2008年11月9日(日)
#57 セントルイス・ジミー「Dog House Blues」(Goin' Down Slow/P-Vine Japan)
日本のP-Vineレーベルから92年にリリースされた、セントルイス・ジミーのアルバムより、彼のオリジナルを。
セントルイス・ジミーこと、ジェイムズ・オーデンは1903年、テネシー州ナッシュヴィル生まれ。
8才で両親を失い、その後14才頃、セントルイスへ移住し、音楽活動を本格的に始める。芸名はもちろん、彼の地にちなんで付けられたものだ。そこで、名ピアニスト/シンガー、ルーズヴェルト・サイクスと知己になり、レコーディングでも共演している。
33年、齢30にしてシカゴに活動の場を移し、そして41年、名曲「Goin' Down Slow」のヒットを出す(55年にも再録音)。これにより「セントルイス・ジミー」の名は全国区レベルで知られるようになる。
吹き込んだレコードは、複数のレーベルにて、32年から55年の間に50曲ほど。しかし、57年、交通事故に遭い、入院したのがきっかけで、ソングライターに転向することになる。
以前から付き合いのあったマディ・ウォーターズ、そしてハウリン・ウルフらに楽曲を提供して、彼は後半生を終えることとなった。77年、シカゴにて逝去。享年74。
歌手としてのセントルイス・ジミーは自らピアノを弾きながら、訥々と半ば語るように歌うスタイルが持ち味だった。
その曲も、畢生の名曲「Goin' Down Slow」をはじめとして、苦労の多かった前半生を反映してか、ちょっと苦みのある内容のものが多い。
きょうご紹介するのは、「Dog House Blues」。これも複数回レコーディングを行っている曲だが、これはピアノ、エレキギター、ウッドベース、ドラムスというカルテットによる演奏だ。
バックにホーン・セクションが加わったバージョンもあるが、少人数のコンボによるこのバージョンのほうが、しっとりと味わい深いように思う。
ソリッドなギターに、オブリで決めるピアノ。ジャズィな演奏をバックに、かみしめるように歌うセントルイス・ジミー。決して派手なものはないが、ジンと心にしみてくる歌だ。
こういう歌は、やはりバーボン・ウィスキーをチビチビやりつつ、じっくりと味わうのが一番ですな。おすすめです。