2024年5月20日(月)
#410 クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル「I Heard It Through The Grapevine」(Fantasy)
#410 クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル「I Heard It Through The Grapevine」(Fantasy)
クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル、1970年7月リリースの5thアルバム「Cosmo’s Factory」からの一曲。ノーマン・ホイットフィールド、バレット・ストロングの作品。ジョン・フォガティによるプロデュース。
米国のロックバンド、クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル(以下CCR)は、サンフランシスコ出身の4人組。もともとは中学の同級生3人で始めたブルー・ベルベッツが母体となり、後にメンバー、ジョン・フォガティの兄、トムが加わって4人編成となった。68年にレコードデビュー。
セカンド・アルバム「Bayou Country」、シングル「Proud Mary」でブレイク、以後ヒットチャートの常連となる。72年に解散。
はじめてアルバムを買ったアーティストだったこともあり、CCRは筆者にとってもとりわけ思い入れの強いバンドだ。中でも「Cosmo’s Factory」は通しで何十回と聴いた最愛聴盤である。
今日取り上げた「I Heard It Through The Grapevine(邦題・悲しいうわさ)」は、11分5秒という、アルバム中最長尺のナンバーである。
この曲が初めて世に出たのは、日本ではあまり知られていないが、ソウルグループ、グラディス・ナイト&ザ・ピップス1967年リリースのシングルである。作者はホイットフィールド=ストロングというプロのソングライティング・チーム。全米2位の大ヒットとなった。
だが、本曲がより広く知られるようになったのは、翌68年リリースのマーヴィン・ゲイによるバージョンだろう(実はピップスより先にレコーディングしていたらしい)。そのシングルは全米1位、しかも7週連続1位となり、ゲイ最大のヒットとなった。
白人バンドとして初めて本曲をカバーしたのが、CCRということになる。当初、彼らはシングルとしてのリリースを望んでいたらしいが、あまりに長いこともありその希望は通らなかった。
しかし、バンド解散後の76年に、それは実現したのである。本曲のシングルは見事、全米43位となった。CCRの他のシングル・ヒットとは比べようもないが、こういう長いシブめの曲が、ちゃんとアピールしたのは嬉しいことだった。
聴くとすぐに分かると思うが、本曲はそのかなりの部分、半分以上を、ジョン・フォガティのギター・ソロが占めている。もちろん、ピップスやゲイのバージョンにはそういうソロはないので、これは完全にCCRならではのアレンジである。
歌から始まった後の、ギターソロ。これが前半のソロ。サビを歌った後に、再びソロ演奏に入る。ここからが後半のソロで、これがかなり長い。曲がフェイドアウトして終わるまで、ずっと続くのだから。
このギターソロが、実に「いい」のである。上手くもあるが、そのテクニックよりも注目すべきなのは、全体の構成力だと思う。
緩急、うねり、押し引き。これらが、見事に計算されて過不足なく配置されている。最高潮まで盛り上げた後のクールダウン、このあたりが実にうまい。
一見、偶発的なジャム・セッションみたいなスタイルを取りながらも、実は完璧に編曲されたものだということだ。
そういう意味では、クリームのライブ版「Crossroads」のギターソロに匹敵する、高い完成度だといえる。
そして、クラプトンとはまた違ったタイプの「うまさ」がそこに感じられる。
この一曲を聴いたことで、ジョン・フォガティは筆者にとって、一番のお気に入りギタリストとなった。
何回聴いてもまったく飽きることのない、至高のギターソロ。未聴のかた、一度しか聴いたことのないかたも、本曲をぜひじっくりと聴いてみてほしい。
フォガティの、とてつもない音楽的才能を、そこに発見できるはずだから。