2008年9月7日(日)
#49 エリック・クラプトン「Hey Hey」(Unplugged/Reprise)
MTV企画でのエリック・クラプトン・ライブ。92年リリース。
クラプトンにはソロ・デビュー当時から、アコースティック・サウンドへの指向があったが、それが本格的に開花したのが、この「アンプラグド」である。
この曲は、ECのレパートリーとして知られる「Key To The Highway」の作者、ビッグ・ビル・ブルーンジーの作品。
ビッグ・ビルは戦前・戦中期におけるシカゴ・ブルースのボス的存在で、レコーディング曲数もハンパではない。「Hey Hey」は、51年に録音されているが、ECがこの曲を取り上げたことで、歴史に埋もれていた佳曲が、40年ぶりに命を吹き込まれたといえるね。
歌の構造はきわめてシンプル。「Hey Hey」という恋人への呼びかけの繰り返しが、ひたすら耳に残る。
思うにブルースの歌詞には、つぶやきというかモノローグ的なものもあるが、恋人への呼びかけ、哀願的なものが意外と多い。この曲もそうだし、同じく「Key To The Highway」の後半、「Give me one~」のくだりもそうだな。タイトルでいえば「Hey Bartender」「Hey Lawdy Mama」とか。
会話のセリフがそのまま歌詞になっていく。いかにも日常の詩(うた)、ブルースらしい表現だといえそう。
話は脱線するが、筆者はこの「Hey Hey」という曲を聴くたび、ついつい左とん平の「ヘイ・ユウ・ブルース」を思い出してしまう。
とん平氏の歌詞というかラップは、恋愛がテーマの「Hey Hey」とは全然違って社会派的なものだったけど、なにか歌の姿勢として共通したものがあるとすれば、呼びかけ、つまりオレはこう思ってんだけど、どうよ?みたいな他者への働きかけにあるんじゃないかと思う。いささかこじつけっぽいけど。
つまり、コール&レスポンス、他者との相互関係性こそが、ブルース的なのだ。
自己完結に終わったり、ナルシシズムに固まったりすることなく、つまり「ぶらない」ところが、ブルースの魅力なのだよ。
さてこの曲、ギター2本だけで、はねるような、躍動感あふれるリズムを生み出しているのが、実にいかしている。
高音に特徴あるリフが、耳に残る一曲。アコースティック・ブルースのスタンダードとして、残り続けることだろう。