2008年7月13日(日)
#42 ウィリー・ニックス&ジェイムズ・コットン「Baker Shop Boogie」(Blow, Brother, Blow!/Charly)
ウィリー・ニックスといってピンと来るひとは、きわめて少ないだろうなぁ。歌うドラマーとして数々のブルースマンと共演し、自らもソロで歌いながら、商業的には成功せず、単独ではアルバム一枚すら出していないから、ほとんど知られていない。まさに不遇のアーティストなんである。
22年テネシー州メンフィス生まれ。故郷のメンフィスでタップ・ダンサーとして出発、踊るコメディアンとしてミンストレル・ショーで活躍。40年代の半ばにミュージシャンに本格的に転向、ロバート・ジュニア・ロックウッド、サニーボーイ・ウィリアムスンII、ウィリー・ラブ、ジョー・ウィリー・ウィルキンス、B・B・キング、ジョー・ヒル・ルイス、マディ・ウォーターズ、エルモア・ジェイムズ、ジョニー・シャインズ、メンフィス・スリムといった一流どころと共演。シンガーとしてもRPM、チェス、サン、チャンス等でレコードを出している。
これだけのキャリアを持ちながら、60~70年代にはほとんどメジャー・シーンに出なくなり、91年、ミシシッピ州リーランドで死亡。享年68。
現在その歌声は、何枚かのコンピ盤によってのみ聴くことが出来る。
きょうご紹介する「Baker Shop Boogie」はそんな貴重な音源のひとつ。
ジェイムズ・コットンのハープ、ウィリー・ジョンスンのギター、ウィリー・ラブのベースを従えた演奏。もちろん、ドラムスはウィリー・ニックス自身がたたいている。52年メンフィス録音。
聴いていただくとわかると思うが、全体にドサドサッとしたいなたい演奏が、時代と場所柄を感じさせてグー。そしてウィリー・ニックスの、一本調子でお世辞にも巧みとはいえないけど、非常にリラックスしたムードの歌声が、なんともええのです。
名ハーピスト、ジェイムズ・コットンも、このころはいかにも田舎臭いスタイルで吹いていて、ほほえましい。
まさにメンフィス。まさに南部。このダウンホームなサウンドに酔っておくれ。