2005年11月6日(日)
#293 佐野元春「BACK TO THE STREET」(EPIC/SONY 25・H-19)
佐野元春のデビュー・アルバム。80年リリース。佐藤文彦らによるプロデュース。
デビュー25周年かあ。ってことはデビューが24歳と遅めなモトも、50近いってことでもある。歳月の経つのは、はえーやな。筆者もトシをとるわけだ(笑)。
彼のこの四半世紀にわたってやってきたことは、いちいち書き出さなくても皆さんご存知だと思うけど、彼ほどフォロワーの多いひとはそういないという気がする。
故・尾崎豊はいうまでもなく、サウンドこそ違えど山崎まさよしに至るまで、そのカジュアリティというかストレートでぶらない人柄、格別ハンサムってわけではないが、でもどこかインテリジェントでカッコいいキャラクターの与えた影響力はハンパでない。
男にも女にも、不良系にもマジメ系にもウケがいいんだよな。非常に稀有な存在だといえる。
彼とほぼ同時期に出てきた作家、村上春樹とどこかダブるものがあるような気がするのは、筆者だけであろうか。
さてこの一枚、全曲がモトのオリジナル。アレンジは一曲を自ら担当したほか、大村雅朗、伊藤銀次の二人の職人が全面サポート。
サウンド的にはモロ、ブルース・スプリングスティーンの影響まる出しなんで、聴いててちょっと気恥ずかしいけど、完成度は高い。ピュア・ロックでありながら、上質の正統派ポップスでもある。
「アンジェリーナ」のハイパー・アクティブなロック、「勝手にしなよ」のジャズィでシックな音が彼の中で違和感なく同居しているのだ。
若者にすんなりと受け入れられるその歌詞世界も含めて、モトが日本に初めて「非歌謡曲」的音楽を根付かせたという気がする。
ちょうどハルキ・ムラカミが、従来の私小説的伝統を越えた世界を日本文学に根付かせたように。
個人的には、「アンジェリーナ」と並んで、昔から「情けない週末」が好きだな。自分の心象風景をズバリ言い表してくれてるようで(笑)。
彼の、パワーは十分あるが、リキみのない、どこか飄々としたものさえ感じさせる音世界って、テンションが高いだけのサウンドが多いなかでは、独自の立ち位置にあって、非常に面白い。
今後も、昔のような熱狂的な受け入られ方はもはやないにせよ、多くの若手ミュ-ジシャンを刺激するような作品を作り続けて欲しいものである。
<独断評価>★★★★