NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#460 ERIC CLAPTON AND FRIENDS「BRITISH BLUES HEROES」(Wise Buy WB 869262)

2023-02-20 05:12:00 | Weblog
2023年2月20日(月)


#460 ERIC CLAPTON AND FRIENDS「BRITISH BLUES HEROES」(Wise Buy WB 869262)

ブリティッシュ・ブルースのコンピレーション盤。原盤はイミディエイトのブルース・エニタイム・シリーズ。

60年代、英国では一大ブルース・ブームが起き、エリック・クラプトン、ジョン・メイオールをはじめとするさまざまなミュージシャンが、こぞって米国黒人のブルースをトリビュートしていた。そのような熱いシーンを垣間見ることが出来る一枚だ。

「オン・トップ・オブ・ザ・ワールド」はジョン・メイオール&ブルースブレイカーズによる演奏。66年のシングル。メイオールの作品。

クレジットはないのだが、レコーディング時期から考えてリード・ギターはクラプトンで間違いないだろう。

当時は先端的だったであろうフィードバック・プレイが、耳に残る一曲。

メイオールというブルース・スクールの校長のもとで、どれだけ多くのミュージシャンが世に出たかを考えると、彼こそはブリティッシュ・ブルースの最重要人物だと言えるだろう。

「サムワン・トゥ・ラヴ・ミー」はT. S. マクフィーの演奏。ここで「誰?」と思われた方も多いだろうが、実は彼、先日本欄で取り上げたジョン・リー・フッカーのアルバムでバックをつとめた、グラウンドホッグスのリーダー、トニー・マクフィーの別名なのだ。

曲はシカゴ・ブルースのハーピストとして知られるスヌーキー・プライヤーのカバー。ツービートのブルース。

マクフィーのエッジの立ったギター・プレイが実にカッコいい。

「アイ・キャント・クイット・ユー・ベイビー」はサヴォイ・ブラウン・ブルース・バンドによる演奏。

英国ではフリートウッド・マック、チキン・シャックとともに三大ブルース・バンドと呼ばれたのがサヴォイ・ブラウン。それの前身にあたる。

67年のレコードデビュー当初は、黒人ミュージシャンを2人含んでいたという。それもあってか、ピアノやハープなどかなり黒っぽい音である。

リーダー、キム・シモンズのシブめの歌、ギターが聴きもの。

「ドラッギン・マイ・テイル」はエリック・クラプトンとジミー・ペイジの演奏。ふたりのオリジナルのスロー・ブルース。

レコーディング時期はクラプトンがクリームに参加する前くらいか。ペイジはスタジオ・ミュージシャンとして売れっ子だった時代だ。

ここでは、おもにクラプトンのギターをフィーチャー。バックにはピアノやハープなども入っている。

演奏の出来映えは…まぁ、及第点ってところか。

ECということで、過大な期待はしない方がいいかも(笑)。

「ディーリング・ウィズ・ザ・デヴィル」はダーマ・ブルース・バンドによる演奏。サニーボーイ・ウィリアムスン一世の作品のカバー。

ダーマ・ブルース・バンドはピアノ、ハープ、ギターの3人によるトリオ。黒人ブルースのマニアのような連中で、69年に一枚だけアルバムを残している。

ウィリー・ディクスンのビッグ・スリー・トリオのような古き良きサウンド。中でもハープがいい味を出している。

ブリティッシュ・ブルースというとどうしてもギターがメインというイメージが強いが、こういう地道なブルース探求をする人たちもいたのだなぁと再認識。

「フーズ・ノッキング」はジェレミー・スペンサーによる歌で、彼のオリジナル。

スペンサーといえば言うまでもなく、フリートウッド・マックのオリジナル・メンバーにして、スライド・ギターの名手。ここではギターは弾かず、ピアノと歌を聴かせてくれる。

激しいシャウトと、転がるようなピアノ。

スライド・ギターばかりクローズアップされがちなスペンサーの、マック参加以前の別の顔を見ることが出来る一曲。

「ネクスト・マイルストーン」はアルバート・リーの演奏。彼自身とトニー・コルトンの作品。

リーもそのアメリカナイズされたプレイスタイルのため、つい忘れがちだが英国人である。60年代から数多くのバンドで名演を残して来た。ECバンドでの活躍は皆さんもご存知だろう。

共作者のコルトンとはヘッズ・ハンド・アンド・フィートでのバンド仲間である。

ここではゆったりとしたテンポで歌を披露し、味わい深いギター・ソロを聴かせる。

超スピード・プレイだけがアルバート・リーじゃないってことだな。

「フレイト・ローダー」は再びクラプトンとペイジによる演奏。彼らのオリジナルのスロー・ブルース。

クラプトンがリード、ペイジがリズム。

ここのプレイも、けっして悪くはないがベストともいえない、ちょっと微妙なレベル。

「ルック・ダウン・アット・マイ・ウーマン」はジェレミー・スペンサーの演奏。彼のオリジナル・ブルース。

ここでも彼はピアノの弾き語りを聴かせる。ギタリストであることを忘れてしまうくらい、見事なピアノ・マンぶりである。

「ロール・エム・ピート」はダーマ・ブルース・バンドによる演奏。オリジナルは38年にピアニストのビート・ジョンスンが作り、ビッグ・ジョー・ターナーの歌でレコード化した。ある意味、ロックンロールの始祖のような曲だ。

この曲を彼らはスキッフル風のアレンジでいなたくキメてくれる。

ブルース・ロックとはまったく違ったアプローチでも、本物のブルースは生み出せるのだ。

「チョーカー」は三たび登場のクラプトン・アンド・ペイジ。彼らのオリジナルの、アップ・テンポのブルース。

ようやく調子が出てきて、いい感じに盛り上がったのもつかの間、すぐにフェイドアウトしてしまう。まことに残念。

「トゥルー・ブルー」はサヴォイ・ブラウン・ブルース・バンドによる演奏。メンフィス・スリムの作品。

アンプリファイド・ハープをフィーチャーした、スロー・ブルースのインスト・ナンバー。

ハープとピアノとギターのプレイが溶け合って、ディープなムードを作り上げている。見事だ。

「ホエン・ユー・ゴット・ア・グッド・フレンド」はT. S. マクフィーの演奏。ロバート・ジョンスンの作品。

後にクラプトンによるカバー・バージョンでよく知られるようになったナンバーだが、マクフィーも早い時期にしっかりカバーしておりました。

しっとりとした歌声が、ECに負けず劣らずいい感じである。

ラストの「マン・オブ・ザ・ワールド」はフリートウッド・マックによる演奏。ピーター・グリーンの作品。69年リリースのシングル。

後には世界的なポップ・ロック・バンドになったマックの、ブルース・バンド時代の名演だ。

グリーンの歌、ギターの素晴らしさはもとより、その高い作曲能力をひしひしと感じるナンバー。

ブルースをベースとして、自分たちなりの新たな音楽を作り出したグリーニーには、神ががったものを感じる。

米国の伝説のヒーロー、ブルースマンに憧れた英国の若者たちも、次代のミュージック・ヒーローとなっていく。

ある者はその忠実なトリビュートというかたちで。またある者はそれにインスパイアされたオリジナル作品というかたちで。

そんな新たな伝説が生まれていく過程を、この一枚に聴き取っていただきたい。

<独断評価>★★★☆


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