ワールドの一典型。メルヘンチックな少女漫画風でありながら、サリンジャーやビートルズの本歌取りみたいな側面もある、実験的作品。
A面ラストはデビュー曲「裸足の季節」。高い歌唱力の片鱗を見せながら、まだちょっと不安定な歌いぶりをそこかしこに見せており、「そこがまた(保護欲をくすぐられて)いい!」というファンが多かったものだ。
彼女の声は決してソウル・シンガーのようには太くない。その線の細さ、高音部を歌うときに少し感じさせる苦しさ、危うさ、これが見事にチャーム・ポイントになっている。ZARDの坂井泉水にも共通しているね、そのあたりは。
さて、B面へ行こう。まずは聖子の評価を決定づけた名曲、「赤いスイートピー」。8枚目のシングルで組んだ作曲家は、なんとユーミン(呉田軽穂名義)。ゆったりとしたバラードでの聖子の安定した歌いぶりは実に頼もしい。
デビューしてわずか2年で、彼女はもはや無敵であった。その成長ぶり、凄まじいのひと言だ。
顔立ちさえも、デビュー当時の頼りなげな感じから変わって、堂々として来た。人気というのは、少女をスターに変えるもんだなと、筆者は感じたものでした。
4枚目の「チェリーブラッサム」、3枚目の「風は秋色」と初期シングルが続く。声も1、2枚目より少しずつ艶っぽく変わっているのがよく分かる。一曲ごとに美しく脱皮していくなんて、そんな凄い歌い手、そうそういませんぜ。
「制服」は「赤いスイートピー」のB面だが、ファンの人気が高い、卒業ソングの隠れた名曲。聖子の泣き節、ここにあり。
「冬の妖精」は4枚目のアルバム「風立ちぬ」の中に収録されたナンバー。一聴してわかる、ナイアガラ・サウンド。そう、大滝詠一のプロデュース曲である。
聖子の伸びやかな歌声は、フィル・スペクターを思わせる懐かしのポップス調にも実によくなじむことが、わかる。
そしてラストは同じく大滝プロデュースの7thシングル「風立ちぬ」で締めくくられる。ここでの泣き節も見事のひと言。
松田聖子のなみなみならぬポテンシャルが、周囲の優秀な作家陣を刺激して、ハンパないクォリティの作品群を生み出したという奇跡。
聖子の才能を最初に見出したプロデューサー、若松宗雄さんの炯眼はホント、敬服に値すると思います、ハイ。
松田聖子のベスト・アルバム。82年リリース。
80年にデビュー、2枚目のシングル「青い珊瑚礁」でブレイクした松田聖子の80〜82年は、まさに「快進撃」の2年だった。
およそ3か月に1枚リリースするシングルは毎曲ヒットチャートを賑わし、彼女はあっという間にアイドル・シンガーの頂点に登りつめたのであった。
そんな聖子の、ファースト・ラウンドをまとめた一枚。シングルヒットと若干のB面曲、アルバムの人気曲で構成されているのだが、もう全部名曲だらけですわ。
A面は「青い珊瑚礁」から快調にスタート。5thシングルの「夏の扉」がそれに続く。
作曲は前者が小田裕一郎、後者は財津和夫。いずれも初期聖子の世界を作り上げた重要なコンポーザーだ。アレンジはともに大村雅朗。
この大村アレンジはかなり衝撃的だった。洋楽をまんまお手本にしたニューミュージック、シティポップスのサウンドを、アイドルシンガーにそのままぶつけて来たのだから。
トト、デイビッド・フォスター、ジェイ・グレイドンを想起させるハードなバッキング。新しい時代のポップスの誕生、だった。
ファースト・アルバムの人気タイトル曲「SQUALL」に続いて、松本隆の初作詞による「白いパラソル」。6枚目のシングルで組んだこの作詞家は、聖子のアピール・ポイントを完全に把握して、パーフェクトな歌詞を生み出していく。
初期聖子に一貫したテーマ、それは「季節感覚」「色彩感覚」そして「リゾート感覚」だ。松本はそれを初代作詞家の三浦徳子から引き継いで、集大成させる。
次の「いちご畑でつかまえて」は、まさにそんな聖子ー松本ワールドの一典型。メルヘンチックな少女漫画風でありながら、サリンジャーやビートルズの本歌取りみたいな側面もある、実験的作品。
A面ラストはデビュー曲「裸足の季節」。高い歌唱力の片鱗を見せながら、まだちょっと不安定な歌いぶりをそこかしこに見せており、「そこがまた(保護欲をくすぐられて)いい!」というファンが多かったものだ。
彼女の声は決してソウル・シンガーのようには太くない。その線の細さ、高音部を歌うときに少し感じさせる苦しさ、危うさ、これが見事にチャーム・ポイントになっている。ZARDの坂井泉水にも共通しているね、そのあたりは。
さて、B面へ行こう。まずは聖子の評価を決定づけた名曲、「赤いスイートピー」。8枚目のシングルで組んだ作曲家は、なんとユーミン(呉田軽穂名義)。ゆったりとしたバラードでの聖子の安定した歌いぶりは実に頼もしい。
デビューしてわずか2年で、彼女はもはや無敵であった。その成長ぶり、凄まじいのひと言だ。
顔立ちさえも、デビュー当時の頼りなげな感じから変わって、堂々として来た。人気というのは、少女をスターに変えるもんだなと、筆者は感じたものでした。
4枚目の「チェリーブラッサム」、3枚目の「風は秋色」と初期シングルが続く。声も1、2枚目より少しずつ艶っぽく変わっているのがよく分かる。一曲ごとに美しく脱皮していくなんて、そんな凄い歌い手、そうそういませんぜ。
「制服」は「赤いスイートピー」のB面だが、ファンの人気が高い、卒業ソングの隠れた名曲。聖子の泣き節、ここにあり。
「冬の妖精」は4枚目のアルバム「風立ちぬ」の中に収録されたナンバー。一聴してわかる、ナイアガラ・サウンド。そう、大滝詠一のプロデュース曲である。
聖子の伸びやかな歌声は、フィル・スペクターを思わせる懐かしのポップス調にも実によくなじむことが、わかる。
そしてラストは同じく大滝プロデュースの7thシングル「風立ちぬ」で締めくくられる。ここでの泣き節も見事のひと言。
松田聖子のなみなみならぬポテンシャルが、周囲の優秀な作家陣を刺激して、ハンパないクォリティの作品群を生み出したという奇跡。
聖子の才能を最初に見出したプロデューサー、若松宗雄さんの炯眼はホント、敬服に値すると思います、ハイ。
<独断評価>★★★★