2003年5月12日(月)
#154 アルバート・キング「THE BLUES DON'T CHANGE」(Stax CDSXE 085)
アルバート・キング、スタックス・レーベルでの最後のアルバム。
もともとは77年に「THE PINCH」というタイトルで出たLPを改題して、92年にCDとしてリリースしたもの。レコーディング自体は73~74年。
このひとは、個人的にも特に好きなアーティストのひとりだが、その数あるアルバムの中でも、なかなか小粋な一枚。
<筆者の私的ベスト3>
3位「I CAN'T STAND THE RAIN」
女性シンガー・アン・ピーブルズ、70年代初頭のヒット。
というより、ハンブル・パイやグレアム・セントラル・ステーション、ローウェル・ジョージらによるカヴァー・ヴァージョンのほうがおなじみかも。
ワタシもご多分に漏れず、パイの「THE BEST OF HUMBLE PIE」で初めて聴いたクチだ。
その時はスティーヴ・マリオットの、あまりにディープな歌いぶりに圧倒されてしまったものだが、アルバート版はもっと素直でソフトなタッチ。
例の、声を張り上げずに歌うスモーキーなヴォーカルが、これはこれで味があって、よろしい。
短めだが、彼のギター・ソロも(毎度毎度のワン・パターン・フレーズなれど)いい感じである。
ちなみにこのアルバムでは、バック・ミュージシャンとしてMG'Sのリズム隊、ダンとジャクスンも参加、タイトな音を聴かせてくれている。
2位「OH!, PRETTY WOMAN」
かの名盤「BORN UNDER A BAD SIGN」にも収録されていたナンバーの再録音。
前回の録音より6年以上の歳月がたっているわけだが、サウンドもさらにモダンに、よりファンキーに進化している。
ホーンは今作でもメンフィス・ホーンが担当しているが、アレンジ、演奏にいよいよ磨きがかかっている。
非常にソウル指向の強い音作りが、印象的。
もちろん、アルバートの歌、ギター、ともに前回の録音にまさるとも劣らぬ出来。リラックスした雰囲気が素晴らしい。
逆に、ピュア・ブルースを求めるタイプのリスナーには、ちょっと食い足りないかもしれない。
ギターを余りメインに置いていないためか、ブルース特有の「臭い」はあまりなく、音がかなり洗練されてしまっているから。
1位「THE BLUES DON'T CHANGE」
ベスト・トラックはやはり、トップのタイトル・チューンだろうな。
ミディアム・テンポのソウル・ナンバー。デトロイト出身のシンガー、マック・ライスの作品。
陽気な曲調で、曲そのものにはブルースっぽさは余りないが、延々と続くアルバートのギター・ソロが、なんともファンキー。
「ブルースは変わらない」とは、まさにアルバート自身のメッセージも込められたナンバーだといえるだろう。
ロック、ソウル、ファンク、どんなスタイルのサウンドであれ、根幹となるブルースの「精神」は決して変わらないのだ。
そう、このアルバムが生まれて30年もの年月が経過した今でも。
歌声にせよ、ギターの音色・フレーズにせよ、ワン・アンド・オンリーの存在感を持ったアルバート・キング。
死後10年余りを経ても、彼をリスペクトするアーティストは、いまだに増え続けている。
彼こそがその生き方で「ブルース」を体現した男なのだと、筆者は思っている。
<独断評価>★★★☆