NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#442 L’arc〜en〜Ciel「HEART」(KI/OON SONY KSC2 204)

2023-02-02 05:00:00 | Weblog
2023年2月2日(木)


#442 L’arc〜en〜Ciel「HEART」(KI/OON SONY KSC2 204)

日本のロック・バンド、ラルク・アン・シエル(以下ラルク)の5枚目のアルバム。98年リリース。岡野ハジメ、CHOKKAKU、彼ら自身によるプロデュース。

ラルクは91年結成だから、すでに30年以上のキャリアがある。メンバーそれぞれのソロ・プロジェクトなどを挟みつつも、ずっと活動を続けており、98年以降はメンバー・チェンジがないというのも、彼らの結束力の強さを物語っている。

本盤は、ラルクが熱狂的なファンのためのバンドから脱皮して、国民的な人気バンドとなるきっかけとなったアルバムだ。

オリコン週間・月間1位、年間15位というベストセラーとなり、TVの音楽番組への出演も目立って増えた。

その半年後、彼らは最大のヒットとなる「Honey」をリリースすることになるが、「HEART」はその王座へのチェックメイトとなった一枚といえる。

オープニングの「LORELEY」は、ボーカルhyde自身によるアルト・サックスが印象的なハード・ロック・ナンバー。hydeの作詞・作曲。

「winter fall」は先行シングルとなった一曲。hyde作詞、ken作曲。

初のオリコン1位を獲得した、記念すべきバラード・ナンバー。元PINKの岡野ハジメがプロデュース、彼らを本格ブレイクへと導いた。以降、岡野との共同制作は今も続いている。

曲に合わせてストリングス、ホーンのアレンジを加え、大人っぽくポピュラリティのあるサウンドを選んだことが「吉」となった。

作曲者kenのメロディ・センスもいい。オーソドックスなポップス・チューンをきちんと書ける人なのだ。

そしてそのメロディを最大限に活かした表現ができるのが、hydeという歌い手である。

「Singin’ in the Rain」はhydeの作詞・作曲。

ラルフとしては珍しく、はねるビートのジャズィなナンバー。とはいえ、純正のフォー・ビートではなく、ロック的なベース、コーラスなどイマ風のアレンジになっている。

「Shout at the Devil」は激しいハード・ロック・ナンバー。ベースが唸り、ギターが切り裂き、ドラムスが荒ぶり、ボーカルが吼える。これぞ、ラルクのロック!

リズムを従来のような重ね録りでなく一発録りしたことによって、ライブ感が溢れる出来となった。

「虹(Album Version)」はバンド名にも直接繋がる、彼らのテーマ・ソングともいうべきナンバー。

hyde作詞、ken作曲。プロデュースはCHOKKAKU。

ZEPの「天国への階段」にも比肩される、ドラマティックな構成を持つロック・バラード。彼らにとっても特に思い入れの強い一曲だという。

「winter fall」のひとつ前のシングルともなった曲。オリコンでは3位と過去最高位を獲得、ダブル・プラチナを達成して、ラルクのブレイクへの道を開いた。

フランク・シナトラの「マイ・ウェイ」をほうふつとさせるkenによるメロディは、ポップスの王道を感じさせるね。

「birth!」はhydeの作詞・作曲。アップ・テンポのロック・ナンバー。

力強い「Realize」のリフレイン、そしてkenのエスニック風味なギター・ソロが印象的だ。

「Promised Land」は縦乗りのロック・ナンバー。hyde作詞、ken作曲。

ラルクの生み出すビートの魅力を、最大限に味わえる一曲だ。

「fate」は、ラルクの耽美的な側面を押し出した、シンセ・サウンドや繊細なドラミングが特徴的なナンバー。hyde作詞、ken作曲。

kenのメロウなギター・プレイは、作品のもつダークな世界を効果的に演出している。

「Milky Way」はベースのtetsu(現tetsuya)の作詞・作曲。

ラルクのリーダーは、実はtetsuyaであることをご存知だろうか。彼が言い出しっぺとなって、このバンドは始まったのだ。

普段はhydeを立てて、フロントに出て来ることはない彼ではあるが、曲も書くし、自分のソロ・プロジェクトでは歌いもする。

そんな彼の、hydeともkenとも異なる音楽センスが感じられる一曲。アメリカ寄りのフォーク・ロックなサウンドが、耳に心地よい。

ラストの「あなた」はアルバムの締めくくりにふさわしい、流麗なストリングスをフィーチャーしたバラード・ナンバー。hydeの作詞、tetsuの作曲。

hydeのシャウト、そしてkenの泣きのギターで、「HEART」という名のドラマは最高潮をむかえる。

前任のsakuraに代わって加入したばかりのドラマー、yukihiroのライトなドラミング・スタイルも、このポップ・サウンドにしっかり馴染んでいる。

これもまた、ブレイクした理由のひとつではなかろうか。

バンドの要は、実はドラムスだからね。

ロック・バンドとしてのスタイルを捨てることなく、質の高い楽曲作りで、ポップ・アーティストとしての魅力を上げることに見事成功したのが彼らだ。

ポップ&ロックなラルク・アン・シエルの、AからZを詰め込んだ一枚。四半世紀を経ても、名盤であることに変わりはない。

<独断評価>★★★★

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