NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#447 THE ROLLING STONES「STEEL WHEELS」(Rolling Stones CK 45333

2023-02-07 05:27:00 | Weblog
2023年2月7日(火)


#447 THE ROLLING STONES「STEEL WHEELS」(Rolling Stones CK 45333

ザ・ローリング・ストーンズのスタジオ・アルバム。89年リリース。クリス・キムゼイ、グリマー・ツインズによるプロデュース。

80年代は、ストーンズにとっては紆余曲折の時代だった。バンドの核であるグリマー・ツインズことジャガー=リチャーズのコンビに亀裂が生じて、その修復のために長い月日がかかったからだ。その間、ミックもキースもソロ・アルバムを出し、ストーンズとしてのライブは約8年も行われなかった。

そんなふたりがようやく和解して、今後も力を合わせてストーンズを続けていくことを示したのが当盤である。

3年ぶりのアルバムリリースに合わせて、コンサートツアーも再開された。

オープニングの「サッド・サッド・サッド」からラストの「スリッピング・アウェイ」まで、ストーンズ健在!と思わせる、まずまずの出来映えである。

セールスも絶好調で、全英で2位、全米で3位である。ストーンズの数あるアルバム中でもベストスリーに入る売り上げで、ストーンズの「中興の象徴」とでもいうべき作品となった。

【個人的ベスト6:第6位】

「キャント・ビー・シーン」

キースがリード・ボーカル。当盤では彼が2曲リードをとっている。

88年にキースは「トーク・イズ・チープ」という初ソロ・アルバムを出し、好感触を得たことで大いに自信をつけたのだろうか、積極的に歌おうという意欲が生まれた。

アップ・テンポでグイグイと飛ばす本ナンバーは、キースのやる気が感じられる、好みの一曲。

ストーンズのため、というかミックに歌わせるために書く他の曲群とは一味違った何かが、そこにはある。

言葉では説明しづらいが、キースの美学というべき何かが。

【個人的ベスト6:第5位】

「サッド・サッド・サッド」

アップ・テンポのロックンロール・ナンバー。「スター・スター」あたりにも通じる、妙な捻りのないシンプルな曲作りは「これこれ、これこそがストーンズなんだよ!」と言いたくなる。

音響面のことを言うと、他の曲についても言えるのだが、ややエコーがかかりすぎていて、70年代のサウンドと比べると正直あまり好みではない。が、これが80年代流なのだろうな。

それでも、変わらぬストーンズ・スピリットの感じられる一曲ではある。

【個人的ベスト6:第4位】

「ブラインデッド・バイ・ラヴ」

激しい曲ばかりが続くところに挿入されるとホッとする、一服の清涼剤的なナンバー。

アメリアッチ風味のカントリー・ロックとでも言うべきだろうか。彼らはこういう曲をコンサートでも必ずチェンジアップとして入れるようになった。

オーディエンスは白人が大半だから、やはりこういう曲調もウケるのだろうな。

【個人的ベスト6:第3位】

「ホールド・オン・トゥ・ユア・ハット」

ひたすらハードなロックンロール・ナンバー。ギター・トーンにとことんこだわった一曲。

こういう激しいサウンドは、ボーカリストがそれに拮抗しうるだけのパワーを持っていないと成立しないが、ミックのシャウトは、それを満たして余りあるものがある。

この曲を聴けば、仕事やプライベートのストレスなど、瞬時に飛んでいくってもんだ。

【個人的ベスト6:第2位】

「ロック・アンド・ア・ハード・プレイス」

ダンサブルなビート・ナンバー。ハードなギターも絡み、ノリの良さは当盤でも一、二を争う出来である。

ストーンズはカテゴリとしては単なる「ロック」と分類されることが多く、ハード・ロックと呼ばれることはあまりないが、彼らには常に他のロック・バンドよりもハードな存在でありたいという意識があると思う。

形式というよりは、意識としてのハード・ロックといいますか、そういうものを極めたいってこと。

ロックの王者としてのそんな矜持が、この曲のタイトルや歌詞にも滲み出ているのだと感じる。

【個人的ベスト6:第1位】

「ミックスト・エモーションズ」

シングル・カットされ、全米5位のヒットともなったナンバー。力強いミディアム・テンポのロックンロール。

何か新しい趣向があるわけではない。ボーカルもコーラスも、いつものストーンズ・スタイルであるが、ストーンズ以外にはマネのできないスタイルでもある。

変に奇をてらった冒険をするより、ファンはこういう王道ストーンズ・サウンドを求めているのだ。最強のワンパターンといってもいい。

どのリスナーの期待も裏切ることのない仕事ぶりは、ナンバーワン・バンドが持つ実力によるものとしか言いようがない。

70年代までの上り坂の時代とは違い、ストーンズのメンバーも立派な中年となり、勢いだけでは通用しない、厳しい時代を迎えることとなった。

だが、たえずそのパワーを充填して、けっして「過去の人」とならないようヒット作を創造し続けたことで、ストーンズは現在に至るまで、王座を降りることなく続いている。

グリマー・ツインズの底力を、この一枚で再確認してほしい。

<独断評価>★★★★☆

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